2025年02月26日

不動産投資市場動向(2024年)~グローバルプレゼンスが向上する日本市場。2024年の取引額は世界金融危機後の最高額に

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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国内の不動産取引動向(2024年)

不動産市場調査会社MSCIリアル・キャピタル・アナリティクス(以下、MSCI)によると、2024年の国内不動産取引額1は約8.5兆円となり前年比+20%増加した(図表1)。第3四半期までの累計額は約5.6兆円(前年同期比+6%)と前年同期比で増加したが、第4四半期の取引額が約2.9兆円(前年同期比+63%)と大幅に増加し、年間の取引額は世界金融危機後で最高額となった。
図表1 国内不動産取引額(四半期毎)
セクター別では、オフィスが約2.5兆円(占率30%)と最も大きく、次いで、産業施設が約2.1兆円(同25%)、ホテルが約1.1兆円(同13%)、賃貸マンションが約1.1兆円(同13%)、商業施設が約1.0兆円(同11%)、開発用地が約0.6兆円(同7%)となった。また、取引額の増減率(前年比)をみると、産業施設(+76%)やホテル(+49%)が引き続き大幅に増加したほか、オフィス(+34%)は前年の減少から増加に転じた(図表2)。一方、商業施設(▲19%)や高齢化住宅(▲15%)、開発用地(▲30%)は減少となった。建築費高騰の影響から開発用地の取得が敬遠される一方で、データセンターなどの新たなセクターに対する投資家の関心は高く、取引額が拡大基調にある。
図表2  セクター別の取引額の前年比増減率(2019~2024年)
次に、購入額を投資主体別(国内資本/外国資本)に集計すると、国内資本が約6.1兆円(前年比+14%)、外国資本が約2.4兆円(同+40%)となった(図表3)。外国資本による購入額が大きく増加したが、このうち、約1.3兆円は2件の大型投資2が占める。これらの取引を除くと外国資本の購入額は前年比で▲35%減少しており、本格的な回復に至っていない点に留意が必要である。
図表3  投資主体別(国内資本/外国資本)の購入額(2014年~2024年)
外国資本による購入額(2.4兆円)をセクター別にみると、産業施設が約1.3兆円(占率53%)と最も大きく、次いで、ホテルが約4,200億円(同18%)、オフィスが約3,600億円(同15%)、賃貸マンションが約2,200億円(同9%)、商業施設が約700億円(同3%)、開発用地が約600億円(同2%)となった(図表4)。引き続き、生成AI市場やインバウンド需要の拡大を背景に成長期待の高い産業施設やホテルへの投資意欲が旺盛だと言える。
図表4 外国資本の購入額(セクター別)
また、外国資本を国・地域別に分類すると、過去1年間の購入額に占める割合は、米国が42%(前年比+3%)、シンガポールが34%(同+27%)、香港が6%(同▲20%)となった。引き続き、米系投資家が対日不動産投資に積極的であり、シンガポールの投資割合が大きく伸びたほか、中国系の新たな投資家の動きも確認される(図表5)。
図表5 外国資本による購入額のエリア別割合(過去12カ月累計)
 
1 対象は1,000万ドル(約15億円)以上。開発用地およびM&A取引を含む。2025年2月12日時点で把握した取引データを集計。
2 「ブラックストーンとカナダ年金制度投資委員会(CPPIB)による、豪データセンター大手であるエアトランクの買収(総額240億豪ドル、約2.3兆円)。エアトランクの保有資産はアジア太平洋地域全域にわたり、このうち約9000億円が日本のデータセンター(9棟)」。「ブラックストーンによる、東京ガーデンテラス紀尾井町の購入(約4000億円)」

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年02月26日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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