2024年09月11日

不動産投資市場動向(2024年上半期)~外資の取得額が減少するも、全体では高水準を維持

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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国内の不動産取引動向(2024年上半期)

不動産市場調査会社MSCIリアル・キャピタル・アナリティクス(以下、MSCI)によると、2024年上半期の国内不動産取引額1は約3.5兆円(前年同期比+0.1%)となった。第1四半期(前年同期比+24.2%)は増加してスタートしたものの、第2四半期の減少(同▲27.5%)が打ち消した結果、上半期の取引額は概ね横ばいとなった(図表1)。
図表1 国内不動産取引額(四半期毎)
セクター別では、オフィスが約1.3兆円(占率39%)と最も大きく、次いで、賃貸マンションが約0.5兆円(15%)、産業施設が約0.5兆円(14%)、ホテルが約0.5兆円(同13%)、商業施設が約0.4兆円(11%)、開発用地が0.3兆円(8%)となった。また、取引額の増減率(前年同期比)をみると、ホテル(+47%)やオフィス(+24%)が増加した一方、開発用地(▲36%)や産業施設(▲27%)2、賃貸マンション(▲7%)は前年同期比で減少した(図表2)。インバウンド需要への期待からホテルの取引額が拡大した一方、建築コスト上昇や金利の先高観などを背景に長期に資金が拘束される開発用地への投資はやや敬遠される傾向にある。
図表2  セクター別の取引額増減率(前年同期比、2021年下半期~2024年上半期)
次に、購入額を投資主体別(国内資本/外国資本)に集計すると、国内資本が約2.9兆円(前年同期比+13%)、外国資本が約0.5兆円(同▲38%)となった(図表3)。国内資本による購入額3が過去10年間で最高額を記録する一方、外国資本は例年の半分程度の水準に留まっており、購入額に占める外国資本の割合は15%に低下(過去10年平均25%)した。
図表3  投資主体別(国内資本/外国資本)の購入額(2014年上半期~2024年上半期)
外国資本による購入額(0.5兆円)をセクター別にみると、産業施設が約1,900億円(占率37%)と最も大きく、次いで、ホテルが約1,400億円(26%)、オフィスが約1,100億円(22%)、賃貸マンションが約600億円(13%)、開発用地が約100億円(2%)となった(図表4)。外国資本の購入額が全体として減少するなか、産業施設やホテルに対する投資意欲は依然として旺盛だと言える。ホテルへの投資は海外オペレーターと外国資本が組んで投資するケースが増えており、ホテルランクもラグジュアリーからミッドスケール、立地も都市、地方、リゾートと、様々に投資する全方位型に変化している。
図表4 外国資本の購入額(セクター別)
また、外国資本をエリア別に分類すると、過去1年間の購入額に占める割合は、米国が38%(1年前比±0%)、シンガポールが 22%(同+1%)、香港が13%(同+1%)となり、その順位に大きな変動はみられない(図表5)。
図表5 外国資本による購入額のエリア別割合(過去12カ月累計)
 
1 対象は1,000万ドル(約15億円)以上。開発用地を含む。2024年9月2日時点で把握した取引データを集計。
2 産業施設は2023年上期(前年同期比+104%)の反動減によるものであり、取引額は高水準である。
3 国内資本について、上場不動産会社が積極姿勢を継続する一方、国内機関投資家による取得額が減少するなど、投資行動に違いが見られる。

(2024年09月11日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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