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2025年01月15日
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1.貸出動向:地銀の貸出の伸びが急拡大
                                                                        (貸出残高)                                                                   
1月14日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、12月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.40%と前月(同3.20%)から上昇した(図表1)。伸び率の上昇は2カ月連続で、5カ月ぶりの高い伸び率にあたる。2023年1月以降は概ね3%前後の伸びを維持しており、コロナ前の2019年(概ね2%台)を上回る増勢が続いている。原材料価格の高止まり等に伴う運転資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが寄与する形で堅調な推移が続いていると考えられる。
業態別では、都銀等の伸びが前年比2.99%(前月は2.94%)とやや上昇したほか、地銀(第2地銀を含む)の伸びが前年比3.74%(前月は3.42%)と大きく上昇した(図表2)。夏場以降、都銀等の伸びは方向感を欠いているが、地銀の伸びが7カ月連続で上昇し、銀行貸出全体の伸びを支えている。
            1月14日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、12月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.40%と前月(同3.20%)から上昇した(図表1)。伸び率の上昇は2カ月連続で、5カ月ぶりの高い伸び率にあたる。2023年1月以降は概ね3%前後の伸びを維持しており、コロナ前の2019年(概ね2%台)を上回る増勢が続いている。原材料価格の高止まり等に伴う運転資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが寄与する形で堅調な推移が続いていると考えられる。
業態別では、都銀等の伸びが前年比2.99%(前月は2.94%)とやや上昇したほか、地銀(第2地銀を含む)の伸びが前年比3.74%(前月は3.42%)と大きく上昇した(図表2)。夏場以降、都銀等の伸びは方向感を欠いているが、地銀の伸びが7カ月連続で上昇し、銀行貸出全体の伸びを支えている。
                                                                        (貸出金利)
11月の新規短期貸出金利は0.524%と前月(0.579%)を下回り、2カ月連続で低下した(図表5)。ただし、当統計は月々の振れが大きいため、3カ月移動平均で均した系列で見ると、0.62%と昨年半ば以降、明確に上昇している。日銀のマイナス金利解除(3月)、利上げ(7月)を受けてコールレートやTiborといった短期市場金利が上昇したうえ、貸出金利に直接的な影響を及ぼす短期プライムレートも殆どの銀行で9月に引き上げられたことで、金利上昇が短期貸出金利に波及している。
 
11月の新規長期貸出金利は1.264%と前月(1.146%)から上昇した。1.2%台を付けるのは昨年4月以来となる。さらに、3カ月移動平均で見た場合には、1.15%と、2012年9月以来の高水準となっている。変動金利貸出に影響を与える短期市場金利に加え、固定金利貸出に影響を与える長期の国債利回りが高止まりしたことで、長期貸出金利に上昇圧力がかかったとみられる(図表6)。
            11月の新規短期貸出金利は0.524%と前月(0.579%)を下回り、2カ月連続で低下した(図表5)。ただし、当統計は月々の振れが大きいため、3カ月移動平均で均した系列で見ると、0.62%と昨年半ば以降、明確に上昇している。日銀のマイナス金利解除(3月)、利上げ(7月)を受けてコールレートやTiborといった短期市場金利が上昇したうえ、貸出金利に直接的な影響を及ぼす短期プライムレートも殆どの銀行で9月に引き上げられたことで、金利上昇が短期貸出金利に波及している。
11月の新規長期貸出金利は1.264%と前月(1.146%)から上昇した。1.2%台を付けるのは昨年4月以来となる。さらに、3カ月移動平均で見た場合には、1.15%と、2012年9月以来の高水準となっている。変動金利貸出に影響を与える短期市場金利に加え、固定金利貸出に影響を与える長期の国債利回りが高止まりしたことで、長期貸出金利に上昇圧力がかかったとみられる(図表6)。
2.マネタリーベース:減少ペースが拡大
                                                                        1月7日に発表された12月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベース(平残)の伸び率は前年比▲1.0%と、前月(同▲0.3%)からマイナス幅を拡大した。前年割れは4ヵ月連続となる(図表7)。
そして、前年割れの主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の前年割れである。金融政策正常化の一環として、日銀が8月から資金供給要因である長期国債買入れの減額を開始し、減額幅を徐々に拡大していることが日銀当座預金の伸び率押し下げに働いている(図表9)。また、貸出支援基金が回収超となったことも響いた。
さらに、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.4%(前月も▲1.4%)、日銀券発行高の伸び率が同▲0.6%(前月は▲1.0%)と現金の伸びがともにマイナス圏で低迷していることも(図表7)、マネタリーベースの前年割れに繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると、12月のマネタリーベースは前月比3.4兆円減と、6カ月ぶりにマイナスとなっている(図表10)。
今後も資金供給要因である長期国債買入れの減額が緩やかに進められることで、マネタリーベースはじわりと減少幅を広げていくと見込まれる。
            そして、前年割れの主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の前年割れである。金融政策正常化の一環として、日銀が8月から資金供給要因である長期国債買入れの減額を開始し、減額幅を徐々に拡大していることが日銀当座預金の伸び率押し下げに働いている(図表9)。また、貸出支援基金が回収超となったことも響いた。
さらに、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.4%(前月も▲1.4%)、日銀券発行高の伸び率が同▲0.6%(前月は▲1.0%)と現金の伸びがともにマイナス圏で低迷していることも(図表7)、マネタリーベースの前年割れに繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると、12月のマネタリーベースは前月比3.4兆円減と、6カ月ぶりにマイナスとなっている(図表10)。
今後も資金供給要因である長期国債買入れの減額が緩やかに進められることで、マネタリーベースはじわりと減少幅を広げていくと見込まれる。
3.マネーストック:定期預金残高の伸び率上昇が顕著に
                                                                        1月15日に発表された12月分のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比1.35%(前月は1.21%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同0.83%(前月は0.71%)と、ともにやや上昇した(図表11)。M2・M3ともに、伸び率の上昇は2カ月連続となるが、昨年前半までの伸びをかなり下回った状態のままだ。貸出(による信用創造)は堅調に推移しているものの、財政赤字縮小や貿易赤字継続、家計の貯蓄率低下・リスク性資産への資金シフトなどが影響しているとみられる。
 
M3の内訳では、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月1.9%→当月1.8%)の伸びが9カ月連続で低下し、全体の伸び率を抑制した。また、キャッシュレス化やインフレの逆風を受ける現金通貨(前月▲2.6%→当月▲2.7%)のマイナス幅も拡大し、全体の重石となった(図表12)。
一方、主に定期預金を意味する準通貨の伸びは前年比1.1%(前月は同0.5%)と大きく上昇し、3カ月連続でプラスとなった。判明している11月までの内訳では一般法人(企業)の伸びが前年比13.2%(前月は13.1%)と高い伸びを維持したうえ(図表13)、個人の伸びも前年比▲3.2%(前月は▲3.6%)と、依然マイナスながら、マイナス幅が縮小しつつある。
日銀による金融政策正常化の進捗を受けて、多くの銀行が預金金利の段階的な引き上げに動いた結果(図表14)、従来はほぼゼロであった普通預金と定期預金の金利差が徐々に広がり、企業や一部家計において、普通預金から定期預金へ資金をシフトする動きが出ていると見られる。
            M3の内訳では、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月1.9%→当月1.8%)の伸びが9カ月連続で低下し、全体の伸び率を抑制した。また、キャッシュレス化やインフレの逆風を受ける現金通貨(前月▲2.6%→当月▲2.7%)のマイナス幅も拡大し、全体の重石となった(図表12)。
一方、主に定期預金を意味する準通貨の伸びは前年比1.1%(前月は同0.5%)と大きく上昇し、3カ月連続でプラスとなった。判明している11月までの内訳では一般法人(企業)の伸びが前年比13.2%(前月は13.1%)と高い伸びを維持したうえ(図表13)、個人の伸びも前年比▲3.2%(前月は▲3.6%)と、依然マイナスながら、マイナス幅が縮小しつつある。
日銀による金融政策正常化の進捗を受けて、多くの銀行が預金金利の段階的な引き上げに動いた結果(図表14)、従来はほぼゼロであった普通預金と定期預金の金利差が徐々に広がり、企業や一部家計において、普通預金から定期預金へ資金をシフトする動きが出ていると見られる。
                                            なお、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比3.67%(前月は3.46%)と上昇した(図表11)。伸び率の水準も3%台を維持しており、M2・M3を大きく上回っている。
内訳では、既述の通り、M3の伸びがやや上昇したうえ、外債(前月9.4%→当月13.8%)の伸び率上昇や、投資信託(私募やREITなどを含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月▲4.9%→当月▲2.9%)のマイナス幅縮小などが寄与した。また、規模の大きい金銭の信託(前月14.6%→当月14.4%)や国債(前月38.4%→当月38.0%)が高い伸びを保ち、広義流動性の伸び率全体を底上げしている。
            内訳では、既述の通り、M3の伸びがやや上昇したうえ、外債(前月9.4%→当月13.8%)の伸び率上昇や、投資信託(私募やREITなどを含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月▲4.9%→当月▲2.9%)のマイナス幅縮小などが寄与した。また、規模の大きい金銭の信託(前月14.6%→当月14.4%)や国債(前月38.4%→当月38.0%)が高い伸びを保ち、広義流動性の伸び率全体を底上げしている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2025年01月15日「経済・金融フラッシュ」)
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                                        03-3512-1870
経歴
                            - ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社 
 ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
 ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
 ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
 ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
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