2024年10月23日

中国経済:24年7~9月期の評価-小幅減速にとどまるも内需悪化には歯止めがかからず、見かけよりも厳しい状況

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介

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(不動産市場)
不動産市場については、不況が継続している。販売動向に関して、住宅販売面積の伸びは、依然として前年同月比で2ケタの減少が続いているが、6月以降、マイナス幅は縮小を続けている(図表13)。住宅販売価格(70都市平均)の伸びは、22年4月以降、30カ月連続でマイナスとなっている。

供給側の動向に関して、住宅着工面積および住宅竣工面積の伸びは、8月から9月にかけて概ね横ばいで推移した(図表14)。住宅完成在庫面積は依然増加しているものの、5月をピークに増勢に歯止めがかかっており、住宅在庫買い取り支援策の効果が表れている可能性がある。また、不動産開発資金の伸びは、春先以降、徐々にマイナス幅が縮小する傾向にあったが、9月には再びマイナス幅が拡大するなど開発の資金繰りは依然として厳しい。
(図表13)住宅販売面積・価格/(図表14)住宅供給関連指標
(財政)
財政の動向について、一般会計の主要科目の歳出の伸びは年初来、8月にかけて低下傾向にあり、政府消費による下支えが弱まっていることを示唆している(図表15)。国債・地方専項債の発行ペースに関して、年初来累計発行額の推移をみると、8月に23年を上回る水準となり、9月にかけて拡大している(図表16)。24年に入り、国債の発行が先行した一方、地方専項債の発行が遅れていたが、4月に開催された中央政治局会議で発行ペースの加速が強調されて以降、徐々にペースが早まった。
(図表15)財政支出/(図表16)国債・地方専項債による資金調達額

3.物価・金融

3.物価・金融

(物価)
物価の動向について、消費者物価指数(CPI)の推移をみると、低調が続いており(図表17)、9月は前月から低下した。豚肉価格や生鮮野菜等の食品価格上昇が続いている一方、食品・エネルギーを除くコアCPIは低下を続けている。工業生産者出荷価格(PPI)の伸びは、22年10月以降、23カ月連続でマイナスとなっており、(図表18)、8月から9月にかけてはマイナス幅が拡大している。
(図表17)CPI/(図表18)PPI
(金融)
金融の動向について、M2は、8月から9月にかけて上昇した。9月下旬にみられた株価急騰の影響とみられる。一方、社会融資総量(政府債券を除く)は、9月も減速を続けた(図表19)。金融政策に関しては、9月に政策金利(リバースレポ・オペ、7日物)が引き下げられた(図表20)。引き下げ幅は20bpsと、コロナ禍以来の下げ幅となった。それを受け、貸出金利のベンチマークとなるLPRも、1年物、5年物とも、10月に25bps低下した。1年物に関しては過去最大、5年物に関しては24年2月以来の低下幅となっている。
(図表19)社会融資総量/(図表20)政策金利・LPR
 
 

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(2024年10月23日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

三浦 祐介 (みうら ゆうすけ)

研究・専門分野
中国経済

経歴
  • 【職歴】
     ・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
     ・2009年:同 アジア調査部中国室
     (2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
     ・2020年:同 人事部
     ・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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