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ふるさと納税の新たな懸念-ワンストップ特例利用増加で浮上する課題
基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.333]
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
原則、ふるさと納税の寄付者の実質的な負担額は、ワンストップ特例制度の利用と確定申告のどちらを選択しても変わらない。しかし、どちらの方法を選択するかによって、居住する自治体(都道府県及び市区町村)の負担額は変わる。ふるさと納税は寄付額から自己負担額2,000円を除いた全額分だけ、税金の支払いが免除される制度だが、確定申告を行うことで、所得税(国税)の所得控除を通じて一部の免除を受け、住民税(地方税)の税額控除を通じて残額の免除を受けるのが原則である。ワンストップ特例制度は、確定申告を行わないので所得税(国税)の免除は受けられないが、特例として、その分だけ住民税(地方税)の免除額が増える制度である(以下、住民税免除額の増額分を申告特例控除額と記す)。つまり、寄付者がワンストップ特例制度を選択すると、国が負担すべき免除額を居住する自治体が負担することになる。
寄付総額の増加とワンストップ特例利用割合の増加に伴い、申告特例控除額も年々増加し、直近では、487億円に及ぶ。高々487億円と思うかもしれないが、利用者の事情(選択)で、本来は国が負担すべき金額だけ地方税収が減少するのだから、その分は国から補填があってもよいと思う。例えば、住宅借入金等特別税額控除は、原則所得税から控除される(国が負担する)が、所得税から控除しきれなかった金額は住民税から控除される。このように、ワンストップ特例と同様に利用者の事情で地方税収が減少するが、住宅借入金等特別税額控除については減収分を地方特例交付金として国が補填する仕組みがある。総務省「令和5年度 地方特例交付金の決定について」によると、令和5年度の地方特例交付金の総額は2,045億円である。住宅借入金等特別税額控除による減収額2,045億円と比べると、ワンストップ特例制度による減収額487億円は少ないが、無視できるほど差があるようには思えない。
(2024年12月06日「基礎研マンスリー」)
03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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