コラム
2025年05月15日

複素数について(その1)-虚数・複素数とは(その歴史と概要)-

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複素数の性質

複素数の基本的な性質としては、以下が挙げられる。

・2つの複素数が等しいのは、それらの実部と虚部がそれぞれ等しい場合である。
四則演算に関しては、以下の通りとなる。
複素数の基本的な性質
べき乗に関しては、nやmを整数として、以下の通りとなる。
べき乗
複素数全体の集合ℂにおいては、以下の通りとなっている。

・2つの複素数の間に、通常の大小関係はない12
・任意の二つの複素数の和及び積は再び複素数になる。
・任意の複素数 z に対して、加法における逆元 −z が存在する。
・任意の(ゼロでない)複素数zに対して、乗法における逆元 1/zが存在する。
・さらに、複素数 z1, z2, z3 に対して、以下が成り立つ13
複素数全体の集合
共役複素数については、以下のことが成り立つ。

任意の複素数zやw(商ではw≠0)に対して、
共役複素数
 
12 例えば、iと0の大小関係を矛盾なく設定することはできない。また、絶対値で大小関係を設定する場合、これは実数の世界における大小関係とは整合しない異なるものとなってしまう。
13 複素数全体の集合ℂは、体の公理を満たし、可換体となる。ℂは複素数体と呼ばれる。

複素数の極形式を用いる場合

極座標を用いて、2つの複素数の極形式を
複素数の極形式
とすると、積z12は、三角関数の加法定理を用いることにより、
三角関数の加法定理を用いる
となる。則ち、積の絶対値は絶対値の積であり、積の偏角は偏角の和となる。

同様に、商z1/z2
商z1/z2
となり、商の絶対値は絶対値の商であり、商の偏角は偏角の差となる。

オイラーの公式を用いれば、以下のように表現できる。
オイラーの公式を用いる
また、偏角に関して、以下の等式(ただし、両辺の差が2πの任意の整数倍であることを除いて成立する式)が成り立つ。
偏角に関しての等式

ド・モアブルの定理(de Moivre's theorem)

複素数(特に実数 θ)及び 整数 n に対して、
ド・モアブルの定理
が成り立つ。これはオイラーの公式により、以下のように表すことができる。
オイラーの公式

複素数平面で示される四則演算

複素数の四則演算は、複素数平面上は以下のように表される(以下の図参照)。

z1=a+bi         z2 =c+di    とした場合

・複素数の和と差
z1+ z2  は、z1 を実軸方向に c,虚軸方向に d 平行移動した点
z1-z2  は、z1 を実軸方向に -c,虚軸方向に -d 平行移動した点

複素数の積と商
積z1 z2 を表す点は、z1 を表す点を、原点からの距離 r1 を r2 倍し,原点を中心に θ2 だけ回転移動させた点

商 z1/z2 を表す点は、z1 を表す点を、原点からの距離 r1 を 1/r2 倍し,原点を中心に −θ2 だけ回転移動させた点

特に、iを掛けることは、原点を中心にπ/2(90°)だけ回転させることになる。また、絶対値(大きさ)が1の複素数 cos θ+i sin θを掛けることは、θだけ回転させることになる。
複素数平面

最後に

虚数及び複素数を巡る話題について、複数回に分けて報告することにしたが、今回は、「虚数」や「複素数」の歴史とその概要について、報告した。

今回の内容は、我々が高校時代に学んだことの繰り返しになっているので、あまり面白くないと感じられた方も多いかもしれない。それでも、次回以降の研究員の眼で、複素数が数学や社会において、どのように利用されているのかを説明していく上では基本的な事項となるので、ご了承いただきたい。

次回は、虚数や複素数が数学の世界において、どのように有効に利用されているのかということで、方程式に関係するトピックについて報告する。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年05月15日「研究員の眼」)

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