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「2024年女性版骨太」が金融業・保険業に迫る男女間賃金格差の是正~旧「一般職」女性のキャリア形成が課題に

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
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政府が6月に決定した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2024」(女性版骨太の方針)には、男女間賃金格差を是正するため、特に格差が大きい業界に対して、実態把握・分析・課題の整理と、アクションプランの策定を促すことが明記された。また、女性活躍推進法で男女間賃金格差について公表を義務付ける対象企業を、拡大するよう検討することも盛り込まれた。
現在、国内で最も男女間賃金格差が大きい業界は、金融業・保険業である。日本全体では、女性の平均賃金は男性の4分の3だが、金融業・保険業の平均は約6割である。
男女間賃金格差の要因を考察すると、厚生労働省の分析では、職階(役職)と勤続年数の男女差が大きいと考えられてきた。それ以外には、ホワイトカラーの女性は、昇給機会や昇進機会が著しく少ない“事務職”に就く割合が大きいことが要因だと指摘した近年の研究もある。
金融業・保険業では従来、コース別雇用管理制度を導入していた企業が多く、大半の女性を、事務を担う「一般職」として採用してきた経緯があり、それが、金融業・保険業が特に男女間賃金格差が大きい要因となってきた可能性がある。
実際に、金融業・保険業大手の現在の状況と対策について、厚生労働省の公表資料から見てみると、女性の平均賃金は男性の4割弱~5割にとどまっており、各社の説明欄を見ても、コースや職種の偏りを主要因として挙げている。今後は、コースを見直したり、女性の管理職登用を増やしたり、女性の賃金上昇に資する取組を行うとしている。
男女間賃金格差の是正が求められるのは、他の産業も同じだ。改善できなければ、企業の採用活動に悪影響を及ぼしたり、地域から若年女性が流出したりしかねない。格差是正に取り組むことが、結果的には、女性の新人層から中間層、管理職層、役員層へと続く人材構築につながり、中長期的に、企業や地域の女性活躍を推進することになるだろう。
■目次
1――はじめに
2――産業別にみた男女間賃金格差
3――男女間賃金格差を生む要因に関する考察
3-1│男女間賃金格差の主な要因
~「職階」と「勤続年数」~厚生労働省の分析より
3-2│「事務職女性」の多さによる影響
~ホワイトカラー女性の職種の偏りに注目した分析より
3-3│「一般職女性」の昇給機会の乏しさに関する補強データ
~定年後研究所とニッセイ基礎研究所の共同研究より
3-4│金融業・保険業に多い「一般職女性」
4――金融業・保険業大手の男女間賃金格差の現状と対策
4-1│金融業・保険業の男女間賃金格差の現状と分析
~厚生労働省の「女性活躍推進企業データベース」より
4-2│金融業・保険業大手の男女間賃金格差の現状と分析に関するまとめ
5――終わりに
(2024年07月08日「基礎研レポート」)

03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
坊 美生子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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