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コラム
2025年01月08日
不祥事が支持を強める理由を読み解く-物語性がもたらす評価の変動-
03-3512-1817
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1――不祥事に対する種々の反応
ニュースやSNSには、毎日のように誰かの不祥事が取り上げられている。知名度や規模によっては炎上し、人気が急落するだけでなく、対象となった人は仕事を失うなどの深刻な事態に至ることも珍しくない。しかし、同じ不祥事にもかかわらず、かえって支持を強める現象が見られることがある。この奇妙な現象には、どのような背景があるのだろうか。
2――不祥事が物語の一つの要素に
この理由の一つとして、「物語」という観点が挙げられる。この「物語」は、人の感情に大きく作用することが知られており、態度変容や意識の変革に大きく影響を及ぼすことが分かっている。人間の思考には「論理実証モード」と「物語モード」の2つが存在する1。前者はルールや数値的な基準に基づき、「不祥事は許されない行為だ」と判断する思考回路である。一方で後者はストーリーや背景に基づいて判断する。この物語の態度変容への影響を活用したものの一例として「物語広告」がある。物語広告とは、CMなどの広告媒体において、単に商品の情報を伝えるだけのものではなく、ストーリーを用いることで、共感を想起し、消費者の購買意欲を増大させるものである。
物語は「主体」「客体」「送り手」「受け手」「援助者」「反対者」という6つの要素で構成される2(図-1)。
物語は「主体」「客体」「送り手」「受け手」「援助者」「反対者」という6つの要素で構成される2(図-1)。
それぞれの役割を「桃太郎」を例に考えてみよう。すると、ここでは「主体=桃太郎」、「客体=平和」、「送り手=おじいさん・おばあさん」、「受け手=村」、「援助者=猿・キジ・犬」、「反対者=鬼」に当てはまる。そして物語のなかでは、「主体である桃太郎が送り手であるおじいさん・おばあさんによって、反対者である鬼を退治する旅に向かうことになり、援助者である猿・キジ・犬の力を借り、受け手である村に客体である平和をとりもどす」というストーリーであると説明できる。また、これらの役割は、出来事においても当てはめることができる。
不祥事が起きた場合を例にとり、それぞれの役割から考えると、不祥事が起こるという出来事は「反対者」に当てはまる。物語の構成要素が増えることで物語性が高まっている。
また、物語性の評価としてEscalasによる物語性尺度3が多く用いられている。物語性尺度は(1)目標達成のための登場人物の行動 、(2)登場人物の感情の伝達、(3)登場人物の生活の変化、(4)出来事の要因の説明、 (5)オープニング・ターニングポイント・エンディングの存在、(6)具体的な出来事についての記述の6つの要素によって構成されている。そして、これらの要素を多く満たす物語ほど、受け手に感情的な反応を引き起こしやすい、とされている。不祥事の発生は、物語性尺度の「ターニングポイント」や「生活の変化」に該当し、その尺度を高めることになり、物語性を高める要因となる。そして、物語性が高くなることにより、共感が高まることになる。それによって、主体である不祥事を起こした本人への支持が強化される。
1 J・ブルーナー & (訳:岡本夏木・仲渡一美・吉村啓子). 意味の復権-フォークサイコロジーに向けて-. (ミネルヴァ書房, 2016).
2 A.J.グレマス & (訳:田島 宏・鳥居 正文). 構造意味論―方法の探求. (紀伊國屋書店, 1988).
3 Escalas, J. E. Narrative processing: Building consumer connections to brands. Journal of Consumer Psychology 14, 168–180 (2004).
不祥事が起きた場合を例にとり、それぞれの役割から考えると、不祥事が起こるという出来事は「反対者」に当てはまる。物語の構成要素が増えることで物語性が高まっている。
また、物語性の評価としてEscalasによる物語性尺度3が多く用いられている。物語性尺度は(1)目標達成のための登場人物の行動 、(2)登場人物の感情の伝達、(3)登場人物の生活の変化、(4)出来事の要因の説明、 (5)オープニング・ターニングポイント・エンディングの存在、(6)具体的な出来事についての記述の6つの要素によって構成されている。そして、これらの要素を多く満たす物語ほど、受け手に感情的な反応を引き起こしやすい、とされている。不祥事の発生は、物語性尺度の「ターニングポイント」や「生活の変化」に該当し、その尺度を高めることになり、物語性を高める要因となる。そして、物語性が高くなることにより、共感が高まることになる。それによって、主体である不祥事を起こした本人への支持が強化される。
1 J・ブルーナー & (訳:岡本夏木・仲渡一美・吉村啓子). 意味の復権-フォークサイコロジーに向けて-. (ミネルヴァ書房, 2016).
2 A.J.グレマス & (訳:田島 宏・鳥居 正文). 構造意味論―方法の探求. (紀伊國屋書店, 1988).
3 Escalas, J. E. Narrative processing: Building consumer connections to brands. Journal of Consumer Psychology 14, 168–180 (2004).
3――まとめ
本稿では、不祥事が支持を強化する現象について、物語性という観点から考察した。不祥事が「反対者」や「ターニングポイント」等の物語を構成するものとなり得る。それによって物語性が高まり、不祥事によって支持が強化するような人が出てくる。
不祥事が必ずしも論理やルールだけで評価されないのは、物語性による影響が存在するためである。この点を理解することで、不祥事に対する反応の背景をより深く読み解くことができる。
当然であるが、不祥事が物語性を高め、支持を強化する可能性があるからといって、不祥事が許容されるものではない。
不祥事が必ずしも論理やルールだけで評価されないのは、物語性による影響が存在するためである。この点を理解することで、不祥事に対する反応の背景をより深く読み解くことができる。
当然であるが、不祥事が物語性を高め、支持を強化する可能性があるからといって、不祥事が許容されるものではない。
(2025年01月08日「研究員の眼」)
03-3512-1817
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