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コラム
        2024年09月30日
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                                            その理由として、後継ぎがいないことや需要の減少が最も大きいと考えられるが、酒造製造免許を新規で取れなくなっていることも少なからず理由になっている。酒税法第10条において供給規制のために新規の清酒製造免許の取得要件を以下のものとしている1。
                                    
            イ 清酒製造者が、企業合理化を図るため新たに製造場を設置して清酒を製造しようとする場合
ロ 2以上の清酒製造者が、企業合理化を図るため新たに法人を組織し、新たに製造場を設置して清酒を共同製造しようとする場合
ハ 清酒製造者が、企業合理化を図るため分離又は分割し、新たに製造場を設置して清酒を製造しようとする場合
ニ 共同してびん詰めすることを目的として設立された清酒製造者が主となって組織する法人の蔵置場又は自己のびん詰等のための蔵置場に未納税移入した清酒に、炭酸ガス又は炭酸水を加え、発泡性を持たせた清酒を製造しようとする場合
ホ 輸出するために清酒を製造しようとする場合
                                   (国税庁HPより)
                                            すなわち、輸出用を除いて新規に清酒製造業に参入し、免許を取得することは基本的にできないことになっている。従って、清酒造りに新規参入をするには、製造免許を持っている企業を買収するか、既存の清酒製造者に委託するなどの方法を採るしかない。
 
1 国税庁. 第10条 製造免許等の要件. https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/2-08.htm.
                                    
            1 国税庁. 第10条 製造免許等の要件. https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/2-08.htm.
2――クラフトサケの登場
                                            このように新規参入して酒税法上の「清酒」の製造免許を取得することは出来ないが、「その他の醸造酒」としての免許を取得することは可能である。「その他の醸造酒」として作られているのがクラフトサケである。クラフトサケブリュワリー協会の定義によると「クラフトサケとは日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら 従来の「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた、新しいジャンルのお酒。」としている2。一般的なものでは「どぶろく」なども対象となる。フルーツやハーブなどの副原料が入っているものもある2。
 
2 クラフトサケブリュワリー協会. クラフトサケブリュワリー協会. https://craftsakebreweries.com/index.html.
                                    
            2 クラフトサケブリュワリー協会. クラフトサケブリュワリー協会. https://craftsakebreweries.com/index.html.
3――クラフトサケの強み
                                            クラフトサケの事例から、クラフトサケにおける強みについて考えていきたい。
(1) 副原料によってこだわった日本酒を作ることが出来る。
清酒の消費量が減っている一方で、特定名称酒、その中でも純米酒や純米吟醸酒の割合は増えている3。クラフトサケでは清酒では用いていない副原料を用いることが出来るため、よりこだわった日本酒を作ることが出来る。haccoba4ではホップを副原料として用いたものなどが造られている。これによって、こだわった美味しい日本酒を呑みたいといった需要に合わせることが出来るのではないか。
(2) 地域の特産品を原料に使うことが出来る。
クラフトサケでは清酒と異なり、副原料を用いることが出来る。例えば、LIBROMでは副原料として用いている福岡産のものを用いている5。酒蔵は地域を支える重要な役割を果たすものであり、広く原料を用いることが出来るクラフトサケではより地域の産業に影響を及ぼす可能性がある。
(3) 空き家活用に繋がる。
大阪のADACHI NOUJO6は富田団地内にカフェが併設された醸造所を設置している。これまでの酒蔵より狭い場所で酒造りを行われている。空き家の活用方法としてクラフトサケの醸造所という方法が選択肢として入るのではないか。 
3 国税庁. 酒レポート 令和5年6月. (2023).
4 haccoba. https://haccoba.com/.
5 吟天シェフ酒コラム. 福岡の市街地で造るクラフトサケLIBROM~醸造責任者が描く未来. https://ginten.tokyo/gintenchefsake/article/18#:~:text=%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%88%E3%82%B5%E3%82%B1%E3%81%AF%E3%80%81%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%85%92%E3%81%AE,%E3%81%8A%E9%85%92%E3%81%8C%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82 (2023).
6 富田団地に「ADACHI NOUJO」って酒造併設のカフェバーができてる. 高槻つーしん https://www.takatsuki2.jp/open-close/adachinoujo-20231105.html (2023).
                                    
            (1) 副原料によってこだわった日本酒を作ることが出来る。
清酒の消費量が減っている一方で、特定名称酒、その中でも純米酒や純米吟醸酒の割合は増えている3。クラフトサケでは清酒では用いていない副原料を用いることが出来るため、よりこだわった日本酒を作ることが出来る。haccoba4ではホップを副原料として用いたものなどが造られている。これによって、こだわった美味しい日本酒を呑みたいといった需要に合わせることが出来るのではないか。
(2) 地域の特産品を原料に使うことが出来る。
クラフトサケでは清酒と異なり、副原料を用いることが出来る。例えば、LIBROMでは副原料として用いている福岡産のものを用いている5。酒蔵は地域を支える重要な役割を果たすものであり、広く原料を用いることが出来るクラフトサケではより地域の産業に影響を及ぼす可能性がある。
(3) 空き家活用に繋がる。
大阪のADACHI NOUJO6は富田団地内にカフェが併設された醸造所を設置している。これまでの酒蔵より狭い場所で酒造りを行われている。空き家の活用方法としてクラフトサケの醸造所という方法が選択肢として入るのではないか。
3 国税庁. 酒レポート 令和5年6月. (2023).
4 haccoba. https://haccoba.com/.
5 吟天シェフ酒コラム. 福岡の市街地で造るクラフトサケLIBROM~醸造責任者が描く未来. https://ginten.tokyo/gintenchefsake/article/18#:~:text=%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%88%E3%82%B5%E3%82%B1%E3%81%AF%E3%80%81%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%85%92%E3%81%AE,%E3%81%8A%E9%85%92%E3%81%8C%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82 (2023).
6 富田団地に「ADACHI NOUJO」って酒造併設のカフェバーができてる. 高槻つーしん https://www.takatsuki2.jp/open-close/adachinoujo-20231105.html (2023).
4――おわりに
                                            クラフトサケは、日本酒の新たな広がりをもたらす可能性があるだけでなく、地域経済や観光産業との連携を強化する新しい手法としても注目されている。今後、クラフトサケの市場拡大や多様な製品開発が進むことで、日本国内外での需要がさらに増加することが期待される。
清酒製造免許を持たない事業者が日本酒造りを行う方法は他にも存在する。例えばHirose Sake Worksの廣瀬氏が手掛けている「eight」もその一つである。廣瀬氏は酒蔵と協働で日本酒を造り、蔵の特徴を残しながらも新しいものを企画している。このような業態は今後も広がって行くと考えられる。これからもその動きについて注目していきたい。
            清酒製造免許を持たない事業者が日本酒造りを行う方法は他にも存在する。例えばHirose Sake Worksの廣瀬氏が手掛けている「eight」もその一つである。廣瀬氏は酒蔵と協働で日本酒を造り、蔵の特徴を残しながらも新しいものを企画している。このような業態は今後も広がって行くと考えられる。これからもその動きについて注目していきたい。
(2024年09月30日「研究員の眼」)
                                        03-3512-1817
経歴
                            - 【職歴】
2022年 名古屋工業大学大学院 工学研究科 博士(工学)
2022年 ニッセイ基礎研究所 入社
【加入団体等】
・土木学会
・日本都市計画学会
・日本計画行政学会 
島田 壮一郎のレポート
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【お酒についてシラフで考える-清酒酒造免許のない日本酒造り-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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