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2025年05月09日

東京オフィス市場は賃料上昇率が拡大。J-REIT市場は需給改善で反発-不動産クォータリー・レビュー2025年第1四半期

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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1.経済動向と住宅市場

5/16に公表予定の2025年1-3月期の実質GDPは前期比▲0.2%(前期比年率▲0.9%)と4四半期ぶりのマイナス成長になったと推計される1。財貨・サービスの輸入(前期比+2.5%)が前期の落ち込みの反動もあり、高い伸びとなったことから、外需寄与度が前期比▲0.6%と成長率を押し下げた。なお、4-6月期については、米国の関税引き上げの影響で輸出および国内生産が大きく下押しされると考えられ、現時点では2四半期連続のマイナス成長が予想される。

経済産業省によると、1-3月期の鉱工業生産指数は前期比▲0.7%と4四半期ぶりの減産となった。(図表-1)。業種別では、自動車が前期比+0.5%と2四半期連続で増加した一方で、生産用機械(同▲4.7%)や情報通信機械(同▲11.5%)が落ち込み、生産全体を押し下げた。

ニッセイ基礎研究所は、3月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2025年度+1.1%、2026年度+1.2%を予想する(図表-2)2。ただし、トランプ政権の関税政策を受けた世界経済の急減速や、実質所得の低迷を主因とした消費の腰折れなど、先行きの下振れリスクに十分留意する必要がある。
図表-1 鉱工業生産(前期比)/図表-2 実質GDP成長率の推移(年度)
住宅市場では、住宅価格の上昇が続いている。2025年3月の新設住宅着工戸数は89,432戸(前年同月比+39.1%)と2カ月連続で増加し、1-3月累計では約20.6万戸(前年同期比+13.1%)となった(図表-3)。なお、3月の大幅増は、建築物省エネ法および建築基準法の改正(2025年4月施行)3を前にした駆け込みの影響が大きく、今後は反動減が見込まれる。
図表-3 新設住宅着工戸数(全国、暦年比較)
2025年3月の首都圏のマンション新規発売戸数は2,210戸(前年同月比▲9.8%)、1-3月累計では4,118戸(前年同期比▲15.6%)となった(図表-4)。3月の1戸当たり平均価格は10,485万円(前年同月比+37.5%)、m2単価は158.9万円(前年同月比+40.0%)、販売在庫は6,116戸(前年比+455戸)となっている。
図表-4 首都圏のマンション新規発売戸数(暦年比較)
東日本不動産流通機構によると、2025年3月の首都圏の中古マンション成約件数は4,991件(前年同月比+31.0%)と5カ月連続で増加し、1-3月累計では12,385件(前年同期比+25.5%)と2四半期連続で増加した(図表-5)。中古マンション市場では価格の上昇と成約件数の増加が続いている。
図表-5 首都圏の中古マンション成約件数(12カ月累計値)
また、日本不動産研究所によると、2025年2月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前月比+0.5%、過去1年間では+8.1%の上昇となった(図表-6)。
図表-6 不動研住宅価格指数(首都圏中古マンション)
 
1 斎藤太郎『2025年1-3月の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2025年4月30日)
2 斎藤太郎『2024~2026年度経済見通し-24年10-12月期GDP2次速報後改定』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2025年3月11日)
3 建築確認審査における「4号特例の見直し・縮小」、木造建築物に仕様に応じた「構造規制の合理化」、原則として全ての住宅・建築物の「省エネ基準への適応義務化」等

2.地価動向

2.地価動向

地価は、住宅地・商業地ともに上昇している。国土交通省の「地価LOOKレポート(2024年第4四半期)」によると、4四半期連続で全ての地区(全国80地区)が上昇となった(図表-7)。同レポートでは、「住宅地では利便性や住環境に優れた地区におけるマンション需要に引き続き堅調さが認められたことなどから上昇傾向が継続。商業地では再開発事業の進展や国内外からの観光客の増加もあり店舗・ホテル需要が堅調であったこと。また、オフィス需要も底堅く推移したことなどから上昇傾向が継続した」としている。
図表-7 全国の地価上昇・下落地区の推移
また、野村不動産ソリューションズによると、首都圏住宅地価格の変動率(4/1時点)は前期比+1.3%(前回+1.0%)となり19四半期連続でプラスとなった。東京都区部では、相対的に割安感のある中古戸建ての引き合いが活発で、住宅地地価の上昇率は拡大傾向にある(図表-8)。
図表-8 首都圏の住宅地価格(変動率、前期比)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年05月09日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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