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2025年07月25日
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3――肖像権に係る論点
1|私人と肖像権
私人を路上で撮影し、ネット上で公開したことに関する裁判例として、東京地裁判決平成17年9月27日5がある。本件では衣料品のネット販売業者等が繁華街の路上の歩行者を許可なく撮影し、無断で自社HPに掲載したものである。大写しとなった写真では刺激的な言葉が歩行者の衣服に大きく記載されていた。そして匿名掲示板(当時の2チャンネル)では誹謗中傷が多数行われた。ネット販売業者等は歩行者からの抗議を受け、そのHPから写真を削除した。しかし、匿名掲示板には写真が残っており、誹謗中傷が繰り返された。
同判決は「何人も、個人の私生活上の自由として、みだりに自己の容貌や姿態を撮影されたり、撮影された肖像写真を公表されないという人格的利益を有しており、これは肖像権として法的に保護されるものと解される」として肖像権の存在を認めた。そして「一般人であれば、自己がかかる写真を撮影されることを知れば心理的な負担を覚え、このような写真を撮影されたり、これをウェブサイトに掲載されることを望まない」とした。
ネット販売業者等は公共の場で撮影したものであるから、肖像権を侵害するものではないと主張した。この点、同判決は「(周囲の人という)限られた範囲を超えて人々に知られることになる」とし、本件のような撮影は「撮影した写真の一部にたまたま特定の個人が写り込んだ場合や不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合とは異なり、被写体となった原告(歩行者)に強い心理的負担を覚えさせる」とした。結論としてネット販売業者等の損害賠償責任を認めた。
なお、ガイドライン(p23)では「一般私人については、同意を得ずに顔写真等を撮影・掲載することが正当化される余地は、犯罪報道の場合を除けば、かなり狭いと考えられる」とし、同意を得ない写真の公表は原則として肖像権の侵害となるとしている。
私人を路上で撮影し、ネット上で公開したことに関する裁判例として、東京地裁判決平成17年9月27日5がある。本件では衣料品のネット販売業者等が繁華街の路上の歩行者を許可なく撮影し、無断で自社HPに掲載したものである。大写しとなった写真では刺激的な言葉が歩行者の衣服に大きく記載されていた。そして匿名掲示板(当時の2チャンネル)では誹謗中傷が多数行われた。ネット販売業者等は歩行者からの抗議を受け、そのHPから写真を削除した。しかし、匿名掲示板には写真が残っており、誹謗中傷が繰り返された。
同判決は「何人も、個人の私生活上の自由として、みだりに自己の容貌や姿態を撮影されたり、撮影された肖像写真を公表されないという人格的利益を有しており、これは肖像権として法的に保護されるものと解される」として肖像権の存在を認めた。そして「一般人であれば、自己がかかる写真を撮影されることを知れば心理的な負担を覚え、このような写真を撮影されたり、これをウェブサイトに掲載されることを望まない」とした。
ネット販売業者等は公共の場で撮影したものであるから、肖像権を侵害するものではないと主張した。この点、同判決は「(周囲の人という)限られた範囲を超えて人々に知られることになる」とし、本件のような撮影は「撮影した写真の一部にたまたま特定の個人が写り込んだ場合や不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合とは異なり、被写体となった原告(歩行者)に強い心理的負担を覚えさせる」とした。結論としてネット販売業者等の損害賠償責任を認めた。
なお、ガイドライン(p23)では「一般私人については、同意を得ずに顔写真等を撮影・掲載することが正当化される余地は、犯罪報道の場合を除けば、かなり狭いと考えられる」とし、同意を得ない写真の公表は原則として肖像権の侵害となるとしている。
2|公人と肖像権
昭和末期のいわゆるバブル期においては、消費者金融各社が急成長を果たした。他方で消費者金融の過剰貸し付けや高金利、強引な取り立てが社会問題化し、貸金業法等の改正などにつながった(後述判決の事実認定による)。
本事案は、消費者金融A社の大株主であり会長であるBが入院していたが、Bが車いすで廊下を移動中の写真を撮られ、写真週刊誌に掲載されたことが肖像権あるいはプライバシーを侵害するかどうか争われた裁判の地裁判決である(東京地裁判決平成2年5月22日)。
同判決では「多数の一般大衆を相手とする大規模な貸金業を営む企業のオーナー経営者として…事業活動に関する事柄だけではなく、その資質・挙動や個人生活について強い社会の関心や興味が寄せられるのは、当然のことであり…正当な公共の関心事であるというべきである」とする。
肖像権に関しては「何人も自己の容貌や姿態を無断で撮影され、公表されない人格的な権利、すなわち肖像権を有して」いると判示したうえで、「写真の撮影・頒布が違法となるかどうかは、それによる肖像権ないしプライバシーの侵害の程度がどの位か、撮影対象事項とその者の社会的活動との関係がどの程度か、その写真撮影の場所・態様がどのようなものであるか、その写真が当該表現行為に必要不可欠なものかどうか等を併せ考慮し、肖像権及びプライバシー保護の必要性と表現の自由保護の必要性とを比較衡量して、その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものかどうかを判断してこれを決すべきである。」
「病院の中における患者の生活自体は…他から侵害されてはならないものというべきである。そして、患者の肖像権についても同様というべきである。これを要するに、一般に、病院内は、完全な私生活が保証されてしかるべき私宅と同様に考えるべきである。」
そして「本件であえてBの写真を撮影し掲載しなければならない必要性までは認めがたい」として、病院内での写真撮影・掲載については違法であるとの判断を行った。
同判決では肖像権侵害を認めたが、ガイドライン(p23)では、「肖像権は、名誉毀損の判断と類似した基準のもとに判断されることが多く、公共の利害に関する事実であり、公益を図る目的で掲載され、かつ、公表された内容が相当であれば、掲載について違法性が否定され、損害賠償責任を負わないとすることが多い」とし、一般的な報道においては肖像権侵害とはならない場合が多いとする。
昭和末期のいわゆるバブル期においては、消費者金融各社が急成長を果たした。他方で消費者金融の過剰貸し付けや高金利、強引な取り立てが社会問題化し、貸金業法等の改正などにつながった(後述判決の事実認定による)。
本事案は、消費者金融A社の大株主であり会長であるBが入院していたが、Bが車いすで廊下を移動中の写真を撮られ、写真週刊誌に掲載されたことが肖像権あるいはプライバシーを侵害するかどうか争われた裁判の地裁判決である(東京地裁判決平成2年5月22日)。
同判決では「多数の一般大衆を相手とする大規模な貸金業を営む企業のオーナー経営者として…事業活動に関する事柄だけではなく、その資質・挙動や個人生活について強い社会の関心や興味が寄せられるのは、当然のことであり…正当な公共の関心事であるというべきである」とする。
肖像権に関しては「何人も自己の容貌や姿態を無断で撮影され、公表されない人格的な権利、すなわち肖像権を有して」いると判示したうえで、「写真の撮影・頒布が違法となるかどうかは、それによる肖像権ないしプライバシーの侵害の程度がどの位か、撮影対象事項とその者の社会的活動との関係がどの程度か、その写真撮影の場所・態様がどのようなものであるか、その写真が当該表現行為に必要不可欠なものかどうか等を併せ考慮し、肖像権及びプライバシー保護の必要性と表現の自由保護の必要性とを比較衡量して、その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものかどうかを判断してこれを決すべきである。」
「病院の中における患者の生活自体は…他から侵害されてはならないものというべきである。そして、患者の肖像権についても同様というべきである。これを要するに、一般に、病院内は、完全な私生活が保証されてしかるべき私宅と同様に考えるべきである。」
そして「本件であえてBの写真を撮影し掲載しなければならない必要性までは認めがたい」として、病院内での写真撮影・掲載については違法であるとの判断を行った。
同判決では肖像権侵害を認めたが、ガイドライン(p23)では、「肖像権は、名誉毀損の判断と類似した基準のもとに判断されることが多く、公共の利害に関する事実であり、公益を図る目的で掲載され、かつ、公表された内容が相当であれば、掲載について違法性が否定され、損害賠償責任を負わないとすることが多い」とし、一般的な報道においては肖像権侵害とはならない場合が多いとする。
3|イラストと肖像権
上述、最判平成17年11月10日では、写真週刊誌に法廷での被告の肖像を描いたイラスト画が掲載されたことについても争われた。同判決では「人の容ぼう等を描写したイラスト画は、その描写に作者の主観や技術が反映するものであり、それが公表された場合も、作者の主観や技術を反映したものであることを前提とした受け取り方をされる」ため、「社会生活上受忍の限度を超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては、写真とは異なるイラスト画の上記特質が参酌されなければならない」とする。
そして、資料を見せられているだけのような肖像画は「一般に、法廷内における被告人の動静を報道するためにその容ぼう等をイラスト画により描写し、これを新聞、雑誌等に掲載することは社会的に是認された行為であると解するのが相当」とした一方で、被告が「手錠、腰縄により身体の拘束を受けている状態が描かれたものであり、そのような表現内容のイラスト画を公表する行為は、被上告人を侮辱し、被上告人の名誉感情を侵害する」とした。結論として、写真週刊誌側に損害賠償責任を認めた。
上述、最判平成17年11月10日では、写真週刊誌に法廷での被告の肖像を描いたイラスト画が掲載されたことについても争われた。同判決では「人の容ぼう等を描写したイラスト画は、その描写に作者の主観や技術が反映するものであり、それが公表された場合も、作者の主観や技術を反映したものであることを前提とした受け取り方をされる」ため、「社会生活上受忍の限度を超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては、写真とは異なるイラスト画の上記特質が参酌されなければならない」とする。
そして、資料を見せられているだけのような肖像画は「一般に、法廷内における被告人の動静を報道するためにその容ぼう等をイラスト画により描写し、これを新聞、雑誌等に掲載することは社会的に是認された行為であると解するのが相当」とした一方で、被告が「手錠、腰縄により身体の拘束を受けている状態が描かれたものであり、そのような表現内容のイラスト画を公表する行為は、被上告人を侮辱し、被上告人の名誉感情を侵害する」とした。結論として、写真週刊誌側に損害賠償責任を認めた。
4|防犯ビデオと肖像権
著名人である亡Aが万引きしたとするコンビニの監視カメラ映像を、テレビ放映したことや監視カメラを販売する株式会社BがDVDに映像を収録して配布したことなどがプライバシーや肖像権侵害に該当するかどうか争われた事案に係る東京地裁判決平成22年9月27日がある。
同判決では、コンビニが店舗内に監視カメラを設置し、店内を撮影することは、万引き防止のためという必要性がある。したがって、監視カメラがあることを明示し、データの管理方法も適切である場合には、肖像権を侵害するとは言えないとした。また、亡Aが逮捕された後、当該映像が報道に利用されたことについては「社会通念上受忍限度を超えるものではなく、亡Aの肖像に係る人格的利益及びプライバシー権を侵害するものとして不法行為上違法であるということはできない」とした。しかしBが監視カメラ映像をDVD化し、監視カメラ製品の営業目的で配布したことに関しては、「亡Aが万引きしたとの印象を与えるものであり、亡Aの肖像に係る人格的利益及びプライバシー権を侵害した」と判断した。
著名人である亡Aが万引きしたとするコンビニの監視カメラ映像を、テレビ放映したことや監視カメラを販売する株式会社BがDVDに映像を収録して配布したことなどがプライバシーや肖像権侵害に該当するかどうか争われた事案に係る東京地裁判決平成22年9月27日がある。
同判決では、コンビニが店舗内に監視カメラを設置し、店内を撮影することは、万引き防止のためという必要性がある。したがって、監視カメラがあることを明示し、データの管理方法も適切である場合には、肖像権を侵害するとは言えないとした。また、亡Aが逮捕された後、当該映像が報道に利用されたことについては「社会通念上受忍限度を超えるものではなく、亡Aの肖像に係る人格的利益及びプライバシー権を侵害するものとして不法行為上違法であるということはできない」とした。しかしBが監視カメラ映像をDVD化し、監視カメラ製品の営業目的で配布したことに関しては、「亡Aが万引きしたとの印象を与えるものであり、亡Aの肖像に係る人格的利益及びプライバシー権を侵害した」と判断した。
5|小括
一般私人の写真はそれだけでは注目されるものではないことから、肖像権が問題となるのは何らかの事情で社会の耳目を集める場合である。上記で挙げた例では、突飛な衣装を着ている事例と、刑事手続の裁判における様子である。前者は撮影し、公表する側に何らの必要性がないため、物議をかもしかねない、あるいは炎上が予想される人物写真を公表することは肖像権を侵害するおそれがあると認識すべきであろう。後者については特に報道機関においては報道の自由との関連がある。刑事手続きにおいては、一般社会通念上認容されるような内容の写真に限り、開示は許容されると考えられる。したがって私人においては、原則として他人による人物写真の公表は公共空間のものであっても肖像権の侵害となるが、例外的に許容される場合があるものと考えられる。
次に、公人についてはその動静が公共の関心事であることから、私人の場合と逆に、肖像権の侵害となる場合は限られる。上記で適示した判例では病院の廊下における画像について肖像権の侵害に該当するとされた。防犯ビデオのケースでは撮影と報道については受忍限度を超えるものではないとした。他方、亡Aの犯罪行為を収録したDVDを営利目的で利用したことは亡Aの肖像権を侵害するとした。著名人の犯罪行為に関する映像であっても利用目的によっては肖像権を侵害するものであるとしたことが注目される。なお、著名人の肖像にはパブリシティ権が認められる点については次項参照。
一般私人の写真はそれだけでは注目されるものではないことから、肖像権が問題となるのは何らかの事情で社会の耳目を集める場合である。上記で挙げた例では、突飛な衣装を着ている事例と、刑事手続の裁判における様子である。前者は撮影し、公表する側に何らの必要性がないため、物議をかもしかねない、あるいは炎上が予想される人物写真を公表することは肖像権を侵害するおそれがあると認識すべきであろう。後者については特に報道機関においては報道の自由との関連がある。刑事手続きにおいては、一般社会通念上認容されるような内容の写真に限り、開示は許容されると考えられる。したがって私人においては、原則として他人による人物写真の公表は公共空間のものであっても肖像権の侵害となるが、例外的に許容される場合があるものと考えられる。
次に、公人についてはその動静が公共の関心事であることから、私人の場合と逆に、肖像権の侵害となる場合は限られる。上記で適示した判例では病院の廊下における画像について肖像権の侵害に該当するとされた。防犯ビデオのケースでは撮影と報道については受忍限度を超えるものではないとした。他方、亡Aの犯罪行為を収録したDVDを営利目的で利用したことは亡Aの肖像権を侵害するとした。著名人の犯罪行為に関する映像であっても利用目的によっては肖像権を侵害するものであるとしたことが注目される。なお、著名人の肖像にはパブリシティ権が認められる点については次項参照。
(2025年07月25日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2024年4月 専務取締役保険研究部研究理事
2025年4月 取締役保険研究部研究理事
2025年7月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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