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保険ショップの利用実態とその変化~利用目的とチャネル選択にみる役割の変化

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――はじめに
この10年ほどは、保険ショップの市場規模の拡大はかつてほどの勢いはなくなってきたが、引き続き一定の支持が得られているようだ。
本稿では、ニッセイ基礎研究所が行っている「生保マーケット調査2」の個票データから、保険ショップの利用動向や利用目的を紹介する。
1 井上智紀「保険ショップに死角はないか-求められるサービス品質の維持・向上に向けた取り組み(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/41297_ext_18_0.pdf?site=nli)」ニッセイ基礎研究所 研究員の眼(2014年1月16日)
2 2024年度調査の概要:調査対象を、全国の20~69歳の男女個人(調査会社登録パネル)とするインターネット調査。2024年12月実施。有効回収数6,669サンプル(うち、加入者は4,406サンプル)。
2――保険ショップの利用状況
3 矢野経済研究所は、新規契約件数や新契約年間残保険料で市場規模を分析している。矢野経済研究所によるレポートサマリー「来店型保険ショップ市場に関する調査を実施:https://www.yanoict.com/summary/show/id/571(2019年10月29日)」と日本経済新聞(2018年6月12日)「矢野経済研究所、2018年度の来店型保険ショップ市場調査結果を発表」によると、市場規模は2017年頃から伸びが鈍化している。その理由として2016年の改正保険業法対応による影響から出店スピードにブレーキがかかったこと、近隣店舗との競合によって不採算店の統廃合が進んだことが指摘されている。
情報源として保険ショップを利用した人の利用目的をみると、最も高いのが「どのような保険が自分に適しているか教えてもらうため(54.5%)」、次いで「自分に適した保険について提案してもらうため(47.5%)」「生命保険の仕組みや保険の種類毎の目的について教えてもらうため(32.7%)」等が続いた(図表2)。
2014年度調査4と比べると、「生命保険の仕組みや保険の種類毎の目的について教えてもらうため」が15ポイント近く低下していたのをはじめ、多くの項目で同程度か低下傾向にあった。この10年間は、スマートフォンやSNSの普及によって、これまで以上にインターネットを通じて情報を得たり、相談をする人が増えてきた時期であることから、保険に関する基礎的な知識を得ることを中心として、商品を絞り込むまでの情報提供機能の一部はインターネットに置き換えられつつあると考えられる。
保険ショップを利用した目的を真性能動/疑似能動の別でみると、全体では、「どのような保険が自分に適しているか教えてもらうため」が全体で54.5%と最も高く、次いで「自分に適した保険について提案してもらうため(47.5%)」「生命保険の仕組みや保険の種類毎の目的について教えてもらうため(32.7%)」等が続いた。真性能動的加入者では、疑似能動的加入者と比べて「既に加入している生命保険が自分に適しているか診断してもらうため」と、「保険会社専属の営業担当者や他の保険ショップで受けた説明や自分の理解が正しいか確認するため」の割合が高い。これは、疑似能動的加入者が、自分に適した保険について提案してもらうために利用していると考えられるのに対し、真性能動的加入者は、自分の知識や考え方、商品の選び方について、言わば、"答え合わせ"をしに来ていると考えられる。その保険の加入チャネルをみると、疑似能動的加入者のおよそ6割が、そのまま保険ショップで加入しているのに対し、真性能動的加入者では3割程度で、その他「生命保険会社専属の営業担当者」「インターネット」「その他(保険ショップや独立系FP以外)の保険代理店」等から加入しているケースも多く6、「保険ショップ」を、たくさんある情報源の中の1つとして利用している人もいることの現れだろう。
近年、主体的に情報を得ようとする能動的加入者は増加傾向にあるが、現在のところ、その多くが、自分の保障ニーズと合っているかの判断は自力だけでは難しいという疑似能動的加入者であると考えられる。
4 井上智紀「保険ショップ・FPチャネルの動向-利用者の特徴と支持される背景要因(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/42817_ext_18_0.pdf?site=nli)」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2015年10月19日)
5 村松容子「保障ニーズを知ることの意義:生命保険 能動的加入者の視点から(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/80906_ext_18_0.pdf?site=nli)」ニッセイ基礎研究所 保険・年金フォーカス(2025年1月28日)
6 単年調査では、件数が不十分であったため、2022~2024年の3年分の調査を合算すると、「保険ショップ」を情報源として利用した真性能動的加入者、疑似能動的加入者の加入チャネルは以下のとおりだった。

3――おわりに
しかし、スマートフォンの普及やSNSの浸透により、保険に関する基礎的な知識を得ることを中心として、商品を絞り込むまでの情報提供機能の一部がインターネットに代わった可能性が考えられた。また、保険ショップの利用方法は人によって異なる可能性があり、説明を受けてそのまま保険ショップで加入する場とも、対面で話しができるメリットを活かして、自分の知識や考え方が正しいか、抜けはないか、確認する場ともなっていることがうかがえる。これらのことから、保険ショップは、今後も一定程度、支持され続ける可能性が高いと考えられる。
このような保険ショップの動向は、保険を検討しようとする消費者だけではなく、保険の売り手にも大きな影響を与えていると考えられる。たとえば、専属チャネルをもつ会社において、保険ショップとの関係をどう築き、顧客との接点にどう活かしていくかは大きな課題であろう。
少しずつ役割を広げながら発展する保険ショップを引き続き注視したい。
(2025年07月22日「保険・年金フォーカス」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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