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2024年11月19日
IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(12)-新たに2社が指定、1社が指定解除されてIAIGsは18の国・地域からの59社に-
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1―はじめに
各国・地域の保険監督当局等によるIAIGs(国際的に活動する保険グループ)の指定を巡る状況については、2021年に、4つの保険年金フォーカス「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況-48グループのうちの45グループが明らかに-」(2021.4.1)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(2)-48グループのうちの47グループが明らかに-」(2021.4.7)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(3)-49グループのうちの46グループが明らかに-」(2021.7.8)及び「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(4)-情報が更新され、49グループのうちの47グループが明らかに-」(2021.11.18)で報告した。その後、2022年に入って、IAIS(保険監督者国際機構)が1月17日時点でのIAIGsの指定に関する新たな登録簿を公表し、その後新たに追加されたIAIGがカナダの保険監督当局であるOSFIにより公表されたことを受けて、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(5)-情報が更新され、新たに1グループが追加され50グループに-」(2022.2.7)を報告した。さらに、IAISが7月26日時点での情報の更新を行い、全体で17の管轄区域からの 49のIAIGsの全てが公開されたことを受けて「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(6)-49の全てのIAIGsが公開された-」(2022.8.16)を報告した。2023年に入ってからは、2月26月時点で情報の更新を行い、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(7)-52のIAIGsを指定-」(2023.2.24)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(8)-3社が新たに追加されて、IAIGsは55社に-」(2023.11.7)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(9)-IAIGsは19の国・地域からの56社に-」(2024.1.15)を報告した。また、2024年に入ってからは、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(10)-IAIGsは19の国・地域からの57社に-」(2024.2.16)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(11)-住友生命が新たにIAIGに指定されてIAIGsは19の国・地域からの58社に-」(2024.7.31)を報告した。
今回、IAISは、IAIGsの指定に関する情報を更新しているので、その内容を報告する。
今回、IAISは、IAIGsの指定に関する情報を更新しているので、その内容を報告する。
2―IAIGsとは
まずは、これまでのレポートの繰り返しになるが、IAIGsについて説明しておく。
IAIGsというのは、英語で「Internationally Active Insurance Groups(国際的に活動する保険グループ)」と呼ばれており、その言葉通りに、「国際的に有意なレベルで保険事業活動を展開している保険グループ」のことを指している。その具体的な選定基準については、IAISが定量的基準等を定めている。また、IAIGsに対しては、特別な監督・規制が行われることになっている。
IAIGsというのは、英語で「Internationally Active Insurance Groups(国際的に活動する保険グループ)」と呼ばれており、その言葉通りに、「国際的に有意なレベルで保険事業活動を展開している保険グループ」のことを指している。その具体的な選定基準については、IAISが定量的基準等を定めている。また、IAIGsに対しては、特別な監督・規制が行われることになっている。
1|IAIGs の選定基準
IAIGs の選定基準のうちの定量的基準は以下の通りとなっている。
IAIGs の選定基準のうちの定量的基準は以下の通りとなっている。
(1) 国際的活動
・3つ以上の管轄区域において、保険料が計上されていること、及び
・本店所在管轄区域外のGWP(Gross Written Premium:総収入保険料)のグループ全体のGWPに対する割合が10%以上
(2) 規模(3 年移動平均)
・総資産が500 億米ドル以上、又は
・全体のGWPが100 億米ドル以上
2|今回のIAIGs の指定に関する情報の公表
GWSが、IAIGs の指定を公表するが、場合によっては、この開示が法的変更又は規制措置を必要とすることがある。
IAISは、このコミットメントを達成するためのGWSの進捗状況を監視する。IAISは、GWSによって公開されたIAIGs の公開登録を編集する。登録簿には、公開されたIAIGs の数とIAIGs の基準の充足又は監督裁量の行使に基づいてGWSにより特定されたIAIGs の総数を比較した情報が添付されることになっている。
GWSが、IAIGs の指定を公表するが、場合によっては、この開示が法的変更又は規制措置を必要とすることがある。
IAISは、このコミットメントを達成するためのGWSの進捗状況を監視する。IAISは、GWSによって公開されたIAIGs の公開登録を編集する。登録簿には、公開されたIAIGs の数とIAIGs の基準の充足又は監督裁量の行使に基づいてGWSにより特定されたIAIGs の総数を比較した情報が添付されることになっている。
3|IAIGsに対する監督・規制
IAIGsの監督のための共通の枠組みとして、IAISは、2019年11月に、ComFrame(Common Framework for the Supervision of Internationally Active Insurance Groups:国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み)を採択している。
このComFrameの中で、IAIGs に対する監督・規制内容としては、(1)監督当局の枠組み(監督カレッジの組成や危機管理グループ(CMG)の設立)、(2)資本規制、(3)再建・破綻処理計画、(4)グループガバナンス、(5)ERM(統合的リスク管理)、等が挙げられている。それぞれの項目の具体的な内容については、今回のレポートの趣旨ではないので触れないが、例えば、「(2)資本規制」について、IAISはComFrameの一環としてICS(保険資本基準)を策定中である。
IAIGsの監督のための共通の枠組みとして、IAISは、2019年11月に、ComFrame(Common Framework for the Supervision of Internationally Active Insurance Groups:国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み)を採択している。
このComFrameの中で、IAIGs に対する監督・規制内容としては、(1)監督当局の枠組み(監督カレッジの組成や危機管理グループ(CMG)の設立)、(2)資本規制、(3)再建・破綻処理計画、(4)グループガバナンス、(5)ERM(統合的リスク管理)、等が挙げられている。それぞれの項目の具体的な内容については、今回のレポートの趣旨ではないので触れないが、例えば、「(2)資本規制」について、IAISはComFrameの一環としてICS(保険資本基準)を策定中である。
3―IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報
IAISは、IAIGsの指定に関して、2024年10月30日時点での情報の更新1を行っているので、ここではその内容を報告する。
1|今回の情報更新に基づいて、IAIGsに指定された保険グループの状況
今回のIAISによる情報更新により、全体で18の国・地域からの59のIAIGs(の全て)が公開されている。前回のレポートからは、バミューダからの2社(Arch Capital Group Ltd.、Resolution Life Group Holdings Ltd.)が新たに指定されるとともに、フィンランドのSampo Groupが、事業構造やリスクプロファイルの変化により基準に該当しなくなったことから、指定解除され、IAIGsのリストから削除されている。
これらの59のIAIGsの管轄区域別の内訳は、以下の通りとなっている(下線部が前回のレポートの報告からの変更箇所である)。
今回のIAISによる情報更新により、全体で18の国・地域からの59のIAIGs(の全て)が公開されている。前回のレポートからは、バミューダからの2社(Arch Capital Group Ltd.、Resolution Life Group Holdings Ltd.)が新たに指定されるとともに、フィンランドのSampo Groupが、事業構造やリスクプロファイルの変化により基準に該当しなくなったことから、指定解除され、IAIGsのリストから削除されている。
これらの59のIAIGsの管轄区域別の内訳は、以下の通りとなっている(下線部が前回のレポートの報告からの変更箇所である)。
2|新たにIAIGsに指定されたIAIGsの概要
(1) Arch Capital Group Ltd.
Arch Capital Group Ltd. は、世界規模で保険、再保険、住宅ローン保険を取り扱っており、保険業界の中でもより困難で特殊なリスクを扱う分野である特殊保険に重点を置いている。バミューダ、米国、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア、住宅ローン保険に関しては香港、で事業を展開している。Arch Capital Groupは、バミューダに本社を有する上場企業で、S&P 500構成銘柄であり、世界有数の金融サービス企業として認められている。2023年における保険料は18,403百万ドル、2023年末の総資産は58,906百万ドルとなっている。
(2) Resolution Life Group Holdings Ltd.
Resolution Life Group Holdings Ltd.は、再保険と生命保険契約のポートフォリオの取得と継続的管理に重点を置く世界的な生命保険グループである。2023年における保険料は3,078百万ドル、2023年末の総資産は92,966百万ドルとなっている。
バミューダに本社を有し、主な顧客は北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアを含む成熟市場の大手生命保険会社で、3つの会社を通じて事業展開を行っている。
Resolution Re は、バミューダに拠点を置く再保険会社で、米国、アジア、ヨーロッパ等、世界の他の地域で確立された生命保険会社が販売した既存の保険ポートフォリオに関連する財務及び保険責任の再保険を受けている。Resolution Life US は、ペンシルベニア州ウェストチェスターに本社があり、再保険と法人買収の両方を通じて、米国の保険会社から既存の生命保険及び年金ポートフォリオを取得している。Resolution Life Australasia は、資本の解放を望む既存の保険会社から既存の生命保険及び貯蓄保険のポートフォリオを取得し、オーストラリアとニュージーランドの成熟した生命保険市場にサービスを提供している。
(1) Arch Capital Group Ltd.
Arch Capital Group Ltd. は、世界規模で保険、再保険、住宅ローン保険を取り扱っており、保険業界の中でもより困難で特殊なリスクを扱う分野である特殊保険に重点を置いている。バミューダ、米国、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア、住宅ローン保険に関しては香港、で事業を展開している。Arch Capital Groupは、バミューダに本社を有する上場企業で、S&P 500構成銘柄であり、世界有数の金融サービス企業として認められている。2023年における保険料は18,403百万ドル、2023年末の総資産は58,906百万ドルとなっている。
(2) Resolution Life Group Holdings Ltd.
Resolution Life Group Holdings Ltd.は、再保険と生命保険契約のポートフォリオの取得と継続的管理に重点を置く世界的な生命保険グループである。2023年における保険料は3,078百万ドル、2023年末の総資産は92,966百万ドルとなっている。
バミューダに本社を有し、主な顧客は北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアを含む成熟市場の大手生命保険会社で、3つの会社を通じて事業展開を行っている。
Resolution Re は、バミューダに拠点を置く再保険会社で、米国、アジア、ヨーロッパ等、世界の他の地域で確立された生命保険会社が販売した既存の保険ポートフォリオに関連する財務及び保険責任の再保険を受けている。Resolution Life US は、ペンシルベニア州ウェストチェスターに本社があり、再保険と法人買収の両方を通じて、米国の保険会社から既存の生命保険及び年金ポートフォリオを取得している。Resolution Life Australasia は、資本の解放を望む既存の保険会社から既存の生命保険及び貯蓄保険のポートフォリオを取得し、オーストラリアとニュージーランドの成熟した生命保険市場にサービスを提供している。
4―まとめ
以上、今回のレポートでは、IAISによるIAIGsの指定に関する最新情報について報告してきた。
これまでのレポートで述べてきたように、IAIGsの指定グループの数は、それぞれの国や地域における保険市場や保険グループの海外展開の状況、さらには保険監督当局のスタンス等を反映して、それぞれの国・地域自体の保険市場の規模や一般的に認識されている大規模な保険グループの数等とは必ずしもリンクする形にはなっていない。
なお、IAIGsの指定については、適宜見直しが行われていくことになっている。
買収や合併、さらには売却等の地域別の事業展開の見直し等のグループ会社の戦略や以前のレポートで報告したPrudentialやAegonに見られるようなグループの再編等に伴うグループ本社の管轄区域の変更等に伴って、IAIGsのリストへの新たな追加や削除等が行われていくことにもなる。
各管轄区域においては、今後も適宜、IAIGsの指定の見直し等が行われていくことが想定されることになる。
IAIGsの指定に関する状況は、IAIGsに対する監督・規制を巡る状況と共に、関係者の関心の高い事項であることから、今後ともその動向を引き続き注視していくこととしたい。
これまでのレポートで述べてきたように、IAIGsの指定グループの数は、それぞれの国や地域における保険市場や保険グループの海外展開の状況、さらには保険監督当局のスタンス等を反映して、それぞれの国・地域自体の保険市場の規模や一般的に認識されている大規模な保険グループの数等とは必ずしもリンクする形にはなっていない。
なお、IAIGsの指定については、適宜見直しが行われていくことになっている。
買収や合併、さらには売却等の地域別の事業展開の見直し等のグループ会社の戦略や以前のレポートで報告したPrudentialやAegonに見られるようなグループの再編等に伴うグループ本社の管轄区域の変更等に伴って、IAIGsのリストへの新たな追加や削除等が行われていくことにもなる。
各管轄区域においては、今後も適宜、IAIGsの指定の見直し等が行われていくことが想定されることになる。
IAIGsの指定に関する状況は、IAIGsに対する監督・規制を巡る状況と共に、関係者の関心の高い事項であることから、今後ともその動向を引き続き注視していくこととしたい。
(2024年11月19日「保険・年金フォーカス」)
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中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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【IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(12)-新たに2社が指定、1社が指定解除されてIAIGsは18の国・地域からの59社に-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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