2025年04月18日

トランプ関税へのアプローチ-日EUの相違点・共通点

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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■要旨
 
  1. トランプ大統領が「日本との協議が最優先」と位置付けるのは、相互関税の効果を米国内にアピールできる成果を得られると期待してのことだろう。
     
  2. 対EU交渉では、対日交渉のように、関税・非関税障壁と、通貨問題、防衛費負担の問題と一体で交渉することは難しい。EUが提案したゼロ関税協定はトランプ大統領が望む成果ではなさそうだ。規制改革は双方に利益がある解決策だが、トランプ大統領が望むスピードでは進まず、一般の米国民は成果を実感し辛い。
     
  3. 日本とEUのアプローチには共通点もある。安全保障の同盟として米国を必要としているため、交渉を通じた問題の解決を望み、副作用の大きい報復措置にも慎重だ。
     
  4. EUは、対米交渉の行方が見通せず、報復に関わる重大なリスクを意識せざるを得ない状況で、FTAの締結などを通じた貿易パートナーの多角化のギアを上げている。
     
  5. 日本にも対米交渉と同時に、自由な貿易を支持する国々と幅広い連携を働きかけることによって、ダメージコントロールと新たな成長機会を追求、自由貿易を守る役割を果たして欲しい。

 
米EU間の関税交渉のテーマと双方の立ち位置

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月18日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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