2024年10月11日

米国における法定責任準備金評価利率を巡る動向-金利の上昇を受けて、10年ぶりに2025年から0.5%引き上げられる-

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3―今回の法定責任準備金評価利率の変更-生命保険・年金保険-

1|概要
2024 年の法定責任準備金評価利率の決定期間は 2024年6月30日に終了し、2024 年の年金保険の評価利率と2025 年の生命保険の評価利率及び不没収価格評価利率が確定した。

これによると、過去 2 年間の大幅な金利上昇により、生命保険の評価利率と不没収価格評価利率は 2025 年には 5年ぶりに2013 年から 2020 年までの水準に戻る。また、年金保険(据置年金)の評価利率は 2023 年に、契約タイプ等によっても異なるが、0.25%~1.25%と大きく上昇したが、2024 年もさらに上昇している。
2|生命保険・年金保険の評価利率
2025 年の生命保険の法定責任準備金評価利率は、2024年の水準から0.50%引き上げられる。具体的には、20年超の保証期間の場合、これまでの3.00%から0.50%引き上げられて3.50%となる。

また、2025年の生命保険の不没収価格評価利率は、2024年の水準から0.75%引き上げられる。具体的には、20年超の保証期間の場合、これまでの3.75%から0.75%引き上げられて4.50%となる(ただし、不没収価格評価利率については、会社は2025年12月31日までに 4.50% に引き上げればよい)。

2024年の一時払据置年金(SPDA)の評価利率は、契約タイプ等によって異なるが、2023年に比較して、0.25%~0.75%引き上げられて、3.75%~5.25%の水準となる。また、自在型保険料払込据置年金の評価利率についても、契約タイプ等によって異なるが、2023年に比較して、0.25%~0.75%引き上げられて、3.50%~5.00%の水準となる。
3|過去からの推移
代表的なケースでの過去からの推移は、普通生命保険(定期保険及びULSG(2次保証付ユニバーサル生命保険)以外)の場合の法定責任準備金評価利率と不没収価格評価利率、一時払据置年金及び自在型保険料払込据置年金の評価利率の場合、以下の図表の通りとなっている。
法定責任準備金評価利率の推移(普通生命保険)
不没収価格評価利率の推移(普通生命保険)
一時払据置年金(契約年度ベース)の評価利率の推移
自在型保険料払込据置年金(契約年度ベース)の評価利率の推移
4|2026年の評価利率の動向
Moody’s の月次平均社債利回り(MACYR)について、2024年6月末現在において、12カ月平均と36か月平均は、以下の通りとなっている。

2024年の12か月平均(2023年7月から2024年6月) 5.58%
2023年の12か月平均(2022年7月から2023年6月) 5.16%
2022年の12か月平均(2021年7月から2022年6月) 3.51%
2022年~2024年の36か月平均            4.75%

これにより、2026年の評価利率の動向については、概ね以下の通りとなる。

・2025年のMACYRの12か月平均がMACYRの36カ月平均との関係でどの程度の水準になるのかが問題となる。

・評価利率が引き下げとなるためには、2025年のMACYRの12か月平均が3.8%程度を下回る必要があるが、現在のMACYRの水準が5%台の水準で推移していることから、この可能性は低いと想定される。

・一方で、評価利率が引き上げとなるためには、MACYRの36カ月平均の水準との関係もあり、2025年のMACYRの12か月平均が5.5%程度を上回る必要があるが、その可能性は否定できないものと想定される。

4―法定最高責任準備金評価利率の設定

4―法定最高責任準備金評価利率の設定-所得年金-

所得年金(Income Annuity)と呼ばれる一時払即時年金等の法定最高責任準備金評価利率(以下、ここでは「評価利率」という)については、2018年1月1日に発行した所得年金の評価を規定する VM-228の導入により、評価利率のタイミングと決定が大幅に変更されている。

ここでは、その概要について報告する。
 
8 VM22については、導入以来、多くの変更が行われてきており、今後もさらなる改定が予定されている。
|評価バケット
VM-22の対象契約は、(1)生存要件(生命に関する偶発事象)(Life Contingencies)の有無、(2)参照期間の長さ、(3)年金受給者の開始年齢、に基づいて、4つの評価利率バケット(A、B、C、D)に割り当てられる(これにより、より堅牢な期間マッチングが可能となる)。
評価利率バケットの割当
ここで、「参照期間」は、(1)生存要件が有る契約の場合、保険料決定日から、最後の生存要件が無い支払いの日と最初の生存要件に基づく支払いの日のいずれか早い日までの期間、を最も近い整数年に丸めたもの、(2)生存要件が無い契約の場合、最後の生存要件が無い支払いの日までの期間を最も近い整数年に丸めたもの、等となる。

(2024年10月11日「基礎研レポート」)

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