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- インド消費者物価(24年5月)~5月のCPI上昇率は5ヵ月連続で低下も、食品価格が依然高止まり
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地域別の上昇率をみると、都市部は前年同月比4.2%(前月:同4.1%)と上昇した一方、農村部は同5.3%(前月:同5.4%)と低下した。
5月のCPIの内訳をみると、燃料・電力とコアCPIがそれぞれ低下した。
まず高止まりが続く食品は前年同月比8.7%となり、前月から横ばいだった(図表2)。食品のうち、価格変動の大きい野菜(同27.3%)は大幅な増加が続いた。野菜価格は昨年7-8月に一時的に高騰し、その後も11月以降は再び高騰している。インドで日常的に必須な野菜とされるジャガイモの価格は前月比15.1%と大幅に上昇したものの、ジャガイモとトマトの価格はそれぞれ同1.5%、同0.5%となり、それぞれ小幅に上昇した。野菜のほか、豆類(前年同月比17.1%)や穀物製品(同8.7%)、肉・魚(同7.3%)が高止まりしたほか、果物(同6.7%)が上昇した。一方、食用油(同▲6.7%)の価格下落が続き、香辛料(同4.3%)が鈍化、牛乳・乳製品(同2.6%)と加工食品(同3.3%)は落ち着いた値動きとなった。
燃料・電力は前年同月比▲3.8%となり、前月の同▲4.0%からマイナス幅が縮小した。
コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.1%(前月:同3.2%)と小幅に低下し、過去最低水準で推移している。教育(同4.1%)や衣服・靴(同2.8%)、住宅(同2.6%)、家庭用品・サービス(同2.5%)、娯楽(同2.5%)、輸送・通信(同1.0%)など幅広い品目が4月の水準を下回った。一方、パーソナルケア(同7.7%)は前月から上昇した。
インド準備銀行(RBI)の金融政策委員会(MPC)は6月7日の定例会合で主要政策金利を8 回連続で据え置くことを決定した。インフレ率は今後ベース効果により7-9月期に一時的に低下してインフレ目標の中央値(+4%)を下回るが、その後反転すると予想されている。RBIは一時的なインフレの鈍化を受けて直ぐに金融緩和を実施することはなく、その後に反転上昇しても目標水準の4%でとどまると確信できたタイミングで、金融政策を転換するとの見方を示している。先行きは天候不順による食品インフレの懸念がある一方、南西モンスーンの降雨量が予測通り平年並みとなり食品インフレ圧力が緩和される可能性があるなど上下双方向にリスクがあり、不確実性は大きい状況が続いている。食品インフレが緩和する兆しがみえれば10月のMPCで利下げサイクルに転換するだろう。
インド準備銀行(RBI)が隔月で公表する家計のインフレ期待調査によると、24年5月家計のインフレ期待2(中央値)は3ヵ月先と1 年先がそれぞれ9.2%(3月から0.2%ポイント上昇)、9.9%(3月から0.1%ポイント上昇)となり、それぞれ若干上昇した(図表4)。インフレ期待が上昇したのは、4~6月に実施された総選挙が影響した可能性がある。選挙期間中は政治的・経済的な不確実性が高く、一部の必需品の価格が上昇しやすいためだ。もっとも家計のインフレ期待は3ヵ月先が一年先を依然下回って推移しており、短期的なインフレ警戒感は和らいでいる。
1 Bloomberg集計の中央値。
2 実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年06月13日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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