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イメージする更年期症状は、実際の症状と結構違う~実際はホットフラッシュやイライラばかりではない

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――はじめに
そこで、ニッセイ基礎研究所では、2024年3月に、20~59歳の女性を対象に、月経随伴症候群や女性の更年期症状に関する調査を行った2。今回は、その中から、更年期症状を自覚したことがない人がイメージする更年期症状と、実際の更年期症状がどれほど違うのかに注目して調査結果を紹介する。
1 村松容子「女性の更年期症状と就労」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2024年3月26日):https://www.nli-research.co.jp/files/topics/78024_ext_18_0.pdf?site=nli
2 ニッセイ基礎研究所「女性の健康に関する調査」。全国の20~59歳の女性を対象とするインターネット調査。有効回答数3000。年齢階層別(5歳ごと)の配偶関係を2020年の国勢調査の分布に近づけた他、有職(正規・その他)・無職・学生の割合を実態に合うよう回収した。
2――更年期症状の自覚状況
まず、更年期症状による医療機関受診等状況を尋ねた。その結果、「医療機関への受診により、治療を受けたことがある/治療を受けている」「別の病気を疑って医療機関を受診したら、更年期障害である可能性を指摘された3」等、医療機関に相談をしていると思われる人は、全体でそれぞれ5.4%、0.9%で合わせて6.3%だった。また、「医療機関を受診はしたことがないが、医療機関に相談をすると良いかもしれないと思う症状がある」「医療機関を受診するほどではないが、思い当たる症状があった/ある」等、医療機関を受診していないが、何等かの症状を自覚している人は、全体でそれぞれ3.7%、16.0%で合わせて19.7%だった。「自分では気づかなかったが、周囲からいわれたことがある」が1.1%、「その他」が1.3%、「考えたこと/疑ったことはない」が71.6%だった。
年齢による差は大きく、50~59歳では、医療機関に相談をしていると思われる割合は10.4%、医療機関を受診していないが、何等かの症状を自覚している割合は28.6%、「考えたこと/疑ったことはない」は57.9%だった。ただし、20~29歳でも、3.6%が医療機関に相談、8.0%が何等かの症状を自覚しており、年齢による差は大きいものの20代であっても症状がある人もいる。
3 質問票においては、月経随伴症状と更年期症状それぞれについて、「別の病気を疑って医療機関を受診したら、月経随伴症状やPMS、更年期障害である可能性を指摘された」という選択肢を用意したが、この2つの症状を混同して回答することがないようこの2つの症状を併記する等の工夫を行った。そのため、ここでは、月経随伴症状やPMSではなく更年期障害の可能性を指摘されたと解釈した。
自覚者が「更年期症状として経験したことがある症状」と、非自覚者が「イメージする更年期症状」を比較した。(図表2)。
更年期症状自覚者が更年期症状として自覚したことがある症状としては「疲れやすい」が51.2%と、半数を超えてもっとも高い。次いで「肩こり、腰痛、手足の痛みがある(47.9%)」「寝つきが悪い、または眠りが浅い(46.4%)」「怒りやすく、すぐイライラする(41.8%)」が続く。一方、非自覚者がイメージする症状としては、「顔がほてる(41.3%)」、「汗をかきやすい(38.4%)」が高く、いわゆるホットフラッシュの印象が強い。次いで、「怒りやすく、すぐイライラする(34.0%)」が続き、これまでの3つの症状だけが3割を超えていた。4番目に高い「くよくよしたり、憂うつになることがある」は18.8%と、3番目に高い「怒りやすく、すぐイライラする」より10ポイント以上低く、上位3つの症状にイメージが偏っているようだ。
非自覚者がイメージするこの3つの症状に限れば、自覚者も4割前後が経験しており、非自覚者のイメージが近いと言えるかもしれない。しかし、それ以上に「疲れやすい」「肩こり、腰痛、手足の痛み」等を経験しており、自覚者が経験したことがある症状と合致していない症状が多い。
3――更年期に起きうる症状は多種多様
更年期症状として経験した割合が高い「疲れやすい」「肩こり、腰痛、手足の痛み」は、更年期以外にもあり得る症状で、更年期症状としてイメージしてきた症状と異なるため、本人も、それが更年期症状であると気づきにくい可能性が考えられる。更年期症状にはどういったものがあり得るか、知っておく必要がある。「疲れやすい」や「肩こり、腰痛、手足の痛みがある」「寝つきが悪い、または眠りが浅い」などは、疲労などを要因とするものであれば、身体を休めたり、生活習慣を見直すことやストレッチで解消してきるかもしれないが、仮にその症状が更年期症状であるとすれば、身体を休めるだけでなく、医療機関で適切な治療を行う方が早期に症状を軽減できる可能性がある。今回の調査では、40~50歳代で、何らかの症状を自覚していても医療機関を受診していたのは1/4程度に留まっていたが、日々の生活に影響があるようであれば、医療機関を受診することを考慮するのが良いだろう。
また、今回の調査では、女性のみを対象としているが、男性を含めて、周囲の人々がイメージする更年期症状も今回の結果の非自覚者がイメージする症状と近いと考えられる。女性が自分の体調不良を周囲に訴えたり、周囲の人が医療機関の受診を勧める場合に、症状に対するイメージに偏りがあることで話をしづらかったり伝わりにくい可能性も考えられる。女性自身はもちろん、周囲の人も、更年期症状は多様であることを知っておくことが肝要だろう。
(2024年04月30日「基礎研レター」)
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- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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