2025年02月07日

金価格は史上最高値を更新、まだ上昇余地はあるか?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

文字サイズ

■要旨
 
  1. NY金先物物価は1月から上昇基調となり、直近では今月5日に過去最高値を更新した。昨年秋から今年年初までは「先行き不透明感の高まり」、「インフレ懸念の高まり」という上昇圧力と、「米金利上昇」、「ドル高」という下落圧力が交錯して方向感を欠いていた。しかし、1月に入ると、トランプ政権が発足し、関税引き上げなど大胆な政策の実現に動き出したことを受けて先行きの不透明感が一段と増し、安全資産としての金需要がさらに高まったことが最高値更新の原動力になったと考えられる。
     
  2. また、円建てである国内金先物価格も上昇基調を辿っており、今月5日に過去最高値を更新した。円相場が一旦円安ドル高に振れたうえ、NY金先物が上昇したことが追い風となった。より長い期間で見た場合、国内金の上昇は鮮明になる。2024年年初以降、国内金は49.8%も上昇しており、日米株価の上昇率を大きく上回る。つまり、インフレ状態が続くなかで、国内金先物はそのインフレヘッジ機能を存分に発揮してきたと言える。
     
  3. NY金先物は今後も上昇基調を辿ると見ている。トランプ政権の動向やその影響を巡って先行き不透明感が強い状況が続くことで安全資産としての金需要が続くうえ、関税引き上げの影響等によって米国でインフレ懸念が高まると見込まれるためだ。トランプ政権が各国に対して強硬姿勢を取ることで、外貨準備内のドル凍結リスクを危惧した各国中央銀行によるドルから金へのシフトも継続するだろう。1トロイオンス3000ドルの節目突破も時間の問題と見られ、年末には3000ドル強で着地すると予想している。
     
  4. 国内金先物については、日銀の利上げに伴う円高ドル安が圧迫材料となると見込まれるが、既述のNY金上昇の影響を打ち消すほど円高は進まないと見ている。今年年末時点の国内金価格は現状よりやや高い1グラム14000円台後半と予想している。

 
金の内外先物価格
■目次

1.トピック:金価格は史上最高値を更新、まだ上昇余地はあるか?
  ・NY金は過去最高値を更新
  ・国内金の上昇ペースは株価より大
  ・2025年の金相場見通し
2.日銀金融政策(1月)
  ・(日銀)利上げ(0.25%→0.5%)を決定
  ・受け止めと今後の予想
3.金融市場(1月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

(2025年02月07日「Weekly エコノミスト・レター」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【金価格は史上最高値を更新、まだ上昇余地はあるか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

金価格は史上最高値を更新、まだ上昇余地はあるか?のレポート Topへ