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2025年04月01日
欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-
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6|Zurich
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、2019年末までは、ソルベンシーIIと同等と考えられているSSTによる数値と社内の経済ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表してきた。ところが、2020年からはSST比率での開示を中心に据えることに変更している。Zurichによれば、SSTはZ-ECMよりも安定性をもたらし、資本は基本的には同じ方法で管理される。
ZurichのSST比率は、監督当局であるFINMA(スイス金融市場監督機構)と合意した内部モデルで算出している。
(1) SST比率の推移
2024年末のSST比率は、2023年末の234%から、18%ポイントと大きく上昇して、252%となった。
この要因については、以下の通りとなっている。
・成長のための増分資本を差し引いた営業利益等による資本形成により+34%ポイント
・金利や市場変動等の市場の影響で+15%ポイント(うち、金利の上昇で+5%ポイント、株価等変動で+4%ポイント、為替の影響で+7%ポイント)
・資本行動(配当、債務変動、M&A)で▲24%ポイント(2024年の配当支払いとM&Aによるマイナスの影響が2024年10月の5億ドルの劣後債の発行によって一部相殺された)
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、2019年末までは、ソルベンシーIIと同等と考えられているSSTによる数値と社内の経済ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表してきた。ところが、2020年からはSST比率での開示を中心に据えることに変更している。Zurichによれば、SSTはZ-ECMよりも安定性をもたらし、資本は基本的には同じ方法で管理される。
ZurichのSST比率は、監督当局であるFINMA(スイス金融市場監督機構)と合意した内部モデルで算出している。
(1) SST比率の推移
2024年末のSST比率は、2023年末の234%から、18%ポイントと大きく上昇して、252%となった。
この要因については、以下の通りとなっている。
・成長のための増分資本を差し引いた営業利益等による資本形成により+34%ポイント
・金利や市場変動等の市場の影響で+15%ポイント(うち、金利の上昇で+5%ポイント、株価等変動で+4%ポイント、為替の影響で+7%ポイント)
・資本行動(配当、債務変動、M&A)で▲24%ポイント(2024年の配当支払いとM&Aによるマイナスの影響が2024年10月の5億ドルの劣後債の発行によって一部相殺された)
(2) 感応度の推移
Zurichは、SST比率の感応度について、2020年からは、第1四半期末と第3四半期末の数値を公表してきている。
これによると、過去においては金利や信用スプレッドによる感応度がかなり高いものになっていたが、2021年からの数値は若干水準が低下し、その後もほぼ安定した水準で推移している。
なお、Zurichは、「感応度は、個別ではあるが瞬間的なショックとして考慮される。これらは最良推定値であり、非線形である。例えば、市場の動きの規模が変化すると、その時点の一般的な市場状況に応じて、SST比率への影響が不釣り合いに大きくなる(又は小さくなる)可能性がある。」と説明している。
Zurichは、SST比率の感応度について、2020年からは、第1四半期末と第3四半期末の数値を公表してきている。
これによると、過去においては金利や信用スプレッドによる感応度がかなり高いものになっていたが、2021年からの数値は若干水準が低下し、その後もほぼ安定した水準で推移している。
なお、Zurichは、「感応度は、個別ではあるが瞬間的なショックとして考慮される。これらは最良推定値であり、非線形である。例えば、市場の動きの規模が変化すると、その時点の一般的な市場状況に応じて、SST比率への影響が不釣り合いに大きくなる(又は小さくなる)可能性がある。」と説明している。
(3) トピック
Zurichの2024年における主な資本取引等とその概要は、以下の通りであった。
2024年1月4日に、インドのKotak Mahindra General Insuranceの51%の株式を取得して、インドの損害保険市場に参入する、と発表した。時価総額でインド第3位の民間銀行であるKotak Mahindra Bank Limitedとの戦略的提携は、(規制当局の承認と慣例的な決算調整を条件に)新たな成長資本と株式購入の組み合わせにより、Kotak Mahindra General Insuranceの株式51%を4億8,800万米ドルで取得する提案を通じて行われる。さらに、Zurichは将来的に最大19%の株式を追加取得する予定である、と述べた。
2024年1月30日には、Viridium GroupがドイツのZurich Life Legacyの買収を計画通りに完了しないことを知らされたとし、このポートフォリオの解決策を見つけることに尽力しており、オプションを検討する予定である、と発表した。なお、Zurichは、この取引によりSST比率が8%ポイント上昇することを想定していたが、今回の件を受けて、これはZurichの目標や資本管理計画には影響しない、としている。
2024年6月17日に、株式消却による資本削減を目的として、2月22日に発表した最大11億スイスフランの公開株式買い戻しプログラムを開始する、と発表した。なお、この自社株買いプログラムは、2024年10月30日に完了したと発表された。
2024年6月19日に、Kotak Mahindra General Insuranceの70%を取得し、2021年に外国直接投資規則が改正されて最大74%の外国人所有が認められて以来、インドに進出する初の外国保険会社となった、と発表した。
2024年6月26日に、AIGのグローバル個人旅行保険及びアシスタンス事業であるAIG Travelを6億ドル(及び潜在的な追加アーンアウト支払い)で買収する契約を締結したことを発表した。この事業はチューリッヒの旅行保険プロバイダーであるCover-More Group(Cover-More)と統合され、米国での展開を拡大する。この買収により、Zurichは新たなグローバルなリテール顧客基盤にアクセスでき、世界有数の旅行保険会社になる、と述べている。なお、2024年12月3日に、この買収が完了し、世界中で 2,000 万人以上の顧客と 200 社の販売パートナーにサービスを提供する世界有数の旅行保険会社となった、と発表した。AIG の以前の世界的な個人旅行保険及びアシスタンス事業は、チューリッヒ所有の旅行保険会社 Cover-More Group と統合され、「Zurich Cover-More」として運営され、本社は米国に移転する。なお、この取引はチューリッヒのSST比率に5%ポイントの影響を及ぼした。
2024年10月17日に、期限付き劣後債5億ドルの調達に成功したと発表した。
Zurichの2024年における主な資本取引等とその概要は、以下の通りであった。
2024年1月4日に、インドのKotak Mahindra General Insuranceの51%の株式を取得して、インドの損害保険市場に参入する、と発表した。時価総額でインド第3位の民間銀行であるKotak Mahindra Bank Limitedとの戦略的提携は、(規制当局の承認と慣例的な決算調整を条件に)新たな成長資本と株式購入の組み合わせにより、Kotak Mahindra General Insuranceの株式51%を4億8,800万米ドルで取得する提案を通じて行われる。さらに、Zurichは将来的に最大19%の株式を追加取得する予定である、と述べた。
2024年1月30日には、Viridium GroupがドイツのZurich Life Legacyの買収を計画通りに完了しないことを知らされたとし、このポートフォリオの解決策を見つけることに尽力しており、オプションを検討する予定である、と発表した。なお、Zurichは、この取引によりSST比率が8%ポイント上昇することを想定していたが、今回の件を受けて、これはZurichの目標や資本管理計画には影響しない、としている。
2024年6月17日に、株式消却による資本削減を目的として、2月22日に発表した最大11億スイスフランの公開株式買い戻しプログラムを開始する、と発表した。なお、この自社株買いプログラムは、2024年10月30日に完了したと発表された。
2024年6月19日に、Kotak Mahindra General Insuranceの70%を取得し、2021年に外国直接投資規則が改正されて最大74%の外国人所有が認められて以来、インドに進出する初の外国保険会社となった、と発表した。
2024年6月26日に、AIGのグローバル個人旅行保険及びアシスタンス事業であるAIG Travelを6億ドル(及び潜在的な追加アーンアウト支払い)で買収する契約を締結したことを発表した。この事業はチューリッヒの旅行保険プロバイダーであるCover-More Group(Cover-More)と統合され、米国での展開を拡大する。この買収により、Zurichは新たなグローバルなリテール顧客基盤にアクセスでき、世界有数の旅行保険会社になる、と述べている。なお、2024年12月3日に、この買収が完了し、世界中で 2,000 万人以上の顧客と 200 社の販売パートナーにサービスを提供する世界有数の旅行保険会社となった、と発表した。AIG の以前の世界的な個人旅行保険及びアシスタンス事業は、チューリッヒ所有の旅行保険会社 Cover-More Group と統合され、「Zurich Cover-More」として運営され、本社は米国に移転する。なお、この取引はチューリッヒのSST比率に5%ポイントの影響を及ぼした。
2024年10月17日に、期限付き劣後債5億ドルの調達に成功したと発表した。
(2025年04月01日「基礎研レポート」)
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中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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