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- 米国経済の見通し-対中関税引き下げから景気後退懸念は緩和も、政策の予見可能性の低さから経済見通しは不透明
2025年06月09日
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3.物価・金融政策・長期金利の動向
(物価)関税が一時的にインフレを押上げ
25年4月の主要なインフレ指標(前年同月比)は消費者物価(CPI)の総合指数が+2.3%、物価の基調を示すコア指数が+2.8%とそれぞれ25年1月の+3.0%、+3.3%から低下基調が持続している(図表19)。また、FRBが物価指標として注目するPCE価格指数も総合指数が+2.1%、コア指数が+2.5%(前月:+2.9%)とこちらも25年2月の+2.6%、+2.9%から低下基調が続いているため、足元でトランプ政権の関税引き上げの影響は限定的となっている。
これに対して、前述のように家計の短期インフレ予想が関税政策を懸念して大幅に上昇した。ミシガン大学調査の家計の1年後のインフレ予想は25年5月が前年比+6.6%と1981年以来の水準に上昇したほか、今後5年~10年のインフレ予想は5月が+4.2%と前月の+4.4%からは低下したものの、91年以来の水準となっている(図表20)。
25年4月の主要なインフレ指標(前年同月比)は消費者物価(CPI)の総合指数が+2.3%、物価の基調を示すコア指数が+2.8%とそれぞれ25年1月の+3.0%、+3.3%から低下基調が持続している(図表19)。また、FRBが物価指標として注目するPCE価格指数も総合指数が+2.1%、コア指数が+2.5%(前月:+2.9%)とこちらも25年2月の+2.6%、+2.9%から低下基調が続いているため、足元でトランプ政権の関税引き上げの影響は限定的となっている。
これに対して、前述のように家計の短期インフレ予想が関税政策を懸念して大幅に上昇した。ミシガン大学調査の家計の1年後のインフレ予想は25年5月が前年比+6.6%と1981年以来の水準に上昇したほか、今後5年~10年のインフレ予想は5月が+4.2%と前月の+4.4%からは低下したものの、91年以来の水準となっている(図表20)。
もっとも、家計のインフレ予想とは対照的にフィラデルフィア連銀による専門家調査では25年4-6月期の今後5年間のCPI予想が前年比+2.5%、今後10年間のCPI予想が+2.4%と概ねFRBの物価目標(2%)と整合的な水準となっており、関税の影響は限定的に留まっている。
当研究所はトランプ政権による関税政策によってCPIの総合指数は25年7-9月期には+3.7%と足元の水準から1%ポイント以上の押上げになると予想するものの、関税による物価押上げは一時的で25年10-12月期以降は再びCPIが低下基調に転じ、26年10-12月期には+2.7%まで低下すると予想している。この結果、通年では25年が+3.4%と24年の+3.0%から上昇するものの、26年は+2.9%と25年から低下しよう。
ただし、トランプ政権の場当たり的な関税政策が今後も継続し、家計のインフレ予想は高止まり、もしくは一段と上昇する場合にはインフレ高進が長期化する可能が高まろう。
当研究所はトランプ政権による関税政策によってCPIの総合指数は25年7-9月期には+3.7%と足元の水準から1%ポイント以上の押上げになると予想するものの、関税による物価押上げは一時的で25年10-12月期以降は再びCPIが低下基調に転じ、26年10-12月期には+2.7%まで低下すると予想している。この結果、通年では25年が+3.4%と24年の+3.0%から上昇するものの、26年は+2.9%と25年から低下しよう。
ただし、トランプ政権の場当たり的な関税政策が今後も継続し、家計のインフレ予想は高止まり、もしくは一段と上昇する場合にはインフレ高進が長期化する可能が高まろう。
(金融政策)25年内は1回、26年は3回の利下げを予想
FRBはインフレ率が持続的に2%に向かいつつあるとした上で、もう一段の労働市場の悪化を望まないとして24年9月に政策金利を▲0.5%引き下げたほか、11月と12月にもそれぞれ▲0.25%引き下げて4.25%~4.5%としていた(図表21)。
FRBはインフレ率が持続的に2%に向かいつつあるとした上で、もう一段の労働市場の悪化を望まないとして24年9月に政策金利を▲0.5%引き下げたほか、11月と12月にもそれぞれ▲0.25%引き下げて4.25%~4.5%としていた(図表21)。
その後、FRBは25年5月会合まで政策金利を3会合連続で据え置いている。これは、トランプ大統領による場当たり的な関税政策の影響で25年の経済見通しの不透明感が増している中、FRBは足元の政策金利水準は適切で経済の状況がより明確になるまで様子をみると判断していることが背景にある。直近5月会合に関する議事要旨でも、FOMC参加者が主に関税引き上げの潜在的な影響を反映して、雇用と経済活動に関する下振れリスクとインフレに対する上振れリスクが高まったことを指摘した上で、経済見通しの不確実性が高まったことから、政府政策の一連の変更による正味の経済効果が明かになるまで慎重なアプローチを取ることが適切であるとの認識で一致したことが改めて示された。
一方、5月会合以降も経済見通しに対する不確実性は払拭されていないことから、来週予定されている6月会合でも政策金利の据え置きが確実視されている。なお、6月会合ではFOMC参加者の政策金利見通しが公表される。FOMC参加者がどの程度の利下げを見込んでいるのか、見通しの中央値だけでなく、各参加者の見通しのバラつきをみる上でドットチャートの動向が注目される。
当研究所はインフレが物価目標を上回る中、政策金利は幾分引締め気味となっており、FRBは経済政策による経済やインフレの動向を慎重に見極める姿勢を示していることから、これらの影響を慎重に見極めた上で25年は12月に利下げを再開すると予想している。26年はインフレ低下が続く中で9月にかけて四半期に1回のペースで利下げを継続しよう。
(長期金利)25年10-12月期平均が4.6%、26年10-12月期平均が4.2%と予想長期金利(10年金利)は、トランプ氏の再選でインフレ高進や財政赤字拡大の見方が強まったことなどから25年1月には一時4.8%近辺まで上昇した(図表22)。しかし、ユニバーサル関税や相互関税の発表を受けて米景気後退懸念が強まり、4月上旬に一時4%割れまで低下した。その後は、相互関税の適用延期や対中関税の大幅な引き下げを受けて米景気後退懸念が緩和したほか、米財政赤字拡大懸念が強まったこともあって長期金利は上昇に転じ、足元は4%台半ばで推移している。
当研究所は、トランプ政権の関税政策などに伴う景気減速懸念から長期金利に低下圧力がかかるものの、インフレ高進や財政赤字に伴うタームプレミアムの上昇による上昇圧力もあって、25年10-12月期平均で4.6%に上昇した後、26年はインフレ低下もあって26年10-12月期平均で4.2%への低下を予想している。
(2025年06月09日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
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