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コラム
2025年06月10日

投資部門別売買動向(25年5月)~海外投資家は4月後半から買い越しに転換~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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2025年5月の日経平均株価は、米中の追加関税引き下げ合意や円安進行を背景に2カ月連続で上昇した。上旬は、米英貿易協定の合意や日米の金融政策据え置きが好感され、日経平均株価は13日に3万8,000円を上回り3万8,183円まで上昇した。下旬は、米中協議の進展が支援材料となったものの米国債の格下げや円高進行が重荷となり、22日には3万7,000円を割り込み3万6,985円まで下落した。その後は、EU向け関税の発動延期やエヌビディアの好決算を受けて再び上昇したが、月末にかけてはトランプ関税に関する司法判断の影響から方向感に欠ける展開となり、日経平均株価は3万7,965円で終えた。投資部門別では、海外投資家と事業法人が買い越す一方、信託銀行と個人は売り越した(図表1)。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2025年5月(4月28日~5月30日)の投資部門別の売買動向をみると、海外投資家が現物と先物の合計で2兆2,218億円の買い越しと、5月最大の買い越し部門であった。週単位では4月第3週から7週連続で買い越しが続いた(図表2)。
図表2 海外投資家は7週連続買い越し
5月は事業法人も現物と先物の合計で1兆4,766億円の買い越しとなり、月単位では48カ月連続の買い越しとなった。2025年4月~5月の自社株買い設定額は8.8兆円(TOPIX構成銘柄)と前年同期比で約1.2倍に拡大した。自社株買いは一般的に決算発表に合わせて公表されることが多く、決算発表が集中した5月中旬直後の5月第4週(5月19日~23日)には約7,000億円の大幅な買い越しが見られた(図表3)。
図表3 事業法人は48カ月連続買い越し
一方、信託銀行は現物と先物の合計で1兆5,512億円の売り越しと、5月最大の売り越し部門であった。週単位では4月第4週から6週連続の売り越しが続いた(図表4)。
図表4 信託銀行は6週連続売り越し
また、5月は個人も現物と先物の合計で1兆1,203億円売り越した。週単位では4月第2週から8週連続で売り越しており、上昇局面での利益確定売りが継続したと見られる(図表5)。
図表5 個人は8週連続売り越し
図表6は、2023年1月から2025年5月までの各投資部門別の現物と先物の週次累積売買動向と日経平均株価の推移を示している。期間中、事業法人は約17兆円の買い越しと最大の買い越し部門となった。一方、海外投資家、個人、信託銀行は累積で売り越しとなった。海外投資家は2023年1月の東証による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の要請」を受けて、2023年前半は日本株を大幅に買い越した。しかし、2024年に入り、金融政策の転換や円高進行、米国の景気減速懸念などが重なり、特に7月以降は売りが優勢となった。2025年4月上旬にはトランプ政権による関税政策への警戒感から累積売り越し額は3.8兆円に達したが、その後は買いに転じ、5月末時点では売り越し額は0.8兆円まで縮小している。今後については、事業法人の買いは継続すると見込まれる中、海外投資家の買い越しが6月以降も継続するのかが注目される。
図表6 投資部門別累積売買動向

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年06月10日「研究員の眼」)

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

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