2025年03月11日

景気ウォッチャー調査2025年2月~強烈な寒波が家計を直撃~

経済研究部 研究員 佐藤 雅之

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1.景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差3.0ポイント低下の45.6

内閣府が3月10日に公表した景気ウォッチャー調査によると、25年2月の景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差3.0ポイント低下の45.6となり、2か月連続の低下となった。

地域別では、全国12地域中11地域で低下、1地域で横ばいであった。最も低下幅が大きかったのは沖縄(前月差9.1ポイント低下)で、最も低下幅が小さかったのは甲信越(同0.3ポイント低下)であった。

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連が前月差▲4.1ポイント、企業動向関連が同▲1.5ポイント、雇用関連が同2.0ポイントであった。今回の調査結果をふまえて内閣府は基調判断を「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、緩やかな回復が続くとみているものの、価格上昇の影響等に対する懸念がみられる。」から「景気は、緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる。先行きについては、緩やかな回復が続くとみているものの、引き続き価格上昇の影響等に対する懸念がみられる。」へと下方修正した。
景気の現状判断DI(季節調整値)/現状判断DI(季節調整値)の変動要因

2.強烈な寒波が家計を直撃

家計動向関連では、小売関連(前月差▲4.8ポイント)やサービス関連(同▲3.8ポイント)、飲食関連(同▲3.1ポイント)が大幅に低下した。コメントをみると、「今月は特に天候の影響で来客数が減少し、全体的に売上が伸びていない。また、物価高の影響もあり生鮮食品等の売上が良くない」(九州・百貨店)や、「豪雪の影響で公共交通が麻痺し、どこにも動けない状態のため、キャンセルが相次いでいる」(北陸・タクシー運転手)など、2月は北陸や中国地方を中心に大雪となり、例年より降雪量が増えたことから、外出を控える人が増え、来客数の減少につながったようだ。

企業動向関連では、製造業(前月差▲0.8ポイント)、非製造業(同▲2.3ポイント)ともに悪化した。コメントをみると、「物価高、賃上げ等により仕入コスト、人件費等は増加しているものの、競合他社との兼ね合いもあり販売価格への転嫁が難しく、自社吸収による利益圧迫となっている」(中国・電気機械器具製造業)など、仕入コストや人件費等のコスト増を価格転嫁できていない企業もみられる。

雇用関連では、「就職活動の解禁を3月1日に控え、多くの求人を受けている。その中でも来校して挨拶を希望する企業が非常に多く、最近は連絡なしで訪問してくる企業も増加している」(沖縄・専門学校)など、求人数は増加傾向にあることがうかがえる。

下図は、景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(現状)」のコメントをもとに計量テキスト分析1を行い、共起ネットワーク2を作成したものである。景況感が悪化したと判断した回答者のコメントには、天候、寒波、米、値上がりといった単語が多く含まれていることが読み取れる。
景気判断理由集(現状)の計量テキスト分析
 
1 分析にはKH Coder 3(樋口2020)を使用した
2 共起ネットワークとは、よく一緒に使われる語同士を、線で結んだネットワークのことである

3.景気の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差1.4ポイント低下の46.6

2~3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月差1.4ポイント低下の46.6となった。先行き判断DIの内訳をみると、雇用関連(前月差1.4ポイント)のDIは上昇したものの、家計動向関連(同▲1.7ポイント)や企業動向関連(同▲1.9ポイント)のDIは低下した。
景気の先行き判断DI(季節調整値)/先行き判断DI(季節調整値)の変動要因
家計動向関連では、「米や野菜の高値が続いていること、4月から酒類の値上げが予定されていることから、今後、消費者の節約志向が高まることになる」(北海道・スーパー)と、消費者の節約志向は続くとのコメントがみられる。その一方で、「これから観光シーズンを迎える。大阪・関西万博や芸術祭など、人流が活発になると予想している」(中国・タクシー会社)と、大阪・関西万博に期待するコメントがみられる。

企業動向関連では、「米国政権による関税の影響がどう動くか分からないが、輸出関連の仕事は間違いなく減る傾向が予想される」(北関東・一般機械器具製造業)や「米国大統領の施策により、自動車などの関税問題の影響が特に海外取引の面で出てくると考える。大手製造業における活況に陰りが出てくることを懸念している」(北陸・乗用車販売店)など、トランプ米大統領による関税政策の先行き不透明感へのコメントがみられる。

雇用関連では、「求人数の依頼も求職者も1年で1番動く時期であり、多くの成約が見込める」(東海・民間職業紹介機関)と、年度末の退職や転職など欠員募集における求人ニーズが高まっているコメントがみられる。

景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(先行き)」のコメントをもとに計量テキスト分析を行い、共起ネットワークを作成すると、景況感が悪化すると判断した回答者のコメントには、米国、値上がり、販売量、賃金といった単語が多く含まれていた。賃金については、「物価の上昇に賃金の増加が追い付かなければ、厳しい状態は変わらない」(近畿・一般機械器具製造業)と、賃金の上昇が物価高に追いついていないとのコメントがみられる。
景気判断理由集(先行き)の計量テキスト分析
2025年2月調査の結果は、強烈な寒波や物価高による影響で、現状の景況感は悪化していることを示すものであった。今後の注目点は、春闘の結果と大阪・関西万博の開催である。3月6日に連合(日本労働組合総連合会)から公表された労働組合の賃上げ要求集計結果によると、25年の賃上げ要求は平均6.09%と、32年ぶりに6%を超えた。春闘は3月12日に集中回答日を迎える。そして、4月13日から開催される大阪・関西万博では、訪日外国人の増加が予想され、インバウンド需要は拡大するだろう。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年03月11日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   研究員

佐藤 雅之 (さとう まさゆき)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2020年4月 株式会社横浜銀行
     2024年9月 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

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