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- 英国金融政策(2月MPC公表)-利下げ決定、今後の段階的・慎重姿勢は維持
2025年02月07日
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4.議事要旨の概要
記者会見の冒頭説明原稿や金融政策報告書および議事要旨の概要(上記金融政策の方針で触れられていない部分)において注目した内容(趣旨)は以下の通り。
(貿易関税の英国への影響)
(供給、費用、物価)
(当面の政策決定)
- GDP成長率見通しは、24年0.75%、25年0.75%、26年1.5%、27年1.5%
(11月時点では、24年1%、25年1.5%、26年1.25%、27年1.25%)- CPI上昇率は、24年2.5%、25年3.5%、26年2.5%、27年2%(10-12月期の前年比)
(11月時点では、24年2.25%、25年2.75%、26年2.25%、27年1.75%) - 失業率は、24年4.5%、25年4.5%、26年4.75%、27年4.75%(10-12月期)
(11月時点では、24年4.25%、25年4.25%、26年4.25%、27年4.5%)
- CPI上昇率は、24年2.5%、25年3.5%、26年2.5%、27年2%(10-12月期の前年比)
(貿易関税の英国への影響)
- 米国は英国にとってEUに次ぐ貿易相手国である
- 英国の対米輸出の約70%はサービス輸出であるため、物品関税の直接的な影響はないが、サービス貿易が制限される可能性がある
- また、サービス輸出の一部は英国製品のアフターサービスなど財輸出に関連している
- 米国に輸出する外国企業が米国の関税導入により英国のサービスに対する需要を減らすことで、英国から他国へのサービス輸出が影響を受ける可能性がある
- 多くの投資は不可逆的なため、貿易政策に不確実性がある場合は、世界的な供給網を持つ企業は様子見する動機となる
- 企業投資の減少が総需要を抑制し、経済活動とインフレ圧力を低下させる可能性がある
- 米国の関税による影響は、ほとんどの経路で経済活動を低下させる
- 一方、インフレ率は一部の経路で低下、他の経路で押し上げに作用する
- 英国輸出品に対する米需要の弱まり:経済↓、インフレ↓
- 報復関税による世界需要の弱まり:経済↓、インフレ↓
- 供給網の混乱:経済↓、インフレ↑
- 貿易の転換(米国向け輸出財の価格引き下げ):経済-、インフレ↓
- 為替レートの変動:経済、インフレに対し上下いずれの可能性がある
- 長期にわたる供給網の再構築:経済↓、インフレ↑
- 競争や知識移転の減少:経済↓、インフレ-
- 一方、インフレ率は一部の経路で低下、他の経路で押し上げに作用する
(供給、費用、物価)
- 市場参加者調査(MaPS)は、市場に織り込まれた価格と同様、ほとんどの参加者が今回会合での0.25%ポイントの利下げを予想した
- MaPSの中央値では今年1.00%ポイントの利下げが予想されているが、分布はより少ない利下げに傾いており、これは0.85%ポイントの利下げを織り込んでいる市場金利と整合的である
(当面の政策決定)
- MPCの2月の見通しは委員会が依然に特定した持続的なインフレ圧力に関する2番目のケースと一致していた
- (2番目のケースとは、インフレ正常化が完全に進むのに、経済が弛む(slack)期間が必要となるというシナリオ)
- 最近の動向を総合すれば、委員会は現在、検討された2番目と3番目のケースをより重視している
- (3つ目のケースとは、インフレの持続性の一部が賃金や価格設定行動の構造的な変化を反映し、インフレが長引くというシナリオ)
- しかしながら、中期的な経済の供給余力に関する軌道とインフレ圧力をとりまく非常に大きなリスクがあり、それに応じた金融政策の反応が必要となるかもしれない
- MPCは、金融政策が最近の政策金利の引き下げ後も、依然として明らかに制限的な領域にあると判断した
- しかしながら、残った制限度合いに関するメンバー間の見解は異なっている
- 経済の循環的な動向は、政策決定に関する期間における金融政策姿勢を決定する上で、重要な役割を果たすが、長期的な均衡金利(R*)も、直接的な政策設定の指針とはならないものの、長期の政策金利の位置に関する評価をする上での役割を果たす可能性がある
- 2月報告書のボックスA(下記)で公表されたように、R*は前回2018年時点の評価よりも若干上昇した証拠があるが、推計レンジに関する不確実性や上昇の度合いに関する不確実性は大きい
- 2018年8月の推定値は名目で2-3%の範囲
- マクロ経済モデルでは、0.25-0.75%ポイントの増加を示唆している
- マクロファイナンスモデルでは0.25%ポイントの上昇
- 半構造モデルでは0.75%ポイントの上昇
- 金融市場ベースの指標は0.90%ポイント上昇した可能性を示唆している
- 調査指標もR*の上昇を示している
- 市場参加者調査における拡張的でも引き締め的でもない政策金利水準は近年1.5%ポイント上昇している
- ただし、これは長期均衡金利と循環的要因の影響を受ける短期概念を明確に区別していない
- コンセンサスエコノミクス調査の長期実施金利の予想は0.25%未満の上昇を示唆している
- 市場参加者調査における拡張的でも引き締め的でもない政策金利水準は近年1.5%ポイント上昇している
- R*が2018年以降、上昇しているように見えることから、更なるショックが無い限り、金利がコロナ前の低水準に戻る可能性は低いことが示唆される
- 2月報告書のボックスA(下記)で公表されたように、R*は前回2018年時点の評価よりも若干上昇した証拠があるが、推計レンジに関する不確実性や上昇の度合いに関する不確実性は大きい
- 7人のメンバーが、国内物価・賃金のディスインフレの進展が十分に続いているとして今回の会合で政策金利を4.5%に引き下げることを希望した
- 国内および世界環境を取り巻くリスクのため、経済の見方にはメンバー間で見解の相違があった
- ある見方では、短期的にはCPIインフレ率が上昇すると見込まれるが、ディスインフレ過程は引き続き軌道に乗っており、弱い経済と労働市場の緩和が、インフレをさらに抑制する
- 英国と世界経済の見通し双方に関する不確実性が上昇し、国内インフレ見通しを潜在的に相殺する力になりうる
- これは政策決定に関して、持続的なインフレ率に対して段階的に対応しつつ、不確実性の上昇とインフレ率の両面のリスクを認識して慎重に行うアプローチを正当化する
- 他の見方では、賃金上昇率や最近数四半期のインフレ率の上振れと並行して経済活動が弱いことから供給が需要に対して抑制されている症状を示しているとする
- 大部分は生産性上昇率の弱さを反映しており、見通し期間にわたって大幅に改善する可能性は低い
- これに基づき、経済活動の弱さと雇用の先行きは経済の弛み(slack)の大きさよりも供給制約を反映し続ける可能性がある
- この見解は、引き続き慎重で段階的な金融引き締め度合いの緩和を正当化する
- 2名のメンバーは、インフレ率、その背景にある構造的な要因、将来の金融政策に関する異なる見解を有していたが、政策金利を0.50%ポイント引き下げ4.25%とすることを希望した
- 個々のデータはインフレ率が引き続き賃金や価格設定を通じて低下していることを示している
- 弱い経済活動見通しと労働需要の低さは賃金上昇圧力と企業の価格設定力を削減すると見られる
- 1人のメンバーは、インフレ期待を固定するために金融政策は引き続き制限的である必要があり、構造問題の持続性とマクロ経済の変動を前提にすれば、政策金利は高止まりするだろうが、今回の会合でのより積極的なアプローチが英国の資金調達環境をより適切にするという明確なシグナルを与えるとした
- もう1人のメンバーは、需要の見通しの暗さは、短期的な規制価格の引き上げ予測のなかでも中期的にCPIインフレ率の持続的な目標付近での推移と整合的で、政策金利は金融政策の波及と中期的な供給余力を考慮する必要があるとした
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2025年02月07日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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