2024年01月30日

日本の母子保健 低出生低体重児(1)-2019年の低出生体重児が占める割合は9.4%、1975年から4.3%ptも上昇-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛

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1――はじめに

日本では、出産時の妊産婦死亡率や新生児死亡率が低く1、諸外国と比較して最も安全なレベルの周産期医療体制を確立している。

一方で、2,500g未満で出生する低出生体重児の割合が1980年代頃から増加傾向にあり、特に1,000g未満で出生する超低出生体重児の出生数はここ35年間で約2倍にまで増加している2

国立成育医療センターの森崎室長らの研究グループは、低出生体重は成人後期の生活習慣病との関連性を明らかにしており3、また、環境省のエコチル調査では、妊娠前の母体の体格(BMI等)が低出生体重児の出現頻度に関与する研究結果をまとめており4、母体となりうる成人期の健康管理の重要性が伺える結果となっている。

そこで本稿では、まず低出生体重児の現状を整理すべく、最新の母子保健統計情報を基に、低出生体重児の出生数や割合について示し、次稿では、母親の年齢や、単産/複産などの出生児数別、子の性別などの属性による特徴を分析した結果を示す。
 
1 Unicef(2023)「世界子ども白書2023」https://www.unicef.or.jp/sowc/data.html
表3:母親と申請時の健康指標より、日本の妊産婦死亡率は4.0、表2子どもの死亡率に関する指標より、2021年日本の新生児死亡率は1.0であることが示されている。
2 厚生労働省平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「低出生体重保健指導マニュアル」(平成30年3月)より、1980年代頃から低出生体重児の割合が増加傾向にあることを指摘。
3 国立成育医療研究センター(2023)“Association between birthweight and prevalence of cardiovascular disease and other lifestyle-related diseases among Japanese population: JPHC-NEXT Study” Journal of Epidemiology,  
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20230045/_pdf/-char/en
4 エコチル調査北海道ユニットセンター(2022)“Severity of low pre-pregnancy body mass index and perinatal outcomes: the Japan Environment and Children’s Study” BMC Pregnancy and Childbirth volume 22, Article number: 121 (2022).

2――低出生体重児の定義と現状

2――低出生体重児の定義と現状

1低出生体重児の定義とは?
まず、低出生体重児の定義について整理する。出生時の出生体重が、2,500g以上4,000g未満を正出生体重児と分類するのに対し、2,500g未満を低出生体重児、また1,500g未満を極低出生体重児、さらに1,000g未満を超低出生体重児と分類される(参照:図表1)。

尚、低出生体重児の法的根拠は、母子保健法第6条「未熟児とは、身体の発育が未熟のまま出生した乳幼児であって、正常児が出生時に有する諸機能を得るまでに至るまでのものをいう」に基づくものであり、医学的な分類法を問わず、各臓器の機能が子宮外の生活に適応できるだけの十分な成熟度に達していない場合に未熟児と呼んでいたことに由来する。

しかし、現代では、図表1に示す通り、出生体重から定義する分類法や、在胎週数に応じた身体サイズから定義する分類法、出産週数から分類する方法などが存在しており、客観的根拠に基づく出生児の分類法にて呼称されるようになっている。
図表1:出生児の分類法
2低出生体重児の現状
次に、低出生体重児の現状についてデータを用いて整理する。厚生労働省の令和3年度「出生に関する統計の概況」5によると、出生時の平均体重(単体)は、2019年に3.02㎏であり、統計開始時1975年の3.20㎏と比べると0.18㎏減少している。

また、先の概要データを基に低出生体重児総数の年次推移を図表2の折れ線グラフ(赤線)に示した。出生時の体重が2,500g未満の低出生体重児の数は、2019年において81,462人と、出生総数865,239人うち9.4%を占めていることが分かる。低出生体重児のうち、出生体重が1,500g未満の極低出生体重児は、2019年において6,467人と出生総数のうち0.7%、出生体重が1,000g未満の超出生体重児は、2,646人と出生総数のうち0.3%を占めていた。

そして1975年と比較すると、出生体重2,500g以下の低出生体重児の占める割合は、1975年の5.1%からおよそ4.3%ptも上昇していることが明らかとなった。
図表2:低出生体重児総数(人)の年次推移
 
5 厚生労働省(2023)「令和3年度出生に関する統計の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo07/index.html 

3――まとめ

3――まとめ

本稿では、低出生体重児の現状を明らかにすることを目的に、定義と最新データを示した。

低出生体重児の分類法では、出生体重児2,500g以下を低出生体重児と分類しており、出生体重1,500g以下を極出生体重児、出生体重児1,000g以下を超低出生体重児と呼称している。

また、厚生労働省の人口動態統計のデータによると、出生体重2,500g未満の低出生体重児は、2019年において81,462人と、出生総数865,239人うち9.4%を占め、1975年の5.1%からおよそ4.3%ptも上昇していることが明らかとなった。

次稿では、厚生労働省の人口動態統計のデータを用いて、子どもの性別や出生児数(単産・複産)による差異、母親の年齢別による属性別の特徴を整理する予定である。
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生活研究部   研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任

乾 愛 (いぬい めぐみ)

研究・専門分野
母子保健・高齢社会・健康・医療・ヘルスケア

経歴
  • 【職歴】
     2012年 東大阪市 入庁(保健師)
     2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了
         (看護学修士)
     2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
     2019年~大阪市立大学大学院 看護学研究科 研究員(現:大阪公立大学 研究員)

    【資格】
    看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者

    【加入団体等】
    日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会

(2024年01月30日「基礎研レター」)

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