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増え行く単身世帯と家計消費への影響-世帯構造変化に基づく2050年までの家計消費の推計

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1――はじめに~単身世帯は30年で2.3倍に増加、現在は総世帯の約4割へ
ひとり暮らしの単身世帯と、複数人で暮らす家族世帯とでは、消費生活に違いが生じることは言うまでもない。今後も日本では単身世帯の増加が見込まれており、その動向は消費市場に大きな影響を及ぼすと考えられる。
本稿では、こうした背景を踏まえ、単身世帯に注目して日本の世帯構造の変化をあらためて捉え直す。また、世帯構造の変化を踏まえた上で、家計消費額の推計も試みる。
2――世帯数および世帯構造の変化
日本の人口は約10年前から減少局面に入っているが、未婚化や核家族化の進行により世帯のコンパクト化が進んでおり、世帯数自体は依然として増加傾向にある(図表1)。しかし、今後は人口減少がさらに加速するために、2030年頃を境に世帯数も減少へと転じる見通しである。
なお、1世帯当たりの平均人員は、1990年代以降、3人を下回っており、2020年には2.21人となった。2050年には2人を下回ると予測されている。
総世帯の内訳を家族類型別に見ると、核家族の「夫婦と子」世帯や、三世代世帯を含む「その他世帯」の割合は低下している(図表2)。一方で、単身世帯、夫婦のみ世帯、ひとり親と子世帯は増加傾向にある。なお、夫婦のみ世帯は2020年頃、ひとり親と子世帯は2030年頃をピークに、いずれも減少傾向に転じると予測されている。
つまり、世帯人員が多い世帯が減少し、人数の少ない世帯が増加していることからも、家族類型の変化を通じて世帯のコンパクト化進んでいる様子が読み取れる。
また、冒頭で述べた通り、単身世帯は1990年には総世帯の約2割だったが、2020年には約4割に達し、2030年には4割を超え、2050年には44.3%に達する見通しである。
単身世帯の数が増加する一方で、その内訳も変化している。

しかしその後、単身世帯に占める若年世帯の割合は低下し、代わって60歳以上の高年齢世帯や、35~59歳の壮年男性世帯が増加した。
2020年では、高年齢女性世帯が26.2%と最も多く、次いで壮年男性世帯(19.8%)、高年齢男性世帯(15.8%)、若年男性世帯(15.6%)と続き、後者2つは僅差となっている。
今後は壮年男性世帯の増加に歯止めがかかる一方、高年齢世帯はさらに増加する見込みであり、単身世帯に占める60歳以上の割合は2040年に半数を超え、2050年には53.0%になると予測されている。
なお、本稿では、次節の家計消費の推計において年齢区分を10歳単位で設定しているため、図表3でも60歳を区切りとして単身世帯の構成を示している。ただし、65歳以上を高齢者世帯として見ると、2015年で34.1%、2020年で35.8%を占めており、2030年には36.9%、2050年には46.5%へと増加する見通しである。
3――世帯構造の変化が家計消費へ与える影響
ここからは世帯構造の変化が家計消費額にもたらす影響を捉える。まず、下記の手順にて、各世帯の消費額が家計消費額全体に占める割合を求め、世帯構造の変化によって家計消費に占める各世帯の割合はどのように変わるのかを分析する。
(1) 各年の世帯類型別世帯数(二人以上世帯と単身世帯の世帯主の年齢階級別世帯数1)に対して、総務省「家計調査」から得た世帯当たりの月平均消費支出額を乗じ、各世帯類型の合計消費額を求める。2025年以降の世帯数は予測値、消費額は2024年の値を用いて推計する。
(2) (1)で得た各世帯の月間消費額を合計し、合計値に占める各世帯の月間消費額の割合を算出する。
推計の結果、2024年では、二人以上世帯の消費額が家計消費全体の7割強を占め、単身世帯は3割弱にとどまっている。しかしその後は、二人以上世帯の割合が徐々に低下し、単身世帯の割合が上昇することで、2040年頃には二人以上世帯が7割を下回り、単身世帯は3割を上回る見通しである。
また、二人以上世帯・単身世帯のいずれにおいても、高年齢世帯の消費額が占める割合は今後、さらに高まっていく。2010年頃までは両世帯を合わせた60歳以上の消費額の割合は全体の4割未満であったが、その後は4割を超え、2050年にはおよそ半数に達する予測である。なお、60歳以上の高年齢の単身世帯に限ると、2020年頃までは全体に占める割合は1割だったが、2050年には15%を超える見通しである。
なお、2020年から2023年にかけて段差が見られるが、これにはいくつかの要因が考えられる。
第一に、2020年までの世帯数は実績値であるのに対し、2023年以降は予測値であること、第二に、2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大により全世帯で消費額が減少したが、とくに単身世帯への影響が大きかったことがあげられる。実際、消費額の変化を見ると、二人以上世帯では2019年から2020年にかけて▲5.3%の減少、2020年から2023年にかけて+5.8%の回復となっている。一方、単身世帯では同期間でそれぞれ▲8.1%、+11.4%と、より大きな変動が見られた。
(1)については、2020年の二人以上世帯の1世帯当たり人員数は平均2.21人であり、消費支出額は月平均277,926円だが、単身世帯では150,506円である(参考までに2024年の消費支出額は二人以上世帯300,243円、単身世帯169,547円)。
(2)については、図表5・6より、二人以上世帯では1世帯当たりの人員数の増加に伴い 40~50歳代で、単身世帯では35~59歳で消費支出額が膨らむ傾向があるが、35~59歳の壮年世帯が占める割合は二人以上世帯では44.1%、単身世帯では38.7%である(2020年)。
1 「家計調査」では世帯類型は二人以上世帯と単身世帯の2区分について世帯主の年齢階級別に消費支出額が公表されているため、世帯数も同様の区分で見ていく。
(2025年06月12日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/06/12 | 増え行く単身世帯と家計消費への影響-世帯構造変化に基づく2050年までの家計消費の推計 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
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