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2025年05月09日
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1――トランプ関税への各国の対応が注目される
2025年4月、世界の株式市場は米国や中国の株式市場が下落した一方で、日本やドイツが上昇した。米国による関税引き上げに対して中国は米国への関税引き上げで対抗した。両国間で関税引き上げの応酬となり両国の経済・株式市場を押し下げる要因となった。一方で米国による関税引き上げの90日間猶予などから日本やドイツは上昇した。ドイツでは軍備増強に向けた積極財政も上昇要因となった。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)の騰落率1は2025年4月+0.8%、過去1年(2024年5月-2025年4月)では+10.2%となっている(図表1)。
先進国と新興国を比べると、新興国が先進国を上回った。先進国(MSCI World Index)が+0.7%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+1.0%となった(図表2)。
先進国と新興国を比べると、新興国が先進国を上回った。先進国(MSCI World Index)が+0.7%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+1.0%となった(図表2)。
1 以下、特に断りのない限り騰落率は米ドル建、配当を除いた指数値の変化率を示す。
2――国・業種別の動向
国別の動向はまちまちであった(図表5)。主要国について見ると、米国(▲0.6%)、中国(▲4.6%)、ドイツ(+7.0%)、日本(+5.4%)となった。騰落率が高かった国・地域はメキシコ(+12.6%)、ハンガリー(+9.6%)、ポルトガル(+8.2%)だった。一方で、パキスタン(▲7.8%)、トルコ(▲7.3%)、中国(▲4.6%)の騰落率が低かった。
米国は、月初関税の引き上げにより下落した。また、月後半にはトランプ大統領が米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長について、経済情勢への対応が遅すぎると批判し景気浮揚のための金利引き下げを要求した2。しかし、市場参加者はこの発言を金融政策の独立性や金融市場の健全性を損なうものとして嫌気され、米国株式市場やドル、米国債の下落につながった。その後、トランプ大統領は発言を訂正したことで株式市場は再度上昇した。
日本では月初には関税引き上げにより下落したが、その後は関税引き上げの90日間の停止など米国の強硬姿勢が和らいだとの見方が広がり上昇が続いた。
中国は、米国の関税引き上げへの対抗措置として米国から中国への輸入品への関税引き上げを公表した。これに対して米国はさらなる関税の引き上げを行ったことから関税引き上げの応酬となり株式市場は下落した。
トランプ米大統領は全ての輸入品に一律10%の関税を課すとともに相手国の関税や非関税障壁を考慮した税率を上乗せすることを発表した3。しかし、カナダとメキシコについては10%の追加関税は課されないことが報道された。このことから、メキシコでは通貨ペソが上昇するとともに株式市場が上昇した。
パキスタンとインドが領有権を争うカシミール地方のインド支配地域で観光客グループが武装集団に銃撃されたことで多数の死傷者がでた4。これを受けてインド政府はパキスタンとの国境閉鎖や水資源利用条約の停止、インド国内の一部のパキスタン人への出国命令といった措置を発表した。こうした両国間関係の緊張による地政学リスクの高まりを受けてパキスタンの株式市場は下落した。
米国は、月初関税の引き上げにより下落した。また、月後半にはトランプ大統領が米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長について、経済情勢への対応が遅すぎると批判し景気浮揚のための金利引き下げを要求した2。しかし、市場参加者はこの発言を金融政策の独立性や金融市場の健全性を損なうものとして嫌気され、米国株式市場やドル、米国債の下落につながった。その後、トランプ大統領は発言を訂正したことで株式市場は再度上昇した。
日本では月初には関税引き上げにより下落したが、その後は関税引き上げの90日間の停止など米国の強硬姿勢が和らいだとの見方が広がり上昇が続いた。
中国は、米国の関税引き上げへの対抗措置として米国から中国への輸入品への関税引き上げを公表した。これに対して米国はさらなる関税の引き上げを行ったことから関税引き上げの応酬となり株式市場は下落した。
トランプ米大統領は全ての輸入品に一律10%の関税を課すとともに相手国の関税や非関税障壁を考慮した税率を上乗せすることを発表した3。しかし、カナダとメキシコについては10%の追加関税は課されないことが報道された。このことから、メキシコでは通貨ペソが上昇するとともに株式市場が上昇した。
パキスタンとインドが領有権を争うカシミール地方のインド支配地域で観光客グループが武装集団に銃撃されたことで多数の死傷者がでた4。これを受けてインド政府はパキスタンとの国境閉鎖や水資源利用条約の停止、インド国内の一部のパキスタン人への出国命令といった措置を発表した。こうした両国間関係の緊張による地政学リスクの高まりを受けてパキスタンの株式市場は下落した。
2 BBC NEWS JAPAN、「米国株とドルが急落、トランプ氏のFRB議長批判受け」、2025年4月22日
3 ロイター通信、「中南米金融市場=株式上昇、相互関税発表後にメキシコペソ反発」、2025年4月3日
4 BBC NEWS JAPAN、「インド、パキスタンとの主要国境を閉鎖 カシミールでの銃撃の死者26人に」、2025年4月24日
3――世界の主要企業の株価動向
世界の主要な企業の株価はまちまちな結果となった(図表7)。時価総額上位30位までの企業では、 ネットフリックス(+20.5%)、 ブロードコム(+13.0%)、 ウォルマート(+12.8%)のリターンが高かった。一方で、ユナイテッドヘルス・グループ(▲20.7%)、エクソンモービル(▲8.0%)、テンセント・ホールディングス(▲6.1%)のリターンが低かった。
ネットフリックスは2025年1-3月期の決算で過去最高益となったことが好感され上昇した5。ネットフリックスは会員数の伸び悩みなどが懸念されていたが、値上げや英国のドラマ「アドレセンス」などのヒット作品が業績を押し上げた。
ユナイテッドヘルス・グループはメディケア(高齢者向け公的医療保険)事業の採算悪化などから2025年1-3月期決算の利益が市場予想を下回ったことや2025年12月期通期の利益見通しを引き下げたことから下落した6。
ネットフリックスは2025年1-3月期の決算で過去最高益となったことが好感され上昇した5。ネットフリックスは会員数の伸び悩みなどが懸念されていたが、値上げや英国のドラマ「アドレセンス」などのヒット作品が業績を押し上げた。
ユナイテッドヘルス・グループはメディケア(高齢者向け公的医療保険)事業の採算悪化などから2025年1-3月期決算の利益が市場予想を下回ったことや2025年12月期通期の利益見通しを引き下げたことから下落した6。
5 Bloomberg、「ネットフリックス株上昇、予想上回る過去最高益-値上げなど寄与」、2025年4月18日
6 日本経済新聞、「米国株、ダウ続落し527ドル安 医療保険のユナイテッドヘルス22%下落」、2025年4月18日
4――今後の見通しと注目されるテーマ
世界の株式市場は米国のトランプ大統領の関税政策に左右される状況が続いている。米国は相互関税の導入発表後には、90日間の猶予期間を設けることを公表しており、関税政策の内容は目まぐるしい変更が続いている。
こうした中、IMF(国際通貨基金)は世界経済見通しを公表した7。IMFは、2025年の世界経済の成長率予測を1月時点の3.3%から2.8%に大幅に下方修正した。「貿易摩擦が激化し、金融市場の調整が進む中、見通しにおいては、下振れリスクの高まりが目立つ」と指摘、政策スタンスの変化やセンチメントの悪化により、国際金融情勢がさらに厳しさを増す可能性があるとしている。
トランプ大統領の関税政策が公表され、世界経済の見通しや株式市場は大幅に下落した。しかし、米国は各国との交渉を行っており、今後はその結果である関税政策の内容が株式市場に影響を与えると考えられる。関税の引き上げは米国自身の経済にも大きな悪影響を与えているためだ。
米国のベッセント財務長官は「高関税は持続不可能」と発言した8。トランプ政権は関税引き上げによる米国経済への悪影響やそれによる政権への反発の高まりを懸念しており、各国との交渉を急ぐとが考えられる。そうした交渉の結果によって各国の経済見通しは変化、株式市場はそれを反映すると考えられる。米国と各国との交渉と株式市場の動向に引き続き注目したい。
7 国際通貨基金、「政策転換の中、重要な分岐点に」、2025年4月
8 日本経済新聞、「米財務長官、米中関税合戦「持続可能でない」 緊張緩和を模索」、2025年4月23日
こうした中、IMF(国際通貨基金)は世界経済見通しを公表した7。IMFは、2025年の世界経済の成長率予測を1月時点の3.3%から2.8%に大幅に下方修正した。「貿易摩擦が激化し、金融市場の調整が進む中、見通しにおいては、下振れリスクの高まりが目立つ」と指摘、政策スタンスの変化やセンチメントの悪化により、国際金融情勢がさらに厳しさを増す可能性があるとしている。
トランプ大統領の関税政策が公表され、世界経済の見通しや株式市場は大幅に下落した。しかし、米国は各国との交渉を行っており、今後はその結果である関税政策の内容が株式市場に影響を与えると考えられる。関税の引き上げは米国自身の経済にも大きな悪影響を与えているためだ。
米国のベッセント財務長官は「高関税は持続不可能」と発言した8。トランプ政権は関税引き上げによる米国経済への悪影響やそれによる政権への反発の高まりを懸念しており、各国との交渉を急ぐとが考えられる。そうした交渉の結果によって各国の経済見通しは変化、株式市場はそれを反映すると考えられる。米国と各国との交渉と株式市場の動向に引き続き注目したい。
7 国際通貨基金、「政策転換の中、重要な分岐点に」、2025年4月
8 日本経済新聞、「米財務長官、米中関税合戦「持続可能でない」 緊張緩和を模索」、2025年4月23日
(2025年05月09日「基礎研レター」)
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03-3512-1860
経歴
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
原田 哲志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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