2024年02月13日

インド消費者物価(24年1月)~1月のCPI上昇率は3ヵ月ぶりに低下も、野菜価格の高騰続く

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が2月12日に公表した消費者物価指数によると、24年1月の消費者物価(以下、CPI)は前年同月比5.1%と、23年12月の同5.7%から低下して3カ月ぶりの低水準となった(図表1)。事前の市場予想1(同5.0%)とほぼ一致する結果であった。

地域別の上昇率をみると、都市部は前年同月比4.9%(前月:同5.5%)、農村部は同5.3%(前月:同5.9%)となり、それぞれ低下した。

1月のCPIの内訳をみると、燃料・電力の下落に加えて、食品価格が低下した。

まず食品は前年同月比8.3%と、高い伸びが続いたが、前月の同9.5%から低下した(図表2)。食品のうち、価格変動の大きい野菜(同27.0%)は前月の同27.6%に続いて大幅に増加した。野菜価格は7-8月に急上昇して9-10月に一旦低下したが、11月以降は再び高騰している。1月はタマネギとトマトの価格がそれぞれ前月比▲8.2%、同▲25.3%と下落したものの、オクラとニンニクの価格がそれぞれ同17.2%、同10.5%と大きく上昇した。野菜のほか、豆類(前年同月比19.5%)や穀物製品(同7.8%)、香辛料(同16.4%)、果物(8.7%)の価格が高止まりした。一方、食用油(同▲15.0%)の価格下落が続いたほか、牛乳・乳製品(同4.6%)と加工食品(同4.0%)が落ち着いた値動きとなった。

燃料・電力は前年同月比▲0.6%となり、12月の同▲1.0%に続いて低迷した。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.6%(12月:同3.9%)となり、低下基調が続き50カ月超ぶりの低水準となった。パーソナルケア(同5.9%)や保健(同4.8%)、衣服・靴(同3.4%)、住宅(同3.2%)、家庭用品・サービス(同3.1%)、娯楽(同2.9%)など幅広い品目が12月の水準を下回った。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
インド準備銀行(RBI)が隔月で公表する家計のインフレ期待調査によると、24年1月の家計のインフレ期待2(中央値)は3ヵ月先と1 年先がそれぞれ9.2%(11月から0.1%ポイント上昇)、10.0%(11月から0.1%ポイント低下)となり概ね横ばいの結果だった(図表3)。9月は1年先の家計のインフレ期待が新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まって以来の1桁台に低下したが、その後は下げ止まっている。過去とほぼ同様に期待インフレ率と実際のインフレ率は乖離したままとなっており、乖離幅は4%台で過去3年平均と概ね同水準にある。
インド準備銀行(RBI)の金融政策委員会(MPC)は2月8日の定例会合で主要政策金利を6回連続で据え置くことを決定した。コアインフレ率は低下傾向が続き約4年ぶりの低水準にあるものの、RBIは食品インフレの懸念や原油価格の不確実性、そして国内経済の高成長による需要面からの上昇圧力を考慮してタカ派的な姿勢を維持している。

1月のCPI上昇率はインド準備銀行(RBI)の目標レンジである2─6%内にあるが、物価目標の中央値(4%)を上回って推移している(図表4)。RBIのインフレ予測では24年1-3月と4-6月が前年同期比5.0%と横ばい圏で推移し、7-9月に同4.0%まで低下するものの、ベース効果による一時的な動きを予測している。インドは財政再建が進展するなど過度なインフレに対する懸念が和らいでいるものの、悪天候の可能性から食品価格の見通しに不確実性が広がっており、2024年度も暫くの間は利下げに舵を切れない展開が予想される。
(図表3)インフレ率と家計のインフレ期待/(図表4)消費者物価上昇とインフレ目標
 
1 Bloomberg集計の中央値。
2 実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2024年02月13日「経済・金融フラッシュ」)

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