2024年02月26日

不動産投資市場動向(2023年第4四半期)~世界不動産市場の停滞から外国資本の投資減少が続く

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

国内不動産市場の2023年の不動産取引総額の前年比は、2023年の第3四半期までの不動産取引累計額の前年同期比より悪化し、市場の減速傾向が強まった。2023年の外国資本による購入額は、2023年の第3四半期までの累計から再びの悪化かつ大幅な減少となった。
 
2023年の世界の不動産取引額は世界金融危機後で最も大きく取引額が減少した。エリア別ではアジア太平洋が約2割減、南北アメリカと欧州・中東・アフリカが約半減した。
 
また、2023年のアジア太平洋地域内の各国市場や各資本の動向から見るに、全体的に投資家心理が冷え込んでいるようだ。一方、日本の不動産市場は低金利環境の継続から例外的に堅調な市況を維持して投資家の投資意欲が強く、まだ金額的には少ないが、海外へリスク分散投資が進んでいると見られる。
 
世界の私募ファンドの勢いは弱まっている。特に資金調達活動の鈍化は取引額の減少につながる可能性があり、今後に注意が必要と考える。
 
不動産を巡る不透明なマクロ経済環境から、売買額の減少が続いている。日本の不動産市場は相対的に状況がよいものの、外国資本による投資の停滞などから、市場は減速傾向となっている。価格が高値圏であることから、投資家は今まで以上に物件を選別して投資する必要があるだろう。
 
今後は外国資本によるオフィスへの投資の回復に期待したい。日銀の緩和的な態度の変化には注意が必要だが、このまま金融緩和状態が続くのであれば、資金調達環境がよく、スプレッドのとれる日本のオフィスは海外投資家にとっても引き続き魅力的な投資先であると考える。
 
また、ホテルのオペレーションや他の用途の管理の現場では、人手不足から以前と同じような運用が難しくなってきている。この状況が進めば、運用や管理がきちんとできているか否かによる不動産の価値の差は、今より大きくなる可能性がある。資金調達や海外の金利環境に影響されずに日本の不動産市場が成長していくためには、いかに不動産の価値を維持し、高めていくかという各不動産投資家独自の収益性向上方法や明確な投資戦略が重要となってくるのではないだろうか。

■目次

・国内全体の不動産取引の動向(2023年)
・外国資本の国内不動産購入の動向(2023年)
・世界とアジア太平洋地域の売買動向
・日本資本による海外不動産投資は大幅増加
・私募ファンドの資金調達の動向
・2024年の展望は
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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