2025年04月10日

企業物価指数2025年3月~国内企業物価は前年比4%台の伸びが継続~

経済研究部 研究員 佐藤 雅之

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1.国内企業物価は4ヵ月連続で前年比4%台

企業物価指数の推移 日本銀行が4月10日に発表した企業物価指数によると、2025年3月の国内企業物価は、前年比4.2%(2月:同4.1%)と、4ヵ月連続で4%台の高い伸びとなった。

内訳をみると23類別中、19類別が上昇、4類別が低下となった。政府による燃料油補助金の縮小を受けて、ガソリンが前年比7.2%、軽油が同11.8%と高い伸びとなったことから、石油・石炭製品は同8.6%(2月:同5.9%)となった。電力・都市ガス・水道は、前年比6.4%(2月:同6.0%)と、12月(同12.8%)や1月(同11.2%)に比べて伸びは鈍化した。1月使用分(2月請求分)から再開されている電気・都市ガス代への支援策が押し下げ要因となっており、事業用電力が前年比7.4%(2月:同7.4%)、都市ガスが同3.5%(2月:同1.3%)となった。農林水産物は、精米が前年比68.8%、鶏卵が同53.2%と大幅な上昇を続けていることから、前年比40.1%(2月:同40.2%)となった。
国内企業物価の推移(前月比寄与度)/国内企業物価の推移(前年比寄与度)

2.円ベースの輸入物価は2ヵ月連続のマイナス

3月の契約通貨ベースの輸入物価は、前年比▲1.7%(2月:同▲1.8%)と7ヵ月連続のマイナスとなった。内訳をみると、液化天然ガスが前年比▲3.8%と4ヵ月連続のマイナス、ガソリンが同▲14.9%と8ヵ月連続のマイナスとなったことなどから、石油・石炭・天然ガスは前年比・寄与度▲2.35%pt(2月:同▲2.59%pt)と7ヵ月連続で下落し、全体を押し下げた。

契約通貨ベースの前月比では、▲0.2%(2月:同0.3%)とマイナスに転じた。内訳をみると、原油(前月比▲2.3%)やジェット燃料油(同▲2.4%)が低下したことで、石油・石炭・天然ガスが前月比・寄与度▲0.49%ptのマイナス寄与となった。

3月の為替相場は、対ドルでは149円台(前月比▲1.8%)と前月よりも円高水準で推移したため、為替要因による押し下げ効果となり、円ベースの輸入物価は前月比▲1.6%(2月:▲1.8%)、前年比でも▲2.2%(2月:同▲0.9%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。
輸入物価の前年比推移(契約通貨ベース)/輸入物価の前月比推移(契約通貨ベース)

3.先行きの国内企業物価は高止まり

国内企業物価は4ヵ月連続で前年比4%台となった。先行きについては、政府による燃料油補助金が縮小されていることに加えて、電気・都市ガス代の支援策は2025年3月使用分(4月請求分)で終了(3月は値引き額が縮小)することから、エネルギー価格の上昇率は高止まりすることが見込まれる。飲食料品の上昇率は前年比3.1%と、2023年夏頃(同8%台後半)に比べれば低水準にとどまっているが、食料品値上げの動きはしばらく続く可能性が高い。長引くコメ価格の高騰がすし・弁当などの飲食料品に波及していることも考えられる。一方、政府が2回にわたって合計21万トンの備蓄米を市場に放出しており、すでに一部の地域では販売が始まっていることから、高騰するコメ価格は次第に下落していくことが見込まれる。国内企業物価は、備蓄米の放出によってコメ価格が抑制されるものの、電気・都市ガス代支援策が縮小から終了へ向かうことによって物価押し上げ要因となり、高止まりすることが予想される。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月10日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   研究員

佐藤 雅之 (さとう まさゆき)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2020年4月 株式会社横浜銀行
     2024年9月 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

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