2024年04月15日

インド消費者物価(24年3月)~3月のCPI上昇率は3ヵ月連続で低下

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が4月12日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、24年3月のCPI上昇率は前年同月比4.9%と、前月の同5.1%から低下(図表1)、また事前の市場予想1(同4.9%)と一致する結果だった。
 
地域別の上昇率をみると、都市部は前年同月比4.1%(前月:同4.8%)と低下した一方、農村部は同5.4%(前月:同5.3%)と小幅に上昇した。
3月のCPIの内訳をみると、食品と燃料・電力、コアCPIがそれぞれ低下した。

まず食品は前年同月比8.5%(前月:同8.7%)と小幅に低下した(図表2)。食品のうち、価格変動の大きい野菜(同28.2%)は大幅な増加が続いた。野菜価格は7-8月に急上昇して9-10月に一旦低下したが、11月以降は再び高騰している。インドでは日常的に必須な野菜とされるジャガイモとタマネギの価格はそれぞれ前月比15.5%、同1.3%と上昇した一方、トマトの価格が同▲2.6%と下落した。野菜のほか、豆類(前年同月比17.7%)や香辛料(同11.4%)、穀物製品(同8.4%)の価格が高止まりした。一方、食用油(同▲11.7%)の価格下落が続いたほか、牛乳・乳製品(同3.4%)と加工食品(同3.6%)、果物(同1.9%)が落ち着いた値動きとなった。

燃料・電力は前年同月比▲3.2%となり2月の同▲0.8%から更に低下した。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.2%(前月:同3.3%)と、低下基調が続いており過去最低水準に落ち込んだ。教育(同4.7%)や衣服・靴(同3.0%)、住宅(同2.8%)、家庭用品・サービス(同2.7%)、輸送・通信(同1.5%)など幅広い品目が2月の水準を下回った。一方、パーソナルケア(同6.0%)と娯楽(同2.8%)は前月から上昇した。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
3月のCPI上昇率は3カ月連続で低下し、インド準備銀行(RBI)の物価目標の許容範囲である+2%~6%内に収まっているが、未だ中央値の4%を上回って推移している(図表3)。今回のCPIの結果はRBIの政策判断に影響を及ぼすほどの結果ではないだろう。

インド準備銀行(RBI)の金融政策委員会(MPC)は4月5日の定例会合で主要政策金利を7回連続で据え置くことを決定した。国内経済は旺盛な投資により高成長が続いているが、インフレ率は低下傾向にあり、ピークを過ぎたとの見方が示された。インフレ基調は軟化しているとはいえ、予期せぬ天候不順による食品インフレの懸念や、地政学的リスクの高まりによる油価上昇といった不確実性が残っている。RBIが米国連邦準備制度理事会(FRB)に先行して金融緩和に舵を切る可能性は低そうだ。
 
インド準備銀行(RBI)が隔月で公表する家計のインフレ期待調査によると、24年3月の家計のインフレ期待2(中央値)は3ヵ月先と1 年先がそれぞれ9.0%(1月から0.2%ポイント低下)、9.8%(1月から0.2%ポイント低下)となり、それぞれ小幅に低下した(図表4)。足元では3ヵ月先の家計のインフレ期待が先行して低下しており、短期的なインフレ警戒感は和らいでいる。また一年先の家計のインフレ期待もごく緩やかに低下しており、3月は新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まって以来の1桁台に低下した9月の水準を下回った。
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標/(図表4)インフレ率と家計のインフレ期待
 
1 Bloomberg集計の中央値。
2 実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2024年04月15日「経済・金融フラッシュ」)

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