- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 中国経済 >
- 中国における過剰生産能力問題の過去・現在・未来-「電気自動車」の次は「空飛ぶクルマ」が貿易摩擦の火種に?
中国における過剰生産能力問題の過去・現在・未来-「電気自動車」の次は「空飛ぶクルマ」が貿易摩擦の火種に?

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
中国における新産業の成長は、過剰生産能力の観点からのみならず、安全保障の観点からも貿易摩擦の火種となる可能性が高い点には注意が必要だ。
経済産業省(2023)によれば、安全保障上、コンピューティング、クリーンテック、バイオテックの3技術が今後必須になるとの見方が欧米では主流とされており、米国は既に新興技術として具体化して輸出、投資規制の強化に動いている。日本では同省がこれら技術を、「破壊的技術革新が進む領域」、「我が国が技術優位性を持つ領域」、「対外依存の領域」等に類型化している。その分類をもとに、中国が振興対象として挙げている産業や技術を試しにマッピングしてみると、「破壊的技術革新が進む領域」を中心に少なからず重複がみられ(図表7)、今後、中国との競合が安全保障上の問題として浮上する可能性が高い。
将来の技術覇権を巡る競争の火ぶたは既に切られており、対中貿易摩擦は、目下懸案となっているEVや太陽電池にとどまらず引き続き断続的に発生するだろう。このため、今後、日本企業が新たな産業分野を開拓するにあたっては、それがどの程度デリスキングにかかわる規制の対象となりそうか、中国の有する技術や産業集積、消費市場をどの程度組み込むのか、関係各国がどのような政策や規制を講じているのか、国際的なルール形成の状況がどのようなステータスにあるのか等を念頭におき、技術開発の強化や調達・生産体制の構築、販売市場の開拓など一連のサプライチェーンを今後形成していくことが求められる。これまで経済安全保障のリスク管理に関する体制やシステムなどを構築してきた企業であれば、そうした既存の枠組みを応用することもできよう。新たな貿易摩擦の可能性を見越して、先手を打っておくことが望ましい。
【参考文献】
経済産業省(2023)「経済安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプラン」
経済産業省(2024)「経済安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプラン改訂版」
鐘正生(2024)「詳解産能過剰:歴史対話現実」首席経済学家論壇、https://www.chinacef.cn/index.php/index/index#/council_figure?id=19110&c=2024-06-08&u=0000-00-00&exp=73
真家陽一(2022)「新エネルギー自動車(NEV)をめぐる中国の政策動向」(国際協力銀行『JBIC中国レポート』2022年度第3号)
丸川知雄(2024)「EVと太陽電池に『過剰生産能力』はあるのか?」中国学.com、https://sinology-initiative.com/economy/1438/
羅志恒(2024)「告別両輪産能過剰:中国経験」首席経済学家論壇、https://www.chinacef.cn/index.php/index/index#/council_figure?id=19396&c=2024-06-12&u=0000-00-00&exp=122
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年06月17日「研究員の眼」)

03-3512-1787
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
三浦 祐介のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/30 | 米中摩擦に対し、持久戦に備える中国-トランプ関税の打撃に耐えるため、多方面にわたり対策を強化 | 三浦 祐介 | 基礎研レター |
2025/04/23 | トランプ関税で激動の展開をみせる米中摩擦-中国は視界不良の難局にどう臨むか | 三浦 祐介 | 研究員の眼 |
2025/04/23 | 中国経済:25年1~3月期の評価-春風に潜む逆風。好調な出だしとなるも、米中摩擦の正念場はこれから | 三浦 祐介 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/03/24 | 中国:25年1~3月期の成長率予測-前期から減速。目標達成に向け、政策効果でまずまずの出だしに | 三浦 祐介 | Weekly エコノミスト・レター |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【中国における過剰生産能力問題の過去・現在・未来-「電気自動車」の次は「空飛ぶクルマ」が貿易摩擦の火種に?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
中国における過剰生産能力問題の過去・現在・未来-「電気自動車」の次は「空飛ぶクルマ」が貿易摩擦の火種に?のレポート Topへ