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- タイの生命保険市場(2023年版)
2024年09月17日
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4―会社別の販売動向
会社別に新契約保険料(上位8社、元受ベース)を見ると、エージェント販売が主力の最大手のAIA が終身保険や医療保険の販売が好調で322億バーツ(前年比3.5%増)と増加した(図表8)。FWDはエージェント販売と銀行窓販が大きく伸びて前年比14.9%増の274億バーツとなり2位に浮上、Muang Thai Lifeは昨年好調だった医療保険の販売が伸び悩み237億バーツ(同8.9%減)の3位に転落した。Thai Lifeは一時払いの終身保険の販売が好調で231億バーツ(同21.9%増)と大幅に増加して4位だった。そして5位以下の順位は昨年と変わらずPrudential Life(125億バーツ、同0.6%減)、Krungthai AXA Life(118億バーツ、同2.1%減)、Allianz Ayudhya(74億バーツ、同2.0%増)、Bangkok Life(69億バーツ、同0.9%減)と続いた。
収入保険料シェア(上位8社)を見ると、まず最大手のAIAは25.0%(対前年0.1%ポイント増)となり、新契約保険料が回復したためシェアが小幅に上昇した(図表9)。またAIAと同様にエージェント販売が中心のThai Lifeは14.3%(対前年0.1%ポイント減)、Allianz Ayudhyaは5.7%(対前年0.1%ポイント増)となり、それぞれ小幅にシェアが変動した。一方、銀行窓販が中心のFWDは14.2%(対前年0.5%ポイント増)、Prudential Lifeは5.5%(対前年0.4%ポイント増)となり、それぞれシェアが上昇したが、Muang Thai Lifeは11.2%(対前年0.1%ポイント減)、Krungthai AXA Lifeは7.1%(対前年0.3%ポイント減)、Bangkok Lifeは5.4%(対前年0.5%ポイント減)とシェアを落とすなど、明暗が分かれる結果となった。
収入保険料シェア(上位8社)を見ると、まず最大手のAIAは25.0%(対前年0.1%ポイント増)となり、新契約保険料が回復したためシェアが小幅に上昇した(図表9)。またAIAと同様にエージェント販売が中心のThai Lifeは14.3%(対前年0.1%ポイント減)、Allianz Ayudhyaは5.7%(対前年0.1%ポイント増)となり、それぞれ小幅にシェアが変動した。一方、銀行窓販が中心のFWDは14.2%(対前年0.5%ポイント増)、Prudential Lifeは5.5%(対前年0.4%ポイント増)となり、それぞれシェアが上昇したが、Muang Thai Lifeは11.2%(対前年0.1%ポイント減)、Krungthai AXA Lifeは7.1%(対前年0.3%ポイント減)、Bangkok Lifeは5.4%(対前年0.5%ポイント減)とシェアを落とすなど、明暗が分かれる結果となった。
5―資産運用状況
2023年はインフレ抑制に向けた金融引き締めを受けて世界経済が減速したため、投資家のリスク回避姿勢が強まったほか、タイ国内では総選挙後も政治的な不透明感がくすぶり続けたため、タイの代表的な株価指数であるSET指数は低下傾向で推移し、通年で前年比16.3%下落する結果となった(図表10)。
債券市場では、2021年から長期国債の金利が上昇している。タイ銀行(中央銀行)はコロナ禍で緩和的な金融政策を維持して政策金利を過去最低の0.5%で据え置いていたため、2020年は低金利環境だったが、2021年になると米国が量的緩和政策のテーパリングを開始するなど金融引き締めが進むなか、米国の金利上昇につられる形でタイの長期金利が上昇した。また2022年8月から2023年9月にかけてはタイ中銀がインフレ抑制と金融政策の正常化に向けて段階的な利上げを進めて政策金利を0.5%から2.5%まで引き上げた。こうした内外要因からタイ10年国債金利は2020年の1%台前半から2022年後半にかけて2%台後半まで上昇し、概ねコロナ前の水準まで戻ることとなった。
タイ生命保険会社の運用資産構成割合を見ると、2023年は公共債が60.0%、民間債が23.3%、株式等が9.8%、貸付が4.8%だった(図表11)。2023年は株価が下落する一方、金利が高めの水準で横ばい圏の推移となったため、民間債や株式等のウェイトが縮小する一方で公共債のウェイトが拡大した。
運用費用を差引いたネットの運用収益は、国債や社債の安定した利息収入を中心に1,249億バーツとなり、前年から16億バーツ増加(前年比1.3%増)した。
債券市場では、2021年から長期国債の金利が上昇している。タイ銀行(中央銀行)はコロナ禍で緩和的な金融政策を維持して政策金利を過去最低の0.5%で据え置いていたため、2020年は低金利環境だったが、2021年になると米国が量的緩和政策のテーパリングを開始するなど金融引き締めが進むなか、米国の金利上昇につられる形でタイの長期金利が上昇した。また2022年8月から2023年9月にかけてはタイ中銀がインフレ抑制と金融政策の正常化に向けて段階的な利上げを進めて政策金利を0.5%から2.5%まで引き上げた。こうした内外要因からタイ10年国債金利は2020年の1%台前半から2022年後半にかけて2%台後半まで上昇し、概ねコロナ前の水準まで戻ることとなった。
タイ生命保険会社の運用資産構成割合を見ると、2023年は公共債が60.0%、民間債が23.3%、株式等が9.8%、貸付が4.8%だった(図表11)。2023年は株価が下落する一方、金利が高めの水準で横ばい圏の推移となったため、民間債や株式等のウェイトが縮小する一方で公共債のウェイトが拡大した。
運用費用を差引いたネットの運用収益は、国債や社債の安定した利息収入を中心に1,249億バーツとなり、前年から16億バーツ増加(前年比1.3%増)した。
6―収支動向
7―おわりに
2023年のタイ生命保険市場は世界経済の減速懸念を受けて投資家のリスク回避姿勢が強まりユニット・リンクのような投資型の保険の販売は不調だったが、債券利回り上昇に伴う予定利率の引き上げにより普通保険の販売が回復したため、収入保険料が2年ぶりに増加した。
2024年のタイ経済はモノの輸出が緩やかに回復するなかで年2~3%程度の成長が予想されており、また金利水準は現在のところ高めの水準で横ばいの推移となっている。生保市場は引き続き終身保険や養老保険などの普通保険を中心に販売が伸びて、収入保険料は前年並みに増加しそうだ。上半期(1~6月累計)のタイ生命保険料収入をみると、前年同期比3.8%増と順調に伸びている。足元では米国の金融緩和が秒読みとなっており、世界的な景気減速懸念が和らぐなかで投資マインドが改善してユニット・リンクの販売は次第に持ち直しに向かうことが期待される。また医療保険への関心の高まりや各社のデジタル化を取り入れた販売強化なども追い風となり、2年連続での市場拡大が予想される。
2024年のタイ経済はモノの輸出が緩やかに回復するなかで年2~3%程度の成長が予想されており、また金利水準は現在のところ高めの水準で横ばいの推移となっている。生保市場は引き続き終身保険や養老保険などの普通保険を中心に販売が伸びて、収入保険料は前年並みに増加しそうだ。上半期(1~6月累計)のタイ生命保険料収入をみると、前年同期比3.8%増と順調に伸びている。足元では米国の金融緩和が秒読みとなっており、世界的な景気減速懸念が和らぐなかで投資マインドが改善してユニット・リンクの販売は次第に持ち直しに向かうことが期待される。また医療保険への関心の高まりや各社のデジタル化を取り入れた販売強化なども追い風となり、2年連続での市場拡大が予想される。
(2024年09月17日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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