- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 資産運用・資産形成 >
- 資産形成 >
- 新NISA、50代などからの資産形成はどうしたら良いのか-新NISAをどう活用すれば良いのか。まだ間に合うのか
2024年03月07日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
50代以上の人は一定程度以上の貯蓄が積み上がっていると考えられる。このレポートでは、こういった方々を対象に、過去のデータに基づく試算を行った結果から、新NISA等を活用して、どのような投資対象を選べば良いのかを考えたい。
1―一括投資したらどうなるのか
投資期間が5年、10年、15年と長くなるにつれ、最終時価残高の平均値は当然ながら大きくなる。投資期間15年で最終時価残高の平均値の大きい順にランキングすると、米国株式型3,201万円、先進国株式型2,962万円、全世界株式型2,603万円、外国債券型2,128万円、国内株式型1,533万円、国内債券型1,448万円の順となる。投資元本1,000万円から、外国債券型が2倍以上、全世界株式型、先進国株式型、米国株式型が約3倍に増えている。この順番は投資期間5年と10年のランキングとほぼ同様である。
投資期間5年の場合、どの投資対象でも元本割れする可能性がある[図表2]。債券型は元本割れするケースの割合は7%、10%と小さいものの、時価上昇が見込めない。一方で、株式型は短期的価格変動が大きく、元本割れするケースの割合が大きい。株式型は短期間で様々なニュースによって株価が乱高下するため、最終時価残高の予想が難しいと言える。
投資期間5年の場合、どの投資対象でも元本割れする可能性がある[図表2]。債券型は元本割れするケースの割合は7%、10%と小さいものの、時価上昇が見込めない。一方で、株式型は短期的価格変動が大きく、元本割れするケースの割合が大きい。株式型は短期間で様々なニュースによって株価が乱高下するため、最終時価残高の予想が難しいと言える。
投資期間10年の場合、債券型は各ケースで最終時価残高の価格変動が小さく、リスクが限定的であるので、その分、時価の増加が小さくなる。米国株式型等の外国株式型は、運良く、株価低迷期に購入し、高い時期に売却することができれば、極めて高い資産形成金額が期待できる。一方、運が悪いと投資終了時期に金融危機等に遭遇し、投資元本が半分くらい毀損する可能性があるが、実は待てば時価が回復する可能性が高い。
投資期間15年の場合、国内株式型以外は元本割れするケースがなくなる。最終時価残高の平均値が最大の米国株式型を詳しく見てみよう。
最終時価残高の最大値が1億を超えている。このケースは2008年12月末に投資を開始して、直近の2023年12月末に投資を終了しているものである。
投資期間15年だと、最悪のケースでも1,257万円であり、元本の1,000万円を超えている。米国株式型への投資では、確かに価格変動は大きいものの、主に時価が増加する方向での価格変動なので、むしろ、高い時価残高になる楽しみが大きいと言える。
一方で、国内株式型は、試算したケースの40%が「日本バブル崩壊以降」の長期低迷の影響を受け、2012年末からのアベノミクスによる量的・質的金融緩和政策などでの価格上昇の恩恵を受けていないため、15年間という長い期間投資しても元本割れケースの割合が高い状態が続いている。但し、国内株式型は2012年末からのアベノミクス以降、外国株式並みの上昇となっており、それ以前と大きく投資特性が変わったと見ることもできる。従って、今後の日本株式の投資判断では 過去のデータによる試算結果のみで判断すべきでない点は注意が必要である。
投資期間が15年という十分に長い場合でも、債券型は価格変動が小さいため、大きな時価上昇を期待することが難しい。価格変動が小さいということは必ずしも良いこととは言えないのである。
それに対して、株式型は価格変動が大きいため、最終時価残高がかなり高くなる可能性がある。つまり、価格変動は確かにリスクではあるものの、けっして悪いこととは限らないと言える。
投資期間15年の場合、国内株式型以外は元本割れするケースがなくなる。最終時価残高の平均値が最大の米国株式型を詳しく見てみよう。
最終時価残高の最大値が1億を超えている。このケースは2008年12月末に投資を開始して、直近の2023年12月末に投資を終了しているものである。
投資期間15年だと、最悪のケースでも1,257万円であり、元本の1,000万円を超えている。米国株式型への投資では、確かに価格変動は大きいものの、主に時価が増加する方向での価格変動なので、むしろ、高い時価残高になる楽しみが大きいと言える。
一方で、国内株式型は、試算したケースの40%が「日本バブル崩壊以降」の長期低迷の影響を受け、2012年末からのアベノミクスによる量的・質的金融緩和政策などでの価格上昇の恩恵を受けていないため、15年間という長い期間投資しても元本割れケースの割合が高い状態が続いている。但し、国内株式型は2012年末からのアベノミクス以降、外国株式並みの上昇となっており、それ以前と大きく投資特性が変わったと見ることもできる。従って、今後の日本株式の投資判断では 過去のデータによる試算結果のみで判断すべきでない点は注意が必要である。
投資期間が15年という十分に長い場合でも、債券型は価格変動が小さいため、大きな時価上昇を期待することが難しい。価格変動が小さいということは必ずしも良いこととは言えないのである。
それに対して、株式型は価格変動が大きいため、最終時価残高がかなり高くなる可能性がある。つまり、価格変動は確かにリスクではあるものの、けっして悪いこととは限らないと言える。
2―新NISA等での資産形成
一括投資で5年、10年、15年運用した結果を見てきたが、実際に、50代など投資期間があまり長くない人は新NISA等の税制優遇制度を活用してどのような投資対象を選べば良いのか。この章では、50代前半、50代後半と60歳以上に分けて説明していきたいと思う。
【50代前半】
一般的に50代前半の人は今後も働く期間が比較的長いため、15年や20年の投資が可能だと考えられる。米国株式型、先進国株式型、全世界株式型への15年以上の一括投資は、元本割れにはならない可能性が高い。そのため、資金的に余裕がある人は、貯めてきた預貯金の一部を使って、米国株式や先進国株式インデックスに連動する商品に新NISAの成長投資枠で一括投資するのが良いと思う。
今から老後資金などの準備を始める人は新NISAのつみたて投資枠で無理のない範囲で米国株式型等の外国株式型商品の積立投資を開始して長期に継続することが大切である。その上で、株価が大きく下落した際にでも、成長投資枠で一括投資することが良いと思われる。
一般的に50代前半の人は今後も働く期間が比較的長いため、15年や20年の投資が可能だと考えられる。米国株式型、先進国株式型、全世界株式型への15年以上の一括投資は、元本割れにはならない可能性が高い。そのため、資金的に余裕がある人は、貯めてきた預貯金の一部を使って、米国株式や先進国株式インデックスに連動する商品に新NISAの成長投資枠で一括投資するのが良いと思う。
今から老後資金などの準備を始める人は新NISAのつみたて投資枠で無理のない範囲で米国株式型等の外国株式型商品の積立投資を開始して長期に継続することが大切である。その上で、株価が大きく下落した際にでも、成長投資枠で一括投資することが良いと思われる。
【50代後半】
50代後半の人は多くの場合、10年程度の投資が可能だと考えられる。米国株式型、先進国株式型、全世界株式型への10年程度の一括投資だと、まだ元本割れの可能性がある。既にある程度資産形成が出来ているものの、それほど経済的に余裕があるわけではない人、あまり投資経験がなく自信がない人、元本割れのリスクを取りたくない人は、預貯金、個人向け国債などを活用するか、新NISAを活用する場合でも、低リスクの商品に投資した方が良いと思う。
一方で、資金的にかなり余裕があり、投資経験が多少ある場合は、運悪く、投資終了時期に金融危機などに遭遇し、投資元本が一時的に毀損しても、時価回復まで待つことができるので、米国株式型等の外国株式型インデックス連動商品に新NISAの成長投資枠やつみたて投資枠を最大限活用し投資するのが良いと思う。
50代後半の人は多くの場合、10年程度の投資が可能だと考えられる。米国株式型、先進国株式型、全世界株式型への10年程度の一括投資だと、まだ元本割れの可能性がある。既にある程度資産形成が出来ているものの、それほど経済的に余裕があるわけではない人、あまり投資経験がなく自信がない人、元本割れのリスクを取りたくない人は、預貯金、個人向け国債などを活用するか、新NISAを活用する場合でも、低リスクの商品に投資した方が良いと思う。
一方で、資金的にかなり余裕があり、投資経験が多少ある場合は、運悪く、投資終了時期に金融危機などに遭遇し、投資元本が一時的に毀損しても、時価回復まで待つことができるので、米国株式型等の外国株式型インデックス連動商品に新NISAの成長投資枠やつみたて投資枠を最大限活用し投資するのが良いと思う。
【60歳以上】
60歳以上の人は定年等までだと5年程度の投資が可能だと考えられる。投資期間が5年だと、短期的な価格変動リスクにさらされるため、資金的に余裕があまりない人や投資経験があまりない人は、積極的にリスクをとることはお勧めしない。無理に新NISAを活用するより、預貯金や個人向け国債等、元本割れのない投資対象に投資したほうが無難である。
一方で、資金的に余裕がある人や投資経験が豊富な人は、年齢と関係なく、時価が回復するまで待てたり、経済状況の見極めができたりするので、新NISAの恩恵を最大限に生かすため、米国株式型等の外国株式型インデックス連動商品に新NISAの成長投資枠やつみたて投資枠を最大限活用して投資すれば良いと思う。
60歳以上の人は定年等までだと5年程度の投資が可能だと考えられる。投資期間が5年だと、短期的な価格変動リスクにさらされるため、資金的に余裕があまりない人や投資経験があまりない人は、積極的にリスクをとることはお勧めしない。無理に新NISAを活用するより、預貯金や個人向け国債等、元本割れのない投資対象に投資したほうが無難である。
一方で、資金的に余裕がある人や投資経験が豊富な人は、年齢と関係なく、時価が回復するまで待てたり、経済状況の見極めができたりするので、新NISAの恩恵を最大限に生かすため、米国株式型等の外国株式型インデックス連動商品に新NISAの成長投資枠やつみたて投資枠を最大限活用して投資すれば良いと思う。
3―まとめ
結論としては、50代になっても老後資金等の資産形成は十分間に合う。
今投資経験がなくても、投資を始めれば、投資の経験とか知識とかが身についてくるものだと思う。自信がなければ信頼できる金融機関やシンクタンク等でプロの意見を聞けば良い。新NISA等税制優遇制度を活用して、適切な投資対象を選んで、投資を始め成功体験を積んで、より効率良く資産形成が出来ることを心から祈念したい。そのためにも新NISAを十分活用して、なるべく早く投資を開始することをお勧めしたい。
今投資経験がなくても、投資を始めれば、投資の経験とか知識とかが身についてくるものだと思う。自信がなければ信頼できる金融機関やシンクタンク等でプロの意見を聞けば良い。新NISA等税制優遇制度を活用して、適切な投資対象を選んで、投資を始め成功体験を積んで、より効率良く資産形成が出来ることを心から祈念したい。そのためにも新NISAを十分活用して、なるべく早く投資を開始することをお勧めしたい。
(2024年03月07日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1856
経歴
- 【職歴】
2020年 日本生命保険相互会社入社
2021年4月 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
熊 紫云のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/18 | 長期投資の対象、何が良いのか-S&P500、ナスダック100、先進国株式型で良かった | 熊 紫云 | 基礎研レター |
2025/03/14 | 株式インデックス投資において割高・割安は気にするべきか-長期投資における判断基準について考える | 熊 紫云 | 基礎研レポート |
2025/01/22 | 日本の株式インデックスは長期投資に向いているのか~なぜ海外の主要な株式インデックスは上昇してきたのか | 熊 紫云 | 基礎研レポート |
2024/11/26 | 新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか~なぜ米国株式型が強かったのか~ | 熊 紫云 | ニッセイ景況アンケート |
新着記事
-
2025年03月19日
日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の12と予想、トランプ関税の影響度に注目 -
2025年03月19日
孤独・孤立対策の推進で必要な手立ては?-自治体は既存の資源や仕組みの活用を、多様な場づくりに向けて民間の役割も重要に -
2025年03月19日
マンションと大規模修繕(6)-中古マンション購入時には修繕・管理情報の確認・理解が大切に -
2025年03月19日
貿易統計25年2月-関税引き上げ前の駆け込みもあり、貿易収支(季節調整値)が黒字に -
2025年03月19日
米住宅着工・許可件数(25年2月)-着工件数(前月比)は悪天候から回復し、前月から大幅増加、市場予想も上回る
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【新NISA、50代などからの資産形成はどうしたら良いのか-新NISAをどう活用すれば良いのか。まだ間に合うのか】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
新NISA、50代などからの資産形成はどうしたら良いのか-新NISAをどう活用すれば良いのか。まだ間に合うのかのレポート Topへ