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バランスシート調整の日中比較(前編)-両国で異なる実体経済のデレバレッジと経済的影響のプロセス

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介
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- 中国では、不動産不況が長期化の様相を呈している。こうしたなか、中国が今後、不動産バブル崩壊による景気の悪化を経て経済の停滞が長期化する、いわゆる「日本化」の可能性が懸念されている。本稿では、日本を長期停滞に陥らせた主因ともいえるバランスシート調整とその経済的影響について、中国の状況を日本と比較し、今後を展望する。今回の「前編」では、実体経済のバランスシート調整を扱う(次回の「後編」では、銀行の不良債権処理の状況について考察する)。
- 中国でバランスシート調整が始まったのは2015年末である。2012年に習政権が発足した後、質の高い発展を実現するためのサプライサイド構造改革の中核的施策として、過剰生産能力の解消、不動産在庫の解消、過剰債務の解消(デレバレッジ)の「3つの過剰」の処理が進められるようになった。その取り組みは、全体としてみれば、2019年頃までは一定の成果をあげたと評価できる。ただし、その後の展開は、対策の過程で生じた副作用や外部環境の変化を受け、より大きな問題が生じたり、方向転換を余儀なくされてしまったりと、構造改革の難しさを物語っている。
- デレバレッジに焦点をあて、日本との比較に基づいて中国の特徴をみると、部門によってピークや債務規模の水準が異なっており、現時点における中国のデレバレッジの圧力は当時の日本に比べて小さい。経済的影響の表れ方についても、日本では各部門の調整が連鎖したことで経済の悪循環を招き、長期停滞につながったのに対して、中国では連鎖していない。
- 中国の今後のバランスシート調整を展望すると、目下の不動産セクターの調整をうまく乗り越えられたとして、地方政府の隠れ債務処理が最大の課題である。その対策は23年から再び強化されている。中央政府による財政出動などを通じて、緩やかな減速にとどめる経済運営が目指されると考えられるが、人口動態などの構造変化を背景に残された時間には限りがある。次回の党大会(2027年)といった政治日程を節目としながら、30年代半ばに向けて段階的に処理が進むことが予想される。
■目次
1――はじめに
2――中国におけるバランスシート調整の歩み
1|2015年末に提起された「サプライサイド構造改革」を契機にスタート
2|過剰生産能力の解消 : 行政的手段により進展するも、近年問題が再燃
3|過剰不動産在庫の解消 : 需要喚起に頼った処理が不動産バブルを誘引
4|過剰債務の解消 : 部門により進展はまちまち
3――中国のバランスシート調整の特徴 : 日本との比較を踏まえた考察
1|両国のバランスシート調整の経緯と経済的影響の概観
2|両国のバランスシート調整の相違 : 影響が連鎖した日本と、連鎖していない中国
4――今後の展望
1|地方政府債務のデレバレッジが残る最大の課題
2|これまでのように他部門の下支えにより経済的影響を緩和できるか
3|予想される動き: 今後10年程度かけて融資平台のデレバレッジを段階的に推進
5――おわりに
(2024年06月11日「基礎研レポート」)

03-3512-1787
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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