NEW
2025年05月14日

インド消費者物価(25年4月)~4月のCPI上昇率は+3.2%、食品インフレの減速続く

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

文字サイズ

インド統計・計画実施省が5月13日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2025年4月のCPI上昇率は前年同月比3.2%と、前月の同3.3%から低下し(図表1)、事前の市場予想(同3.2%)1と一致した。
 

地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比3.4%(前月:同3.4%)と横ばいだったが、農村部が同2.9%(前月:同3.2%)となり6カ月連続で低下した。

品目別にみると、主に食品価格の下落がCPIを押し下げた。

まず食品は前年同月比1.8%となり、前月の同2.7%から低下した(図表2)。食品のうち、まず野菜が同▲11.0%(前月:同▲7.0%)となり価格下落が続いた。特にインドで日常的に必須な野菜とされるトマトは前月比4.9%、ジャガイモは同1.8%上昇したものの、タマネギが同▲17.4%と大きく下落した。また豆類(前年同月比▲5.2%)と香辛料(同▲3.4%)、肉・魚(同▲0.4%)が減少したほか、国際価格の軟化により穀物製品(同5.3%)が鈍化した。他方、昨年9月の輸入税率の引上げを背景に高騰している食用油(前年同月比17.4%)や果物(同13.8%)は二桁増が続いたほか、加工食品(同4.4%)と牛乳・乳製品(同2.7%)が小幅に上昇した。

燃料・電力は前年同月比2.9%(前月:同1.4%)と上昇し、2ヵ月連続で増加した。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比4.2%(前月:同4.1%)と、小幅に上昇した。カテゴリー別にみると、重荷金価格の高騰によりパーソナルケア(同12.9%)が二桁増だったほか、教育(同4.1%)や輸送・通信(同3.7%)、衣服・靴(同2.7%)が前月から小幅に上昇した。一方、家庭用品・サービス(同2.5%)は前月から低下、娯楽(同2.4%)と住宅(同3.0%)は前月から横ばいだった。

(図表1) /(図表2)食品価格指数の要因分解
4月のインフレ率は野菜、穀物、豆類を含む食品価格が幅広く低下し、2019年7月以来の低水準となっている。当面はインド北部を襲う熱波や一部地域の季節外れの雨の影響で野菜価格が上昇に転じる可能性もあるが、日次の食品価格の推移をみる限り5月も基調的な上昇は見られない。またインド気象局(IMD)によると、今年の南西モンスーン期間中(6~9月)の降雨量は長期平均(LPA)の105%を超えると予想されており、供給網が適切に機能する限り食品価格は落ち着いた推移が続きそうだ。さらに足元の原油価格の下落や通貨ルピー高はインフレ見通しにとって好ましい動きとなっている。
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標 昨年7月以降はインド経済の減速が強まり景気下支え策が求められるなか、RBIは4月の金融政策委員会(MPC)では2会合連続で0.25%の利下げを実施し、金融政策のスタンスをこれまでの「中立」から「緩和的」に変更している。トランプ米政権の関税政策の影響でインドの経済成長と物価に不透明感が強まるなか、今回インフレ率がインド準備銀行(RBI)の物価目標(+4%)を3カ月連続で下回ったことにより(図表3)、RBIに更なる金利の引き下げ余地が生まれた。RBIは穏やかなインフレが続くなかで成長の下支えを優先して、6月と8月の会合ではそれぞれ0.25%の追加利下げを実施し、政策金利は5.5%まで引き下げられると予想する。
 
1 Bloomberg集計の中央値。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年05月14日「経済・金融フラッシュ」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【インド消費者物価(25年4月)~4月のCPI上昇率は+3.2%、食品インフレの減速続く】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

インド消費者物価(25年4月)~4月のCPI上昇率は+3.2%、食品インフレの減速続くのレポート Topへ