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- インド経済の見通し~農村部の回復と所得減税により民間消費が景気をけん引、当面は+6%台後半の成長持続
2025年03月06日
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GDP統計の結果:成長率が+6%台を回復
2024年10-12月期の実質GVA成長率は前年同期比+6.2%(前期:同+5.8%)と上昇した(図表2)。産業部門別に見ると、まず第三次産業が同+7.4%(前期:同+7.2%)と堅調な伸びが続いた。貿易・ホテル・交通・通信(同+6.7%)が加速したほか、行政・国防(同+8.8%)と金融・不動産(同+7.2%)が高水準で推移した。
第二次産業は同+4.5%(前期:同+3.8%)と上昇した。シェアの大きい製造業が同+3.5%(前期:同+2.1%)、電気・ガスが同+5.1%(前期:同+3.0%)、鉱業が同+1.4%(前期:同▲0.3%)となり、それぞれ改善した。建設業は同+7.0%(前期:同+8.7%)となり増勢が鈍化した。
第一次産業は同+5.6%(前期:同+4.1%)と加速した。
1 2月28日、インド統計・計画実施省(MOSPI)が2024年10-12月期の国内総生産(GDP)統計を公表した。
経済概況:消費と輸出に支えられて+6%台を回復
インド経済は2021~2023年度の3年間は堅調な国内需要に支えられて年+7%以上の高成長が続いたが、2024年度に入り減速傾向が強くなり、7-9月期は前年同期比+5.6%まで鈍化した。今回発表されたGDP統計では2024年10-12月期の成長率が前年同期比+6.2%となり、7-9月期の同+5.6%から上昇したため、インド経済の底堅さを確認できたが、前年同期が同+9.5%だったことを踏まえると成長ペースは大きくダウンしている。
10-12月期の成長率上昇は消費と輸出が回復した影響が大きい。まずGDPの約7割を占める民間消費(同+6.9%)は10-12月の祭事期を迎え、宗教行事2の影響で低調だった前期の同5.9%から回復した。また昨年の良好なモンスーンの降雨とカリフ作の豊作を背景に、農村部の需要拡大が消費を押し上げた。
政府消費は前年同期比+8.3%となり、前期の同+3.8%から加速した。10-12月期の中央政府の経常支出が同+13.1%(7-9月期:同+6.0%)と、前年同期が低水準だったこともあり二桁増に加速した。
一方、投資は同5.7%(前期:同5.6%)と僅かに低下した。10-12月期は政府の資本支出(同+47.7%)が急増したため(図表3)、民間部門の設備投資が低調だったことが響いたとみられる。
純輸出は財・サービス輸出が同+10.4%(前期:同+2.5%)と大きく加速した。通関ベースの貿易統計をみると、財輸出(同+3.3%)は緩やかな増加が続いたが、ITサービス業の好調でサービス輸出(同+17.5%)は二桁成長が続いており、財・サービス輸出が加速した(図表4)。一方、財・サービス輸入(同▲1.1%)は内需の弱さを裏付けるように減少、輸出の伸びを下回った結果、純輸出の成長率寄与度は+2.5%ポイント(前期:+1.2%ポイント)と拡大した。
以上より10-12月期は農村部の消費や政府支出の加速、輸出の拡大などが実質GDPを押し上げ、成長率は+6%台に回復した。景気は底打ちしたかにみえるが、更なる景気の加速には、伸び悩む民間投資の復活が必要だろう。
10-12月期の成長率上昇は消費と輸出が回復した影響が大きい。まずGDPの約7割を占める民間消費(同+6.9%)は10-12月の祭事期を迎え、宗教行事2の影響で低調だった前期の同5.9%から回復した。また昨年の良好なモンスーンの降雨とカリフ作の豊作を背景に、農村部の需要拡大が消費を押し上げた。
政府消費は前年同期比+8.3%となり、前期の同+3.8%から加速した。10-12月期の中央政府の経常支出が同+13.1%(7-9月期:同+6.0%)と、前年同期が低水準だったこともあり二桁増に加速した。
一方、投資は同5.7%(前期:同5.6%)と僅かに低下した。10-12月期は政府の資本支出(同+47.7%)が急増したため(図表3)、民間部門の設備投資が低調だったことが響いたとみられる。
純輸出は財・サービス輸出が同+10.4%(前期:同+2.5%)と大きく加速した。通関ベースの貿易統計をみると、財輸出(同+3.3%)は緩やかな増加が続いたが、ITサービス業の好調でサービス輸出(同+17.5%)は二桁成長が続いており、財・サービス輸出が加速した(図表4)。一方、財・サービス輸入(同▲1.1%)は内需の弱さを裏付けるように減少、輸出の伸びを下回った結果、純輸出の成長率寄与度は+2.5%ポイント(前期:+1.2%ポイント)と拡大した。
以上より10-12月期は農村部の消費や政府支出の加速、輸出の拡大などが実質GDPを押し上げ、成長率は+6%台に回復した。景気は底打ちしたかにみえるが、更なる景気の加速には、伸び悩む民間投資の復活が必要だろう。
2 ピトリ・パクシャ(贅沢を控えて先祖を供養する)期間は2024年が9月18日~10月2日(2023年が9月29日~10月14日)と大半が9月だった。
物価の動向:食品インフレが緩和して鈍化傾向に
インフレ率(消費者物価上昇率)は昨年、食品価格の高騰が続き、概ね前年同月比+5%前後の水準で推移した(図表5)。食品価格の高騰は野菜価格の高止まりと食用油の国際価格の上昇によるものであった。特に野菜価格は日持ちしないため一時的な価格高騰が起こりやすい。しかし1月のCPI上昇率は同+4.3%と、5ヵ月ぶりの低水準だった。内訳をみると、主に野菜や食用油などの食品価格(同+6.0%)が低下した。昨年高騰した食品価格はカリフ作(雨季作)の豊作とラビ作(乾季作)の作付面積の拡大により緩和している。またコアCPI(同+3.7%)は比較的落ち着いた水準にあり、燃料・電力(同▲1.4%)はマイナス圏での推移が続いている。先行きは引き続きインフレ圧力が緩和して4%台まで低下していくと予想する。好天によりラビ作も順調な生育が予想されており、野菜価格が緩和するためだ。もっとも農業生産の増加によって農村部の需要が増加することやインド準備銀行(RBI)の金融緩和により、インフレ率は徐々に下げ止まるだろう。また異常気象や地政学的緊張を背景とする食品価格やエネルギー価格の不確実性は引き続きインフレリスクとなる。
結果として、インフレ率は食品価格の高騰が和らいで23年度の+5.4%から24年度が+4.8%に低下、25年度は+4.1%まで低下してRBIの物価目標の中央値である+4%に近づくと予想する。
金融政策の動向:年内に2回の追加利下げを予想
RBIは2022年にコロナ禍からの経済回復とインフレの加速、米利上げに伴う自国通貨安を受けて金融引き締めを開始すると、2023年2月にかけて政策金利(レポレート)を4.0%から6.5%まで引き上げた(図表6)。その後、RBIは食品インフレの高止まりから高水準の政策金利を維持してきたが、国内の景気減速や世界的な不確実性の高まりへの対応が求められるなか、昨年12月の金融政策委員会(MPC)では預金準備率を0.5%引き下げ、1月下旬には銀行システムの流動性不足への対応として1.5兆ルピー(約2.6兆円)の大型資金供給策を発表、そして今年2月の会合ではインフレ圧力の鈍化を受けて0.25%の利下げを決定した。利下げは約5年ぶりであり金融政策を緩和方向に舵を切り、景気を下支える姿勢を鮮明にした。先行きはRBIが追加利下げを実施するとみられる。当面は食品インフレが和らいでインフレ率が物価目標(+2%~6%)の中央値まで低下するものと予想され、RBIは年内に2回の追加利下げを実施して政策金利を5.75%とし、その後は金融政策を据え置くと予想する。景気が予想を下回って悪化した場合には、もう一段の利下げを実施する展開も考えられるが、RBIは世界的な貿易政策を巡る不確実性の高まりやルピー安によるインフレリスクを警戒するため、更なる利下げには慎重な態度を示すだろう。
(2025年03月06日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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