2024年06月21日

24年夏も猛暑予想、適切な熱中症対策を!-梅雨明け後は猛暑予想、暑さ指数を注視し、暑さ回避とこまめな水分・塩分補給を-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛

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1――はじめに

2024年6月17日に九州北部が梅雨入りした。これは、平年より11日遅く、昨年とは19日遅い記録的な梅雨入りとなった。気象庁は、梅雨入りが遅くなっても、梅雨明けも遅くなるわけではなく、今年は短期集中型の梅雨期間となると予想している。2007年と1967年には梅雨入りが遅いにも関わらず梅雨明けは平年通りで、短期集中型の梅雨であったことが記録されている。

また、短期集中型であった梅雨が明けた後は、ラニーニャ現象(太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にあけて海面水温が平年より低い状態が続く)が発生しやすく、この現象が発生すると日本の夏季には太平洋高気圧が北へ張り出しやすく、北日本から東日本の気温が高くなる傾向が報告されている。気象庁は、これらの傾向から、今夏も猛暑となることを予想しており、熱中症にも警戒を呼び掛けている。

そこで、本稿では、今夏の天候見通しと、猛暑による健康被害として注意いただきたい「熱中症」に対する対策について改めて説明していきたい。

2――2024年夏の天候見通し

2――2024年夏の天候見通し

1咋年の平均気温は平年比1.76℃上昇、2024年夏も猛暑予想
気象庁は、2024年の今夏(6月から8月)は、温かい空気に覆われやすく、気温は全国的に高くなり、猛暑日が増えると予想している。1エリア別に、平均気温が高くなる確率(予想される出現確率)をみると2(参照:図表1)、北日本では50%、東日本では60%、西日本でも60%、沖縄・奄美地方では70%と、いずれの地域も50%以上の「高い見込み」を示している。2023年の咋夏は、平均気温が平年比で1.76℃も上昇し、1898年の統計開始以来最高値を更新しており、沖縄・奄美地域を除く、日本各地で記録的な高温が続いていることが近年の夏の特徴とされている。

今年の夏は、二酸化炭素などの温室効果ガスが大気中に放出されることで気温が上昇する地球温暖化や、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象の影響等により、大気全体の温度がかなり高くなると予想されている。また、春まで続くエルニーニョ現象の影響等により、インド洋熱帯域で海面水温が高く、積乱雲の発生が多くなることも予想されており、これらの影響により、日本の南で太平洋高気圧の西への張り出しが強く、日本付近には太平洋高気圧の縁を回って暖かく湿った空気が流れ込みやすい傾向にあると示されている。

これに加えて今夏は、冒頭で説明したラニーニャ現象も影響する見込みである。ラニーニャ現象は、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなる一方で、太平洋赤道域西部では、海面水温がより高くなる。そうなると、太平洋高気圧は北へ張り出しを強めるため、日本付近では暑くなる条件がさらに加わるとみられている。

これらのことから、日本の今夏の天候は猛暑になりやすいことが予想されており、気象庁は、暑さに伴う人の健康に係る重大な被害として「熱中症」に対する警戒も強めている。
図表1:今夏の平均気温出現確率予想(%)/図表2:予想される今夏の海洋と大気の特徴
 
1 日本経済新聞「24年の夏も全国的に猛暑 気象庁 熱中症対策を」(2024年2月20日)
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE208840Q4A220C2000000/ 
2 気象庁 夏の天候見通し 全国(6月~8月)暖候期予報(2024年02月20日発表)の解説https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/kaisetsu/?region=010000&term=P6M 
2令和6年「熱中症警戒アラート」全国運用開始
気象庁と環境省は、近年の平均気温上昇に伴う熱中症への懸念から、令和6年4月から10月23日までの期間に「熱中症警戒アラート」の全国での運用を開始した3。「熱中症警戒アラート」は、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予想される場合に、熱さへの「気づき」を呼びかけ、国民の熱中症予防行動を効果的に促すことを目的に運用される。このアラートは、全国を58に分けた府県予報区等を単位として、発表対象地域内の暑さ指数(WBGT)算出地点のいずれかで日最高暑さ指数33以上を予測した場合に発表される。

尚、熱さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature))とは4、熱中症を予防することを目的に人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目し、人体の熱収支に与える影響の大きい (1)湿度、 (2)日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 (13気温の3つを取り入れた指標で、1954年に米国で提唱されたものである。単位は気温と同様、摂氏度(℃)で示されるものの、気温との混同を避けるために省略される場合もある。また、以下の通り(参照:図表3、4)この暑さ指数を目安にした日常生活に関する指針と、運動に関する指針が示されているため、是非参考にしていただきたい。
図表3:日常生活の関する指針
図表4:運動に関する指針
また、環境省では、今年度より、気温が特に著しく高くなることにより熱中症による重大な健康被害が生ずるおそれのある場合に(最高熱さ指数が35に達する場合)、「熱中症特別警戒情報(熱中症特別警戒アラート)」を発表することになっている。この熱中症特別警戒アラートが発表された場合には、市町村(特別区含む)が事前に指定した指定暑熱避難施設が開放されるため、居住区域周辺や外出先の情報を予め調べてご活用いただきたい。
 
3 気象庁 令和6年度「熱中症警戒アラート」の運用開始について
 https://www.jma.go.jp/jma/press/2404/16a/20240416_press_heatalert.html
4 熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)について」https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php 

(2024年06月21日「基礎研レター」)

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生活研究部   研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任

乾 愛 (いぬい めぐみ)

研究・専門分野
母子保健・不妊治療・月経随伴症状・プレコンセプションケア等

経歴
  • 【職歴】
    2012年 東大阪市入庁(保健師)
    2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
    2019年 ニッセイ基礎研究所 入社

    ・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
    ・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
    ・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)

    【資格】
    看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者

    【加入団体等】
    日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会

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