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2025年度の年金額の見通しは1.9%増で、年金財政の健全化に貢献 (後編)-2025年度の見通しと注目点

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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まず、本来の改定率の計算過程を確認する(図表3の上段の2024年度の行)。物価変動率(図表3上段の①の列)は、前述した+2.6%(仮定)である。実質賃金変動率(図表3上段の②の列)は、4年度前(2021年度)が2020年度の新型コロナ禍からの反動で上昇した+1.4%(実績)、3年度前(2022年度)が名目では上昇したものの物価上昇率には追いつけなかった-1.1%(実績)、2年度前(2023年度)が前述した-1.4%(仮定)であるため、3年平均は-0.4%となった。このように3年平均を使うことで、急激な変動が回避されている。可処分所得割合変化率は2017年に保険料の引上げが終わりゼロ%であるため、本来の改定率の指標となる賃金上昇率(名目手取り賃金変動率)は、物価変動率と実質賃金変動率を合計した(厳密には掛け合わせた)+2.2%となる(図表3上段の①+②+③の列)。
次に、年金財政健全化のための調整率(いわゆるマクロ経済スライド)を確認する(図表3の下段の2024年度の行)。当年度分の調整率は、公的年金加入者数の変動率から高齢世代の余命の伸びを勘案した率(0.3%)を差し引いた(厳密には掛け合わせた)率となっている。公的年金加入者数の変動率(図表3下段の⑤の列)は、4年度前(2021年度)は-0.3%(推計した実績)、3年度前(2022年度)は0.0%(推計した実績)、2年度前(2023年度)が前述した+0.2%(仮定)であるため、3年度の平均は0.0%となる。ここから、長寿化に対応するために高齢世代の余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)を差し引いた-0.3%が、2025年度の当年度分の調整率となる。前年度からの繰越分(図表3下段の⑦の列)は、67歳以下と68歳以上の双方でゼロ%であるため、当年度分の-0.3%が2024年度に適用すべき調整率となる。
実際に適用される改定率は、本来の改定率に、年金財政健全化のための調整率(いわゆるマクロ経済スライド)が図表4右の特例ルールを考慮した上で適用されて決まる(図表7)。2025年度の改定率における調整率の適用は、67歳以下と68歳以上の双方で本来の改定率が適用すべき調整率(の絶対値)を上回っているため、適用すべき調整率がすべて適用される(図表4右の原則に該当)。この結果、実際の年金額に反映される調整後の改定率は67歳以下と68歳以上の双方で+1.9%となり(図表3下段の⑧の列)、翌年度へ繰り越す調整率は67歳以下と68歳以上の双方でゼロ%となる(図表3下段の最右列)。
このような2025年度の年金改定率(筆者試算)の計算過程のイメージは図表5であり、これに基づく65歳到達者の年金額の例は図表6、これまでのマクロ経済スライドの適用の推移のイメージは図表7である。
(2024年12月02日「基礎研レポート」)
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03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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