2025年01月29日

中国経済:24年10~12月期の評価-前期から加速するも、外需・政策依存。不動産不況には底打ちの兆し

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介

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1.2024年10~12月のGDPの評価

中国国家統計局が2025年1月17日に発表した24年10~12月期の実質GDP成長率は、前年同期比+5.4%と、前期(24年7~9月期)の同+4.6%から加速(図表1)し、季節調整後の前期比(年率)も、+6.6%と前期の+5.3%から加速した。2024年通年では前年比+5.0%となり、「+5.0%前後」の成長率目標は達成された。

前年同期比成長率の需要項目別寄与度をみると、最終消費が+1.6%pt(前期+1.4%pt)、総資本形成が+1.3%pt(同+1.2%pt)、純輸出が+2.5%pt(同+2.1%pt)であった(図表2)。純輸出に関しては、輸出が加速した一方、輸入が減少したことで、大きく改善した。内需に関しては、経済対策の下支えを受けた改善であり、自律的な回復力はまだ弱い。
(図表1)実質GDP成長率/(図表2)実質GDP成長率の需要項目別寄与度
産業別の実質GDP成長率をみると、第1次産業は前年同期比+3.7%(前期同+3.2%)、第2次産業は同+5.2%(前期同+4.6%)、第3次産業は同+5.8%(前期同+4.8%)となった(図表3)。情報通信・ソフトウェア・ITを除き、製造業を中心に多くの業種で加速した。前期まで6四半期連続でマイナスとなっていた不動産業の成長率は、プラスに転じた。

不動産市場に僅かながら改善の兆しが見え始めた点は明るい材料だが、GDPデフレーターは、7四半期連続で前年同期比マイナスとなっており(図表4)、デフレ懸念は根強い。中国経済は依然不安定な状況にあるといえよう。今後は、本格始動する米トランプ政権による対中政策の影響と、中国国内の経済対策の効果がどのように表れるかが注目点となる。
(図表3)産業別の実質成長率(前年同期比)/(図表4)GDPデフレーター

2.実体経済の動向

2.実体経済の動向

(生産・投資・外需)
生産の動向について、前年同月比の伸び率(実質)をみると、鉱工業部門では、12月に伸びが加速した(図表5)。政策支援や堅調な輸出を背景に年初来高い伸びを続けてきたハイテク製造業は、10月から2カ月連続で伸びが低下した後、12月には小幅に改善した。サービス業部門の伸びも、12月に伸びが加速した。交通・運輸・倉庫業や金融業で伸びが高まった。

PMI調査の結果をみると、製造業では、24年12月から2カ月連続で低下し、25年1月には景気の好不況の境目である50を下回った(図表6)。サービス業では、24年12月に上昇したものの、25年1月には低下し、均してみれば50をわずかに上回る水準での横ばい推移となっている。同調査で需要不足と回答する企業の比率は、7月以降具体的には発表されていないが、製造業、非製造業とも、依然として60%超であるとされた。
(図表5)生産/(図表6)PMI
投資の動向について、固定資産投資の前年同月比伸び率(名目、以下同)は、前月に続き12月も低下した(図表7)。業種別にみると、製造業の投資は、依然高水準ながらも減速を続けている。設備投資は、5月をピークに減速傾向にあるが、12月は前月から改善した。不動産開発投資は、商業用不動産を中心にマイナス幅が拡大した。インフラ投資は、依然高水準ながらも、11月から12月にかけて低下した。交通・運輸・倉庫業で伸びのマイナス幅が拡大した。

外需の動向について、輸出(ドル建て)の伸びは、12月に加速した(図表8)。国・地域別では、日本向けが前年同月比マイナスとなった一方、米国、ASEAN、EU向けが加速した。駆け込み輸出の影響が強まりつつあるようだ。財別では、農産品や繊維製品、鉄鋼、機械設備、家電、自動車等の財で伸びの高まりがみられた。他方、コンピュータ・同部品や携帯電話、液晶パネル、半導体等の財では伸びが減速した。輸入(ドル建て)の伸びは、10月から11月にかけてマイナス幅が拡大したが、12月には前年増に転じた。ハイテク関連製品などで伸びが高まった。
(図表7)固定資産投資(業種別)/(図表8)財輸出入(ドル建て)
(消費・家計)
消費の動向について、小売売上高の伸びをみると、12月は前月から加速した(図表9)。財の伸びが加速したものの、外食サービスでは伸びが低下した。

一定規模以上企業を対象にした統計で品目別の動向をみると、化粧品の伸びがマイナスに転じたほか、宝飾品で伸びのマイナス幅が拡大した(図表10)。耐久消費財の買い替え支援策の対象となっている家電・AV機器については、12月に伸びが再び高まった。他方、同じく対象となっている自動車については、伸びが低下した。不動産市場の持ち直しに伴い改善の兆しがみられる不動産関連の財(建築・内装材)の伸びは、前年増は維持したものの、前月から低下した。
(図表9)社会消費品小売総額/(図表10)社会消費品小売総額(一定規模以上企業、財別)
家計の状況について、都市部の調査失業率は、11月から12月にかけて小幅に上昇した(図表11)。16~24歳(在学中の学生を除く)の失業率は、卒業シーズンを迎えた7月をピークに低下傾向にはあるものの、依然高水準にあり、若年層の雇用環境は引き続き厳しい状況にある。消費者信頼感指数は、依然として楽観・悲観の境目である100を下回る水準で推移している(図表12)。雇用・所得の先行き、消費意欲ともに8月を底に10月まで改善を続けたものの、11月には雇用の先行きや消費意欲が悪化した。
(図表11)調査失業率/(図表12)消費者信頼感指数

(2025年01月29日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

三浦 祐介 (みうら ゆうすけ)

研究・専門分野
中国経済

経歴
  • 【職歴】
     ・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
     ・2009年:同 アジア調査部中国室
     (2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
     ・2020年:同 人事部
     ・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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