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- 中国経済の現状と注目点-好調は持続せず、不動産不況と貿易摩擦で弱り目に祟り目の中国経済
2024年07月24日
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1.中国経済の概況
中国国家統計局が7月15日に公表した2024年4~6月期の実質GDP成長率は、前年同期比+4.7%と、前期(24年1~3月期)の+5.3%から伸びが減速した(図表-1)。季節調整後の前期比も+0.7%と、前期(同+1.5%)から減速している。1~6月累計では前年同期比+5.0%となり、今年の成長率目標である「+5%前後」に対して、まだ目標の達成圏内にある。
もっとも、成長の中身をみると、外需や政策支援の効果によるところが依然として大きい。ここのところの中国経済は、一進一退の状況を繰り返しており、前期は一進したが、今期は再び一退したといえよう。不動産不況の長期化が中国経済の重石となっており、足もとでは悪化に傾くデータもみられ、先行きが懸念される。例えば、家計の雇用・所得の先行きに対するマインドは5月にかけて悪化しているほか(図表-2)、PMI調査で「需要不足」と回答する企業の割合も、製造業、非製造業とも6月にかけて上昇している(図表-3)。
こうしたなか、消費者物価(CPI)は、低調な推移を続けており(図表-4)、工業生産者出荷価格(PPI)も依然としてマイナス圏にある。GDPデフレーター(≒GDPの名目伸び率-実質伸び率)は、5四半期連続でマイナスとなっており、デフレ懸念は根強い。
もっとも、成長の中身をみると、外需や政策支援の効果によるところが依然として大きい。ここのところの中国経済は、一進一退の状況を繰り返しており、前期は一進したが、今期は再び一退したといえよう。不動産不況の長期化が中国経済の重石となっており、足もとでは悪化に傾くデータもみられ、先行きが懸念される。例えば、家計の雇用・所得の先行きに対するマインドは5月にかけて悪化しているほか(図表-2)、PMI調査で「需要不足」と回答する企業の割合も、製造業、非製造業とも6月にかけて上昇している(図表-3)。
こうしたなか、消費者物価(CPI)は、低調な推移を続けており(図表-4)、工業生産者出荷価格(PPI)も依然としてマイナス圏にある。GDPデフレーター(≒GDPの名目伸び率-実質伸び率)は、5四半期連続でマイナスとなっており、デフレ懸念は根強い。
2.需要の動向
4~6月期の実質GDP成長率における最終消費(個人消費+政府消費)の寄与度は、+2.2%PTと、前期の+3.9%PTから低下した(図表-5)。小売売上高の前年比名目伸び率を見ると(図表-6)、4~6月期は前年同期比+2.7%と、前期の同+4.6%から減速している。前年の同期にみられた経済再開によるリバウンドの影響もあるとはみられるが、前期比で低調が続いており、個人消費の勢いは弱まりをみせている。政府消費も、5月には前月から減速しており、不安定な状況にある。
総資本形成(=総固定資本形成+在庫変動)の寄与度は、+1.9%PTと、前期の+0.6%PTから高まった(図表-5)。固定資産投資は名目、実質とも1~3月期から減速しており、在庫投資が押し上げに寄与した可能性がある。業種別の名目伸び率の推移を見ると(図表-7)、製造業は堅調な一方、不動産開発投資は前年割れが続いている。インフラ投資は、4月から5月にかけて減速したが、6月には改善した。
純輸出の寄与度は、+0.6%PTと、前期の+0.8%PTからプラス幅が小幅に縮小した(図表-5)。輸出入の推移を見ると(図表-8)、輸出は、先進国やASEANなど主要輸出相手国・地域でいずれも改善傾向が続いている。他方、輸入は、5月から6月にかけて減速している。内需の弱さや在庫調整圧力が影響している可能性がある。
総資本形成(=総固定資本形成+在庫変動)の寄与度は、+1.9%PTと、前期の+0.6%PTから高まった(図表-5)。固定資産投資は名目、実質とも1~3月期から減速しており、在庫投資が押し上げに寄与した可能性がある。業種別の名目伸び率の推移を見ると(図表-7)、製造業は堅調な一方、不動産開発投資は前年割れが続いている。インフラ投資は、4月から5月にかけて減速したが、6月には改善した。
純輸出の寄与度は、+0.6%PTと、前期の+0.8%PTからプラス幅が小幅に縮小した(図表-5)。輸出入の推移を見ると(図表-8)、輸出は、先進国やASEANなど主要輸出相手国・地域でいずれも改善傾向が続いている。他方、輸入は、5月から6月にかけて減速している。内需の弱さや在庫調整圧力が影響している可能性がある。
3.産業の動向
4~6月期の産業動向を概観すると(図表-9、10)、第1次産業は前年同期比+3.6%と前期(同+3.3%)から加速した。第2次産業は同+5.6%で前期(同+6.0%)から減速した。その内訳をみると、「製造業」が同+6.2%と、前期(同+6.4%)から減速したものの小幅にとどまっている。一方、「建築業」は同+4.3%と、前期(同+5.8%)から大きく減速した。第3次産業は同+4.2%と、前期(同+5.0%)から減速した。その内訳を見ると、「不動産業」が5四半期連続でマイナス成長となっているほか、「卸小売業」・「宿泊飲食業」、「金融業」など、主な業種で軒並み減速している。不動産不況の長期化や個人消費の弱さ、金融緩和に伴う利ざやの縮小など、前期と構図は変わらない。引き続き、「製造業」主導の景気となっていることがうかがえる。
(2024年07月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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