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男性の育休取得の現状(2023年度)-過去最高の30.1%へ、中小や非正規雇用が多い産業でも上昇
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
- 2023年度の民間企業の男性の育休取得率は初めて3割台にのぼり(30.10%)、前年と比べた上昇幅も過去最高であった(2022年17.13%より+12.97%pt)。全業種で上昇し、首位は「生活関連サービス業,娯楽業」(55.31%)、2位「金融業,保険業」(43.84%)、3位「学術研究,専門・技術サービス業」(42.79%)、4位「情報通信業」(38.02%)、5位「電気・ガス・熱供給・水道業」(35.40%)と続く。
- 一方、育休取得率が低いのは「不動産業,物品賃貸業」(16.89%)や「卸売業,小売業」(20.14%)、「宿泊業,飲食サービス業」(21.14%)で、「宿泊業,飲食サービス業」や「卸売業,小売業」では女性の育休取得率も低い傾向があり、非正規雇用者が比較的多いことや人手不足による影響があげられる。とはいえ、これらの業種でも男性の育休取得率は上昇しており、男性の育休取得は浸透へ向けて転換点を迎えたと言える。
- 事業所規模別には、大規模であるほど男性の育休取得率は高いが(500人以上34.19%)、事業所規模によらず全てで上昇しており、もともと取得率が低い規模が小さいところほど上昇幅は大きい。事業所規模が小さいほど育休取得者の代替要員の確保などに課題はあるのだろうが、男性の育休取得促進の波は中小・零細企業にも波及しているようだ。
- 育休取得期間は、男性は1か月前後、女性は1年前後に集中している。なお、男性では2018年度は2週間未満に約7割が集中していたが、2023年度は半減し、1か月以上が41.9%を占め、取得期間は長期化している。育休取得率と取得期間に相関は見られず、戦略的な男性の育休取得促進環境の有無のほか、雇用形態や組織風土の違い、裁量労働など業務における個人の裁量の大きさなどが影響しているようだ。
- 政府は2025年に男性の育休取得率50%、2030年度に85%との目標を掲げ、来年度から育児休業給付の引き上げ(手取りが実質10割)や公表義務の対象拡大(従業員規模100名以上の企業)が予定されている。今後の更なる浸透に向けては、代替要員の確保や評価に加えて、労働力不足の中で企業の持続可能な成長を目指すためには生産性向上を図ることで仕事の総量を見直す取り組みも必要だ。
■目次
1――民間企業勤務の男性の育休取得率
~2023年度は過去最高の30.1%、前年より10ポイント以上上昇
2――育休取得率
~首位は「生活関連サービス業,娯楽業」、全業種上昇、非正規多い産業や中小も上昇
1|産業別の状況
~「生活関連サービス業,娯楽業」は55.31%、金融・保険や学術研究、情報通信も上位
2|事業所規模別の状況
~大規模ほど育休取得率は高いが人手不足が懸念される小規模でも大幅上昇
3――育休取得期間
~男性で1か月以上が4割超、教育やインフラ、サービス等で1か月以上が半数超
1|全体の状況
~男性は長期化傾向、2週間未満が減り(37.7%)、1か月以上が41.9%へと長期化傾向
2|産業別の状況
~男性は教育や電気などインフラ、サービス、学術研究、運輸・郵便で月単位が半数以上
3|事業所規模別の状況
~育休取得率と取得期間は比例せず、大規模で2週間前後と1か月前後にピーク
4――おわりに
~今後の課題は代替要員の確保や評価、仕事と家庭の労働総量の見直しも必要
(2024年08月15日「基礎研レポート」)
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- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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