2024年06月11日

グローバル株式市場動向(2024年5月)-半導体関連銘柄を中心に幅広く上昇

金融研究部 准主任研究員・サステナビリティ投資推進室兼任 原田 哲志

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1――半導体関連銘柄を中心に幅広く上昇

2024年5月、グローバル株式市場は上昇した。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が再び高まったことや、主要半導体企業の決算が市場予想を上回ったことなどが株式市場の上昇要因となった。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)のリターンは2024年5月 +4.4%(米ドル建グロス配当込み)1、過去1年(2023年6月-2024年5月)では+24.1%となっている(図表1)。

先進国、新興国ともに上昇したが、先進国が新興国よりも大きく上昇した。先進国(MSCI  World Index)が+4.5%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+0.6%となった(図表2)。
図表1 世界株指数の推移/図表2 先進国・新興国指数の推移
グロース・バリューでは、グロース指数(MSCI ACWI Growth Index)が+5.1%、バリュー指数(MSCI ACWI Value Index)が+3.0%とグロース優位となった(図表3)。企業規模別では、大型株(MSCI ACWI Large Cap Index)が+4.4%、中型株(MSCI ACWI Mid Cap Index)が+2.5%、小型株(MSCI ACWI Small Cap Index)が+4.0%と大型株がやや優位となった (図表4)。
図表3 グロース・バリュー指数の推移/図表4 企業規模別指数の推移
 
1 以下、特に断りのない限りリターンは米ドル建グロス配当込みを示す。

2――国・業種別の動向

2――国・業種別の動向

国別に見ても多くの国で上昇となった(図表5)。エジプト(+11.6%)、オーストリア(+9.7%)、チェコ(+9.6%)がリターンが高かった。一方で、サウジアラビア(▲7.5%)、インドネシア(▲6.2%)、フィリピン(▲6.1%) がリターンが低かった。主要国について見ると、米国(+4.8%)、中国(+2.4%)、ドイツ(+4.8%) 、日本(+1.3%)となった。

米国は、利下げ期待の高まりや半導体関連企業の好調な決算から上昇した。ドイツでも欧州中央銀行(ECB)による利下げ期待から過去の最高値を更新する上昇が続いている。

一方で、日本では長期金利が上昇したことや企業の保守的な業績見通しが重石となり比較的小幅な上昇にとどまった。中国は5月上旬には上昇したが、下旬は不動産市場の先行き不安などから不動産関連銘柄を中心に下落した。

エジプトでは、3月に当局が為替相場を為替相場を市場に委ねる方針に転換して以来株式市場は下落が続いていたが5月は上昇に転じた。サウジアラビアは原油価格の低下などから下落した。
図表5 各国の株式市場のリターン
業種別に見ると、 半導体・半導体製造装置(+14.3%)、テクノロジー・ハードウェアおよび機器(+8.8%)、公益事業(+7.2%)のリターンが高かった。一方で、 消費者サービス(▲1.8%)、自動車・自動車部品(▲1.2%)、エネルギー(+0.0%) のリターンが低かった(図表6)。

半導体関連企業は半導体需要の高まりによる好調な決算を背景に上昇が続いている。
図表6 グローバル株式市場の業種別リターン

3――世界の主要企業の株価動向

3――世界の主要企業の株価動向

世界の主要な企業の株価は幅広く上昇した (図表7)。時価総額上位30位の企業では、エヌビディア(+26.9%) 、アップル(+13.0%)、コストコホールセール(+12.0%)のリターンが高かった。一方で、トヨタ自動車(▲6.3%)、サムスン電子(▲5.1%)、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(▲3.6%) のリターンが低かった。エヌビディアは5─7月の売上高見通しが市場予想を上回ったことが好感された。トヨタ自動車は2025年3月期の純利益について前期比27.8%減の3兆5700億円と市場予想を下回る見通しを示したことが嫌気された。
図表7 世界の主要企業の株価動向

4――今後の見通しと注目されるテーマ

4――今後の見通しと注目されるテーマ

グローバル株式市場は前月4月は下落していたが、5月は反発した。5月16日、国連経済社会局(UN DESA)は「世界経済状況・予測」の2024年中間報告書を公表した。この中で、2024年の世界の経済成長率について2.7%と前回見通しから0.3ポイント引き上げている。報告書では、主要国は失業率を上昇させることなくインフレ率を低下させたことで景気後退を回避したと指摘している。ただし、アフリカやラテンアメリカ諸国での高インフレや借り入れコストの上昇、中東諸国などでの紛争などのリスクを指摘している。

生成AIサービスの進展による半導体需要の高まりなどが今後も関連企業の業績を拡大することが期待される一方で、こうしたリスクに注意が必要だ。今後のグローバル株式市場の動向を引き続き注視したい。
 
 

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(2024年06月11日「基礎研レター」)

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金融研究部   准主任研究員・サステナビリティ投資推進室兼任

原田 哲志 (はらだ さとし)

研究・専門分野
資産運用、ESG

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
         大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
    2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)

    【加入団体等】
     ・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・修士(工学)

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