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- グローバル株式市場動向(2025年5月)-関税措置緩和やAIサービス・半導体需要拡大から上昇
2025年06月06日
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1――関税措置緩和やAIサービス・半導体需要拡大から上昇
1 以下、特に断りのない限り騰落率は米ドル建、配当を除いた指数値の変化率を示す。
2――国・業種別の動向
国別の動向を見ると多くの国が上昇した(図表5)。主要国について見ると、米国(+6.3%)、中国(+2.4%)、ドイツ(+4.3%)、日本(+4.3%)となった。騰落率が高かった国・地域は台湾(+12.8%)、オーストリア(+12.8%)、ギリシャ(+11.3%)だった。一方で、サウジアラビア(▲5.6%)、タイ(▲3.9%)、コロンビア(▲2.6%)の騰落率が低かった。
米国は、中国との貿易協議が進展したことによる関税への懸念の後退や好決算を公表したエヌビディアなど主要テック企業が株式市場の上昇を牽引した。
日本は米国株式市場の上昇や米国の中国や欧州などとの貿易摩擦の懸念が後退したことから上昇した。
中国では米国との間で開かれた貿易協議が進展したことや中央銀行である中国人民銀行が発表した政策金利引き下げなどの金融緩和策によって株式市場が上昇した。ただし、その後に米国と中国は双方が貿易協議で合意した内容について相手方が重大な違反をしていると主張しており今後の懸念が残されている2。
台湾では米国と中国の貿易での対立が緩和に向かうとの期待や米国のハイテク企業の好決算を受け、半導体輸出の回復が期待されたことからTSMCやメディアテックなど半導体関連銘柄を中心に上昇した3。
原油価格の値下がりを背景にサウジアラビアの株式市場は下落した。産油国で構成するOPECプラスが増産に転じたことが原油価格の値下がりにつながった。
米国は、中国との貿易協議が進展したことによる関税への懸念の後退や好決算を公表したエヌビディアなど主要テック企業が株式市場の上昇を牽引した。
日本は米国株式市場の上昇や米国の中国や欧州などとの貿易摩擦の懸念が後退したことから上昇した。
中国では米国との間で開かれた貿易協議が進展したことや中央銀行である中国人民銀行が発表した政策金利引き下げなどの金融緩和策によって株式市場が上昇した。ただし、その後に米国と中国は双方が貿易協議で合意した内容について相手方が重大な違反をしていると主張しており今後の懸念が残されている2。
台湾では米国と中国の貿易での対立が緩和に向かうとの期待や米国のハイテク企業の好決算を受け、半導体輸出の回復が期待されたことからTSMCやメディアテックなど半導体関連銘柄を中心に上昇した3。
原油価格の値下がりを背景にサウジアラビアの株式市場は下落した。産油国で構成するOPECプラスが増産に転じたことが原油価格の値下がりにつながった。
2 BBC NEWS JAPAN、「中国、貿易「休戦」合意にアメリカが「重大な違反」と トランプ氏から非難され」、2025年6月3日
3 Bloomberg、「台湾、株価指数と通貨が急伸-米中通商対立に緩和の兆し」、2025年5月2日
3――世界の主要企業の株価動向
世界の主要な企業の株価はまちまちな結果となった(図表7)。時価総額上位30社までの企業では、 ブロードコム(+25.8%)、 エヌビディア(+24.1%)、 テスラ(+22.8%)のリターンが高かった。一方で、イーライリリー(▲17.8%)、バークシャー・ハサウェイ(▲5.4%)、アップル(▲5.4%)のリターンが低かった。
米半導体大手ブロードコムは米国のハイテク企業の好決算からAI半導体需要の拡大が期待され、同業大手のエヌビディアなどとともに上昇した。
米製薬大手イーライリリーは同社が開発する肥満症治療薬「ゼップバウンド」について、米国でドラッグストアや専門薬局などヘルスケア関連サービスを手掛けるCVSヘルスが推奨リストから外したことやトランプ米政権による薬価引き下げによる業績悪化が懸念され、下落した4。
米半導体大手ブロードコムは米国のハイテク企業の好決算からAI半導体需要の拡大が期待され、同業大手のエヌビディアなどとともに上昇した。
米製薬大手イーライリリーは同社が開発する肥満症治療薬「ゼップバウンド」について、米国でドラッグストアや専門薬局などヘルスケア関連サービスを手掛けるCVSヘルスが推奨リストから外したことやトランプ米政権による薬価引き下げによる業績悪化が懸念され、下落した4。
4 Bloomberg、「イーライリリー株一時7.6%安、肥満症薬が推奨外に-利益予想引き下げ」、2025年5月2日
4――今後の見通しと注目されるテーマ
世界の株式市場は米国の関税措置の緩和を好感し上昇した。ただし、こうした動きは関税発動の延期といった一時的な措置であることや今後の交渉の先行きの懸念も残されている。このことから、トランプ大統領が主導する関税政策は今後も株式市場の変動要因として影響すると考えられる。
こうした中、6月3日に経済協力開発機構 (OECD)は世界経済見通しを公表した5。OECDは2025年の世界経済の成長率を2.9%と予測、3月時点の予測から0.2%下方修正した。OECDのマティアス・コーマン事務総長は米国による一連の関税引き上げが不確実性の長期化をもたらし成長見通しを押し下げるとともにインフレ率を押し上げる可能性が高いと指摘した。また、「このような状況において、重要な政策的優先事項は、現在の貿易摩擦を永続的に解決する建設的な対話だ」と語った。
今後、6月15-17日にはG7サミットとその際の日米首脳会談が予定されており、関税に関する協議の進展が期待される。米国と各国との交渉が行われる中、世界や日本の経済・株式市場の動向に引き続き注目したい。
5 ロイター、「OECD、世界経済見通し引き下げ トランプ関税が米経済に打撃」、2025年6月3日
こうした中、6月3日に経済協力開発機構 (OECD)は世界経済見通しを公表した5。OECDは2025年の世界経済の成長率を2.9%と予測、3月時点の予測から0.2%下方修正した。OECDのマティアス・コーマン事務総長は米国による一連の関税引き上げが不確実性の長期化をもたらし成長見通しを押し下げるとともにインフレ率を押し上げる可能性が高いと指摘した。また、「このような状況において、重要な政策的優先事項は、現在の貿易摩擦を永続的に解決する建設的な対話だ」と語った。
今後、6月15-17日にはG7サミットとその際の日米首脳会談が予定されており、関税に関する協議の進展が期待される。米国と各国との交渉が行われる中、世界や日本の経済・株式市場の動向に引き続き注目したい。
5 ロイター、「OECD、世界経済見通し引き下げ トランプ関税が米経済に打撃」、2025年6月3日
(2025年06月06日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
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