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- 24年夏も猛暑予想、適切な熱中症対策を!-梅雨明け後は猛暑予想、暑さ指数を注視し、暑さ回避とこまめな水分・塩分補給を-
24年夏も猛暑予想、適切な熱中症対策を!-梅雨明け後は猛暑予想、暑さ指数を注視し、暑さ回避とこまめな水分・塩分補給を-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛
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3――適切な熱中症対策
ところで、熱中症はどのように発症するのか、その症状とメカニズムを整理したい。「熱中症」とは5、体内の水分や塩分バランスが崩れ、体温調節機能が働かなくなり、体温の上昇やめまい、痙攣や頭痛などの様々な症状を引き起こす疾患とされている。熱中症は、その重症度によって3段階に区分され、「I度:現場での応急処置で対応できる軽症」(立眩みやこむら返りなどの筋肉痛、大量の発汗等)、「II度:病院への搬送を必要とする中等症」(頭痛や倦怠感、嘔気や嘔吐等)、「III度:入院して集中治療の必要性のある重症」(意識障害や痙攣、手足の運動障害や高体温等)に区分される。
熱中症は、環境要因や身体・行動要因が重なり発症することが明らかになっている。例えば、気温や湿度が高く、エアコンや扇風機を使用していない環境や、子どもや高齢者などの体温調節機能が未熟な者、低栄養状態や寝不足、インフルエンザ感染症や下痢などの脱水状態などの身体状況、炎天下での屋外作業や激しい運動や長時間水分補給ができない状況、などが影響し発症することが報告されている。
特に、子どもと高齢者はより注意していただきたい。6思春期前の子どもは、汗腺などの体温調節能力が充分に発達していない。子どもの場合、通常は温熱ストレスが増大すると、皮膚血流量を増加させ、未熟な汗腺能力を補う熱放散特性を示すが、環境温が皮膚音より高い場合や輻射熱の大きな条件(炎天下)などでは、熱しやすい体格特性が熱獲得を促進するとともに、未熟な発汗能力が大きく影響し、深部体温が著しく上昇しやすくなる。また、子どもの熱放散特性に加え、未発達な血管調整により熱失神も生じやすくなる。さらに、近年では、肥満度が高いほど深部体温が高くなることから、肥満傾向の子どもが熱中症になりやすいことが報告されている。
一方で、高齢者の場合には、熱放散能力の低下に加え、行動性体温調節の鈍化と体液量の低下も影響する。老化が進むと皮膚血流量と発汗量の増加が遅れ、若年者より熱放散能力が低下し、熱が体内に溜まりやすくなる上、皮膚への血液量を一生懸命増加させるため、心臓に戻る血液量が減少し、それを補うために心拍数が増加し循環器系へ負荷がかかる。(循環器疾患を有する高齢者は特に注意)また、夏季には冷房や衣服の調整といった行動性体温調節が図られるが、70歳以上では冷房使用時間が短く、設定温度が平均より2度ほど高いことが報告されている。老化に伴い皮膚の温度センサー感度が鈍くなり、冷房を高温設定にしていると暑さを感知しづらくなり、自律性体温調節の発動が鈍り、体内に熱がたまりやすくなる。さらに、高齢者は若年者より体液量及び血液量が少なく、熱放散反応の低下が生じる。老化により喉の渇きも感じにくく、腎機能も低下していることから脱水症状にもなりやすいためより注意が必要である。
5 全日本病院協会「熱中症について」https://www.ajha.or.jp/guide/23.html
6 環境省 熱中症予防情報サイト「高齢者と子どもの注意事項」https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_3-2.pdf
では、これらの熱中症にはどの様に対処するべきか、事前の予防行動と、熱中症の兆候が認められた時の対処行動(応急処置)に分けて整理する。
厚生労働省や環境省の熱中症予防情報サイトでは、熱中症の予防として、(1)暑さの回避と、(2)こまめな水分補給を掲げている7,8。室内では、扇風機やエアコンで温度を調整し、遮光カーテンやすだれ等で工夫し、こまめに室温・暑さ指数の確認をし、屋外では、日傘や帽子の着用、日陰の利用やこまめな休憩を取り、通気性が良く、吸湿性・速乾性のある衣類を着用し、保冷剤や氷などで身体を冷やすことで、身体の蓄熱を避けることが必要とされている。また、日常生活で飲水として摂取すべき水分量は、1日あたり1.2ℓが目安となるが、大量の発汗がある場合には、スポーツ飲料など塩分濃度が0.1~0.2%ほどの飲料摂取が必要とされており、室内や屋外に関係なく、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分・塩分、スポーツドリンクなどを補給することが推奨されている。尚、運動時や屋外作業時に大量の発汗が伴う場合には、体重減少量(発汗量)の7~8割程の補給が必要とも言われている。日本気象協会によると、上記に加え、睡眠中の脱水に関する予防や、バランスの良い食事・睡眠による体調管理による体力づくりの視点も重要という9。夏の熱中症Ⅰ度の4割は、睡眠中に発症していることが報告されており、症状が自覚しにくい睡眠前に寝室の気温や湿度をコントロールした上で入眠していただくよう留意頂きたい。

これら応急処置の流れが覚えられなくとも、涼しい場所への移動、身体を冷やすこと、水分・塩分を補給することだけでもポイントとして頭の隅に入れて頂きたい。
7 厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html
8 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症の予防と対処行動」https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness.php
9 一社)日本気象協会「熱中症の予防・対策」https://www.netsuzero.jp/learning/le02
(2024年06月21日「基礎研レター」)
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03-3512-1847
- 【職歴】
2012年 東大阪市入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)
【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者
【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会
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