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- グローバル株式市場動向(2025年1月)-DeepSeekショックにより半導体関連銘柄は下落
2025年02月14日
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1――米国や欧州で物価上昇率の低下が確認されたことで上昇
2025年1月、米国や欧州で物価上昇率の低下が確認されたことから欧米諸国を中心にグローバル株式市場は上昇した。ただし、中国のAI開発新興企業DeepSeekが低コストで高性能なAIを開発したことで、AI向け半導体の需要減少が懸念され半導体関連銘柄を中心に下落する場面もあった。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)の騰落率1は2025年1月+3.3%、過去1年(2024年2月-2025年1月)では+18.9%となっている(図表1)。
先進国と新興国を比べると、先進国・新興国ともに上昇、先進国がより騰落率が高かった。先進国(MSCI World Index)が+3.5%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+1.7%となった(図表2)。
先進国と新興国を比べると、先進国・新興国ともに上昇、先進国がより騰落率が高かった。先進国(MSCI World Index)が+3.5%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+1.7%となった(図表2)。
1 以下、特に断りのない限り騰落率は米ドル建、配当を除いた指数値の変化率を示す。
2――国・業種別の動向
国別に見ると、上昇した国が多かった(図表5)。主要国について見ると、米国(+3.0%)、中国(+0.6%)、ドイツ(+9.7%)、日本(+1.8%)となった。騰落率が高かった国・地域はコロンビア(+21.2%)、ポーランド(+14.0%)、ブラジル(+12.3%)だった。一方で、フィリピン(▲9.3%)、マレーシア(▲4.7%)、インド(▲3.6%)の騰落率が低かった。
米国では、インフレ懸念の後退や好調な企業決算に加えて、トランプ大統領が選挙時に公約としていた大規模な関税の引き上げが即時に発動されなかったことから上昇した。
日本では、日銀が政策金利を0.5%へ引き上げることを決定したことで円高が進行するとともに長期金利が上昇した。これにより株式市場は円建てでは下落した。ただし、円高によりドル建てでは上昇となった。日銀は利上げを継続しているものの、記者会見で円高が輸入物価を押し上げた点や物価・経済状況に応じた決定をしていく方針を述べており、今後の判断が注目される。
中国では、経済や不動産価格の低迷により不透明な状況が続いているが、トランプ大統領と習近平国家主席が貿易問題などについて電話会談で協議したことから貿易関係の改善が期待されたことで小幅な上昇となった。
米国はコロンビアの最大の輸出相手国であり、関税引き上げによる経済への悪影響が懸念されていた。コロンビアが米軍機による不法移民の送還を拒否したことから、米国のトランプ大統領は関税の大幅な引き上げを行うと宣言した2。しかし、その後コロンビアは米国の要求を受け入れ移民送還について合意したことから米国は関税の引き上げを撤回、株価上昇につながった。
フィリピンでは、政府が2024年第四四半期のGDPが前年同期比+5.2%となったことを公表したが、市場予想を下回ったことで株式市場は下落した3。これについて同国の国家経済開発庁のエディロン次官は「極端な天候不順、地政学的緊張、世界的な需要低迷など、多くの試練に直面した」と説明した。
米国では、インフレ懸念の後退や好調な企業決算に加えて、トランプ大統領が選挙時に公約としていた大規模な関税の引き上げが即時に発動されなかったことから上昇した。
日本では、日銀が政策金利を0.5%へ引き上げることを決定したことで円高が進行するとともに長期金利が上昇した。これにより株式市場は円建てでは下落した。ただし、円高によりドル建てでは上昇となった。日銀は利上げを継続しているものの、記者会見で円高が輸入物価を押し上げた点や物価・経済状況に応じた決定をしていく方針を述べており、今後の判断が注目される。
中国では、経済や不動産価格の低迷により不透明な状況が続いているが、トランプ大統領と習近平国家主席が貿易問題などについて電話会談で協議したことから貿易関係の改善が期待されたことで小幅な上昇となった。
米国はコロンビアの最大の輸出相手国であり、関税引き上げによる経済への悪影響が懸念されていた。コロンビアが米軍機による不法移民の送還を拒否したことから、米国のトランプ大統領は関税の大幅な引き上げを行うと宣言した2。しかし、その後コロンビアは米国の要求を受け入れ移民送還について合意したことから米国は関税の引き上げを撤回、株価上昇につながった。
フィリピンでは、政府が2024年第四四半期のGDPが前年同期比+5.2%となったことを公表したが、市場予想を下回ったことで株式市場は下落した3。これについて同国の国家経済開発庁のエディロン次官は「極端な天候不順、地政学的緊張、世界的な需要低迷など、多くの試練に直面した」と説明した。
2 日本経済新聞、「米政権、移民送還に関税で圧力 コロンビアと合意後撤回」、2025年1月27日
3 ロイター通信、「フィリピンGDP、第4四半期は前年比+5.2%で横ばい 予想下回る」、2025年1月30日
3――世界の主要企業の株価動向
世界の主要な企業の株価はまちまちとなった (図表7)。時価総額上位30位までの企業では、メタ・プラットフォームズ(+17.7%)、SAP(+13.7%)、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(+12.1%)のリターンが高かった。一方で、エヌビディア(▲10.6%)、アップル(▲5.8%)、ブロードコム(▲4.6%) のリターンが低かった。
メタ・プラットフォームズは2024年第四四半期の売上高が市場予想を上回ったことから株価が上昇した4。また、同社のAI強化に10兆円を投資する計画を明らかにした5。AIは同社の主要なサービスであるFacebookやInstagramでの広告ターゲティングやサービス改善による収益向上が期待される。
エヌビディアはAI開発を行う中国の新興企業DeepSeekが、低コストで高性能なAIを開発したことで、AI向け半導体の需要が減少するとの不安が広がったことで下落した6。
メタ・プラットフォームズは2024年第四四半期の売上高が市場予想を上回ったことから株価が上昇した4。また、同社のAI強化に10兆円を投資する計画を明らかにした5。AIは同社の主要なサービスであるFacebookやInstagramでの広告ターゲティングやサービス改善による収益向上が期待される。
エヌビディアはAI開発を行う中国の新興企業DeepSeekが、低コストで高性能なAIを開発したことで、AI向け半導体の需要が減少するとの不安が広がったことで下落した6。
4 ロイター通信、「米メタ、第4四半期売上高が予想上回る 見通しは軟調」、2025年1月30日
5 産経新聞、「米メタ、AI強化に10兆円 2025年、データ処理や人員増」、2025年1月25日
6 毎日新聞、「エヌビディア株暴落、93兆円吹き飛ぶ 中国企業が高性能AI開発」、2025年1月28日
4――今後の見通しと注目されるテーマ
世界経済はインフレが沈静化に向かい堅調な状況となっている。1月17日、国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済見通しを発表した7。IMFは2025年と2026年の世界経済成長率についてともに3.3%と予測した。前回2024年10月の予測から、2025年については0.1ポイントの上方修正、2026年については前回と同様とした。ただし、その地域別内訳を見ると、米国が上方修正となる一方でドイツ、フランスなどユーロ圏が下方修正となった。米国では好調な消費を背景に経済成長が一段と後押しされる一方で、他の先進国諸国は停滞する状況となった。
米国株は好調な企業業績もあり上昇が続いている。ただし、好調な経済を受けて長期金利は上昇、金融環境は緩和から引き締めに変化する兆候も見られる。世界的にインフレ率は低下基調にあるが今後はインフレ率が上振れするリスクもあり、各国の中央銀行は経済状況を注視しつつ政策金利の変更を行っており、それによる株式市場への影響が注目される。
また、トランプ米大統領の就任により貿易や経済政策の不確実性が高まっている。欧州では政権交代や政情不安による財政・構造改革の停滞の株式市場への影響が懸念される。この他、ウクライナ、中東の地政学リスクも解決が見通しづらい状況が続いている。こうした要因のグローバル株式市場への影響に引き続き注視したい。
7 国際通貨基金、「世界経済経済見通し改訂版 世界成長:まちまち、かつ不確実」、2025年1月17日
米国株は好調な企業業績もあり上昇が続いている。ただし、好調な経済を受けて長期金利は上昇、金融環境は緩和から引き締めに変化する兆候も見られる。世界的にインフレ率は低下基調にあるが今後はインフレ率が上振れするリスクもあり、各国の中央銀行は経済状況を注視しつつ政策金利の変更を行っており、それによる株式市場への影響が注目される。
また、トランプ米大統領の就任により貿易や経済政策の不確実性が高まっている。欧州では政権交代や政情不安による財政・構造改革の停滞の株式市場への影響が懸念される。この他、ウクライナ、中東の地政学リスクも解決が見通しづらい状況が続いている。こうした要因のグローバル株式市場への影響に引き続き注視したい。
7 国際通貨基金、「世界経済経済見通し改訂版 世界成長:まちまち、かつ不確実」、2025年1月17日
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(2025年02月14日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
原田 哲志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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