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- 中国は不動産不況と米国リスクをどう乗り越えるか-相次ぎ発表される経済政策の現状評価と今後の見通し
2024年11月15日
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3――今後中国はどう臨むか
1|国内経済政策:本格的な財政出動の強化は2025年となる見込み
財政部が今後予定している財政政策として挙げた内容は図表7の通りで、2025年の対策においては、需要喚起に向けた財政支出の拡大に軸足が置かれていることが分かる。
対策の進め方として、現時点では、目下対策が焦眉の急であった地方政府の資金繰り対策に重点を置き、インフラ建設や設備更新、耐久消費財の買い替え支援といった需要喚起策については、25年3月の全国人民代表大会を経て再始動し、切れ目なく対策を継続していく考えと思われる。
対策の規模に関しては、米国による対中輸入制裁関税発動の見通しのほか、残り数年を目途に進められているデレバレッジの観点も影響するだろう。実際、上述の地方政府の隠れ債務対策や不動産対策において、その処理の主体はあくまでも地方政府や不動産デベロッパー、金融機関とされ、中央政府は人民銀行による流動性供給など後方支援に徹している。中央政府が救済の手を差し伸べることで、債務処理の規律が緩むことを危惧しているものと考えられる。27年の次回党大会や29年の建国80周年にあわせた改革達成など、今後政治的に重要な節目の年を迎えるなか、その懸念自体は自然な発想だが、経済が一進一退で不安定な状況にある現在、経済対策の規模が過小となれば、経済を上向かせることはできない。財政出動がどの程度積極的なものとなるか、今後順次開催される国内の重要会議(24年12月開催予定の経済工作会議や25年3月開催予定の全国人民代表大会)で示される25年の経済政策の方針が注目点となるだろう。
財政部が今後予定している財政政策として挙げた内容は図表7の通りで、2025年の対策においては、需要喚起に向けた財政支出の拡大に軸足が置かれていることが分かる。
対策の進め方として、現時点では、目下対策が焦眉の急であった地方政府の資金繰り対策に重点を置き、インフラ建設や設備更新、耐久消費財の買い替え支援といった需要喚起策については、25年3月の全国人民代表大会を経て再始動し、切れ目なく対策を継続していく考えと思われる。
対策の規模に関しては、米国による対中輸入制裁関税発動の見通しのほか、残り数年を目途に進められているデレバレッジの観点も影響するだろう。実際、上述の地方政府の隠れ債務対策や不動産対策において、その処理の主体はあくまでも地方政府や不動産デベロッパー、金融機関とされ、中央政府は人民銀行による流動性供給など後方支援に徹している。中央政府が救済の手を差し伸べることで、債務処理の規律が緩むことを危惧しているものと考えられる。27年の次回党大会や29年の建国80周年にあわせた改革達成など、今後政治的に重要な節目の年を迎えるなか、その懸念自体は自然な発想だが、経済が一進一退で不安定な状況にある現在、経済対策の規模が過小となれば、経済を上向かせることはできない。財政出動がどの程度積極的なものとなるか、今後順次開催される国内の重要会議(24年12月開催予定の経済工作会議や25年3月開催予定の全国人民代表大会)で示される25年の経済政策の方針が注目点となるだろう。
2|対米外交:経済への悪影響緩和に向けた取り組みが必要に
対米関係についてはどうだろうか。現時点で、中国政府から具体的な考えはまだ明らかにされていないが、過去の経験に基づけば、対抗と譲歩を組み合わせて交渉しながら、制裁関税をはじめとする対中強硬策の影響を最小限に食い止めるべく、時間稼ぎの努力がなされるものと予想される。加えて、自国の競争力強化や国際的影響力拡大のため、産業政策や対外関係の強化も続けられるだろう。
これまでの米中摩擦を巡る主な出来事は図表8の通りだ。このうち、第1次トランプ政権時の米中摩擦をごく簡単に振り返ると、17年1月に政権が発足してから約1年半後の18年7月から対中制裁関税が適用され、その後再び約1年半をかけて交渉を実施し、19年12月に第1弾合意に至った。同合意では、中国による対米輸入の拡大についても約束されたが、翌20年にパンデミックが発生し世界経済が混乱に陥ったこともあり、そうした合意事項の達成がうやむやな状態のまま、米国で政権が交代した。
仮に今回も同様に事を進めることができれば、対中強硬策による下押しを分散させ、その影響を国内経済政策や迂回輸出等によって緩和しながら経済のソフトランディングを目指すことは不可能ではない。また、経済面では脅威が中心となりそうだが、米国の外交政策に再び変化が生じることで、中国にとっては国際的影響力の強化や台湾問題に関しては機会が生じる可能性もある。多方面での得失を総合的に考慮しながら対米外交を運営していくものと思われる。
米国では、足元で第2次トランプ政権の閣僚人事が決まりつつあり、今後は、対中政策を含む政策の考え方について徐々に明らかになってくるだろう。対中経済政策がどの程度優先されるのか、どの程度強硬に実施されるのか、交渉の余地があるのか、そして中国はそれに対してどのような姿勢をみせるのか等、米中双方の動向に注視する必要がある。
対米関係についてはどうだろうか。現時点で、中国政府から具体的な考えはまだ明らかにされていないが、過去の経験に基づけば、対抗と譲歩を組み合わせて交渉しながら、制裁関税をはじめとする対中強硬策の影響を最小限に食い止めるべく、時間稼ぎの努力がなされるものと予想される。加えて、自国の競争力強化や国際的影響力拡大のため、産業政策や対外関係の強化も続けられるだろう。
これまでの米中摩擦を巡る主な出来事は図表8の通りだ。このうち、第1次トランプ政権時の米中摩擦をごく簡単に振り返ると、17年1月に政権が発足してから約1年半後の18年7月から対中制裁関税が適用され、その後再び約1年半をかけて交渉を実施し、19年12月に第1弾合意に至った。同合意では、中国による対米輸入の拡大についても約束されたが、翌20年にパンデミックが発生し世界経済が混乱に陥ったこともあり、そうした合意事項の達成がうやむやな状態のまま、米国で政権が交代した。
仮に今回も同様に事を進めることができれば、対中強硬策による下押しを分散させ、その影響を国内経済政策や迂回輸出等によって緩和しながら経済のソフトランディングを目指すことは不可能ではない。また、経済面では脅威が中心となりそうだが、米国の外交政策に再び変化が生じることで、中国にとっては国際的影響力の強化や台湾問題に関しては機会が生じる可能性もある。多方面での得失を総合的に考慮しながら対米外交を運営していくものと思われる。
米国では、足元で第2次トランプ政権の閣僚人事が決まりつつあり、今後は、対中政策を含む政策の考え方について徐々に明らかになってくるだろう。対中経済政策がどの程度優先されるのか、どの程度強硬に実施されるのか、交渉の余地があるのか、そして中国はそれに対してどのような姿勢をみせるのか等、米中双方の動向に注視する必要がある。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年11月15日「基礎研レター」)

03-3512-1787
経歴
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
三浦 祐介のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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