2024年01月30日

マイナ保険証の利用状況と意向~マイナ保険証登録者・マイナポータルを介した健診・受診記録を閲覧者はどのような人か

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――はじめに

国が進めている医療DXにおいて、マイナンバーカードを利用する場面は大きく分けて2つある1。1つ目は医療機関や薬局などで利用することで、加入資格を確認するとともに、患者が同意をすればこれまでに受けた健診の結果や診療情報、薬剤情報をその医療機関や薬局等で使用することができる。2つ目は自分のパソコンやスマホで、マイナポータルを介して自身の健診結果や予防接種の情報、医療機関等における診療・薬剤情報を閲覧するために使う。こういった使用のためには、自分で保険証をマイナンバーカードに紐づけをする必要がある。しかし、現状ではマイナンバーカードを受け取ってからも紐づけをしていない人や、紐づけをしていても医療機関で使用していない人、マイナポータルで健診結果や診療・薬剤情報を閲覧したことがない人が多いようだ。

2023年12月に、これまでの健康保険証は2024年12月2日に廃止することが決まったが、どういった人がマイナンバーカードと保険証の紐づけを終えていて、どういった人がマイナポータルで健診結果や受診記録を閲覧することに関心を持っているのだろうか。本稿では、2023年6月にニッセイ基礎研究所が行ったインターネット調査の結果を紹介する。
 
1 村松容子「データヘルス改革による健康・医療データ利活用推進の状況」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2023年1月11日)

2――マイナンバーカードの保険証としての利用状況

2――マイナンバーカードの保険証としての利用状況~国の公表資料から

2023年12月末時点でマイナンバーカードは累計でおよそ9905万枚が交付された。死亡や有効期限切れにより廃止された枚数を除くと9150万枚(2023年1月人口の約73.0%にあたる。)が保有2されている。健康保険証への登録は12月半ばでおよそ7180万件と、交付枚数の7割強が済ませている3

また、保険医療機関・薬局全体の9割近くが既にオンライン資格確認を開始している4が、医療機関においてマイナンバーカードで受診したのは727万件で、2023年11月で全受診の4.3%5に留まる。マイナンバーカードで受診した割合は、マイナンバーカードを使った方が初診料、再診料が安くなった2023年4月をピークとして、それ以降は低下している(図表1)。マイナンバーカードを持参し、閲覧に同意をした患者の194万件で特定健診情報、295万件で薬剤情報、271万件で診療情報の閲覧が行われていた。マイナンバーカードを利用した件数との比をみると、特定健診の結果と診療情報の閲覧はやや上昇しているが、薬剤情報の閲覧は上昇していない(図表2)。

マイナンバーカードの普及と保険証との紐づけが進み、カードリーダーを置く病院が増えたことで、当初と比べれば利用は増えてはいるが、活発に利用されるようになってきている様子はない。
図表1 マイナンバーカード利用率/図表2 閲覧率
 
2 総務省「マイナンバーカード交付状況について」より。保有枚数とは、マイナンバーカード交付枚数(およそ9905万枚)から、死亡や有効期限切れなどにより廃止された枚数を除いた枚数。
3 デジタル庁「マイナンバーカードの普及に関するダッシュボード(2023年12月22日時点)」(https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/mynumber_penetration_rate、2024年1月11日アクセス)
4 厚生労働省「オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)」(2023年12月24日時点)によると、保険医療機関・薬局全体の91.6%が準備を完了しており89.6%で運用を開始している。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08280.html、2024年1月11日アクセス)
5 厚生労働省「オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)」(2023年12月24日時点)
   オンライン資格確認のマイナンバーカード利用数/(マイナンバーカード利用数+従来の保険証利用数)で計算した。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08280.html、2024年1月11日アクセス)

3――"マイナ保険証"利用状況・意向

3――"マイナ保険証"利用状況・意向~インターネット調査から

マイナンバーカードと保険証の紐づけは、2021年3月に始まっており、本調査実施時点で十分に時間が経過していることや、これまでの保険証は、現在の方針どおりであれば、2024年秋には廃止されることが決まっていることを踏まえれば、現在、既に紐づけを終えている人、今後登録をする人、登録する予定はない人は、それぞれ、健康保険証の使い方、および医療サービスや情報セキュリティ等についての考え方が異なることが推測できる。

そこで、ニッセイ基礎研究所が2023年6月に実施した調査を使って、どういった人がマイナンバーカードと保険証の紐づけを終えていて、どういった人がマイナポータルで健診結果や受診記録を閲覧することに関心を持っているのかをみる。使用したのはニッセイ基礎研究所が2023年6月に実施した「生活に関する調査」の結果である。本調査では、消費者の価値観やライフスタイル、生活リスクに対する認識を確認するためにライフスタイルや生活行動、生活不安等幅広い質問を行っている。調査は全国の20~74歳の男女を対象に行ったインターネット調査で、回答数は2583件だった。本稿では、本調査のうち、健康保険に加入していることが確認できた2355件を使った。
図表3 マイナ保険証への登録状況(男女・年齢別) 1|保険証紐づけ状況
本調査において、マイナ保険証に登録(マイナンバーカードと保険証の紐づけ)をしたか尋ねたところ、「既に登録をした」と回答したのは69.5%だった。「まだ登録していないが登録するつもり」は11.1%、「登録する予定はない」は14.4%、「わからない・マイナンバーカードを受け取っていない」は5.0%だった(図表3)。

まず、性別・年齢別にみると、男女差は小さかったが、年齢が高いほど「既に登録をした」が高く、年齢が低いほど「登録する予定はない」が高かった。
次に、健康状態、医療機関等受診状況や、医療サービス、情報利用や情報セキュリティに対する考え方別に紐づけ状況を対象者全体と比較すると(図表4)、健康状態が良い人、定期的な投薬・通院を要する持病がある人、自分の健康状態をいつも把握している人で「既に登録をした」が高かった。一方、健康でない人で「わからない・マイナンバーカードを受け取っていない」が、何かするときには、いろいろ情報を収集して研究する人で「まだ登録していないが登録するつもり」が、それぞれ高かった。なお、情報化や技術の進歩についていけないことや個人情報が流出することに不安を感じるかどうかでは、登録状況に大きな差はなかった。
図表4 マイナ保険証への登録状況(考え方別)
2|マイナポータルを使った健診結果や受診記録等閲覧への関心
続いて、国によるマイナポータルを使った健康診断や受診記録の閲覧について、これまでの利用経験と関心を尋ねたところ、「すでに利用している」と回答したのは1.4%だった。「関心がある計(関心がある+やや関心がある)」は18.0%で、半数強が「関心がない計(あまり関心がない+関心がない)と回答した。(図表5)。
図表5 マイナポータルでの健診結果・受診記録閲覧への関心(男女・年齢別) 性別・年齢別にみると、男女差は小さかったが、年齢別にみると、全体と比べて20~34歳で「関心がある計」が、35~49歳で「関心がない計」が、50歳以上で「どちらともいえない」が、それぞれ有意に高かった。20~34歳は、「関心がない計」も6割弱と他年代と比べて高かったが、「関心がある計」も2割を超えて他年代よりも高く、人によって差があるようだった。
マイナポータルを使った健診結果や受診記録の閲覧への関心状況についても、健康状態、医療機関等受診状況や、医療サービス、情報利用や情報セキュリティに対する考え方別にみると(図表6)、自分の健康状態をいつも自分で把握している人、情報化や技術の進歩についていけないことへの不安がない人で「すでに利用・契約している」の割合が高かった。また、定期的な投薬・通院を要する持病がある人、オンライン診療・処方の利用がある人、自分の健康状態をいつも自分で把握している人で「関心がある計」が高かった。手厚い医療サービスをうけられないことや医療ミスや院内感染による被害をうけることといった医療サービスに対して不安を感じている人や、情報化や技術の進歩についていけないこと、個人情報が流出することに対して不安を感じている人も「関心がある計」が高かった。何かするときには、いろいろ情報を収集して研究する人でも、「関心がある計」が高かった。
図表6 マイナポータルでの健診結果・受診記録閲覧への関心(考え方別)
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

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【マイナ保険証の利用状況と意向~マイナ保険証登録者・マイナポータルを介した健診・受診記録を閲覧者はどのような人か】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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