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- ECB政策理事会-金利据え置きを決定、利下げ議論は時期尚早
2024年01月26日
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(質疑応答(趣旨))
- 先週、ダボスであなたは夏に利下げされるだろうと考えていると述べ、同僚も同じようなガイダンスをすでにしていた。本日の会合で、今朝のドイツの弱い経済データにも照らして、利下げのタイミングについての議論はなされたか。議論されていないのであれば、ダボスでの発言に関する補足はあるか、夏の利下げの可能性が高いか。それは少なくとも3月と4月ではないことを意味するのか
- 理事会のコンセンサスは、利下げ議論は時期尚早ということだった
- もう1点、我々が引き続きデータに依存し続けるというのも大多数のコンセンサスだった
- 紅海輸送の混乱といった地政学的リスクについて。あなたは供給のボトルネック再発がインフレに対する主要なリスク要因だと述べた。あなたの同僚であるホルツマン氏はこれらのリスクのため、24年の利下げが出来ないかもしれないと警告している。最近のこれらの地域の動向・緊張を踏まえて、理事会はより懸念を深めているか。もしリスクが顕在化したら、例えば、インフレ率が輸送費用やサプライチェーンの混乱のために再び上昇したら、どのように反応するのか
- 20年や21年と比較すれば、輸送能力が改善しているものの、費用・運賃は上昇している
- 大方の見方として、影響は緩やかだという合意があると考えている
- 全投入コストのうち、水運コストは1.5%をやや上回るにとどまる
- しかしながら、我々は細心の注意を払い、その動向を注視している
- 賃金データについて。賃金データは多数ある。実際に見ているのは何で、年間を通じて珍言データを見る事ができるが、カットオフポイントはあるのか
- 賃金は単位利益と単位労働コストの関係とともに注視している項目である
- よく言われるように、1人あたり雇用者報酬のような後ろ向きのデータもある
- 賃金トラッカーは随時、労使交渉の合意結果を更新している
- 労働市場のひっ迫度に関連して、インディードが収集している主にインターネットでの求人情報も重要である
- 賃金については、先行きを見ることが、簡単ではない
- 賃金トラッカーで追跡している従業員の40%は年末もしくは24年初の3か月間で契約が更新されるため、現在は未決定であり、今後数か月でこれらの情報がでてくる
- 「夏より前」の決定について。新しいスタッフ見通しが手に入る6月は良い時機だと思うか。もし、インフレ見通しが現在のものよりも低下すれば、利下げの根拠になるのではないか
- 我々はデータに依存しており、会合毎に決定している
- 現在、新しい情報は、総じて12月に示した中期的な見通しをほぼ辿っている
- 基調的なインフレ率も注視しており、広く低下していることが観察できる
- インフレ期待も見ており、短期・長期のいずれも2%目標に近づいている
- 春の後半まで発表されない賃金データに依存していることについて。6月までの利下げができないとすれば、利下げが遅すぎることになると思わないか。利下げに関する「時期尚早」の意味について説明して欲しい。理事会で利下げについて議論したということか
- これ以上、詳細に述べるつもりはない
- 言えることは、理事会では利下げ議論が時期尚早であるとのコンセンサスがあった、ということだけである
- 賃金の伸びについて、利下げの前に賃金上昇率が低下する必要がというのは、合理的な仮定か。あるいは安定するだけで良いのか。あなたが賃金データから見たいものは何か
- 賃金の伸びについては、1人あたり雇用者報酬や、妥結賃金の一時的な支払を含むものと含まないものの双方について、わずかな低下が観察できる
- 賃金伸び率はすでに低下している
- 我々が望んでいるのは、賃金上昇率が十分に利益を吸収することであり、その場合には、インフレを助長させず、2次的効果のリスクは起こらない
- インフレ率が低下する一方で、購買力が改善し、消費を刺激することが期待できるため、これは24年の回復を見込む一つの理由となっている
- 長期的な質問について。中立金利(neutral rate)はどこにあると見ているか。中立金利は過去数年間の危機によって押し上げられたと考えるか、あるいは不変なのか、低下したのか。見解はあるか
- 確信はないとうのが実際の答えであり、回答できない
- 中立金利に到達するまでは分からないだろう
- 成長率について。下振れリスクがあると述べたが、12月の見通し通りにディスインフレの経路が進むのであれば、成長についてもそうなのか。
- 今は1月であり、24年1-3月期が終了するのは3月で、次回3月会合での見通しを予想するのは完全に時期尚早であると考えている
- ECBはデータ次第ではあるが、市場の期待は依然として楽観的であり4月の利下げの可能性は低いか
- 政策軌道を評価するという点では、さらにディスインフレ過程が進んで、迅速かつ持続可能な2%目標の達成が十分に確信できるようになる必要がある
- 私は軌道と呼べるものについて少し示唆しているが、フォワードガイダンスではない
- 冒頭説明から域内価格圧力や単位労働コストについての言及を削除したのはなぜか
- 何が削除され、何が残ったかについて、過度にこだわるべきではないと考える
- 気付いたかもしれないが、我々は表現をより簡素化し、より少ない言葉で、ある意味より普通にしようとしている
- 職員組合が今週初に公表した調査結果が、総裁とって好ましくなかったことについて。職員を引き戻すための計画が何かありますか
- ECBでは多くの技術的に信頼できる方法による調査を実施している
- 典型的にはECBで働くことに満足しているかという問いであり、回答率は60%強で、80%の圧倒的大多数が、はい、としている
- ECBで働くことを友人に勧めたいかという問いに対しても、大多数の75%超の回答があった
- 自分の仕事に使命を感じているかとの質問には90%以上が、はい、と回答している
- 我々はこれらの技術的に妥当な回答に対して注意を払い、行動している
- インフレ率の乖離について。以前からそうであるが、いくつかの国ではインフレ率が2%を十分に下回っており、2%に引き下げるまでの道のりがある国もある。金融政策の伝達や利下げの時期に関する理事会の議論の観点から見て、その負担はどの程度か
- 不均一性、相違はユーロ圏に内在している問題であり、どのような論点や分野においても逃れられないものである
- 会合ではすべての中銀総裁が代表し、それぞれの国を念頭においているが、同時にユーロ圏全体も考慮してユーロ圏全体としての政策決定を実施している
- スプレッドについて。最近、国債の利回り格差が縮小している。これは良いニュースか。これを喜んでいるか、それとも将来の金利低下を想定して市場が先走っていると懸念しているか
- スプレッドは伝達の指標であり、注意深く見ているが、この点に関してこれ以上の判断を下すつもりはない
- (短期金利操作の)運用枠組み評価(monetary framework revision)に関する更新情報はあるか、ECBが今年に行う将来の決定において、どの程度重要となるか
- お伝えできるのは、非常に速いペースで作業が進んでいるとういこと
- 作業が進行中なので注意しなければならないが、春の終わり頃には完了するとみられる
- バランスシートの規模から始めて、理事会で決定するような枠組み原則を求められているわけではないので、必ずしも、短期的に重要な問題となるとは思わない
- FRBが銀行に対する緊急の流動性供給枠を失効させようとしているが資金調達環境の厳格化が見られているなかで、昨年経験したような金融システムの緊迫化が再度見られる懸念はあるか
- 米国市場については、判断を下すつもりはなく、FRBやSECやその他の監督機関が地域銀行レベルで何が起きているかを注視していることについて全幅の信頼を置いている
- 最新のPMIと紅海の緊張を考えたときに、23年10-12月期の成長率がどうなると考えるか。ユーロ圏が景気後退(recession)を避けるとの12月の見通しから変更はないのか
- 急激に回復するとは言わないが、回復の条件は整いつつある
- しかし、成長の弱さも認識しており、10-12月期にも当てはまる
- 景気後退については、2四半期連続のマイナスという技術的な方法もあるが、雇用など多くのデータが示すことに注意を払い、経済を理解する必要がある
- 先ほどの職員調査について。あたなに対する直接的な批判も見られた。これは妥当か、あなたがECB総裁である今後数年間、この批判にどのように対処するか
- 優秀な人々で構成されるこの組織を率いることをしている限り、私自身は無関係である
- イタリアのジョルジェッティ大臣が数日前に、金融政策がユーロ圏に景気後退をもたらすかもしれないと述べた。ジョルジェッティ氏でなくても、この種の懸念があちこちに見られるが、これに対するコメントはあるか
- 私はすべてのデータを見ている
- ハードデータは弱いが、PMIには安定かやや上向きの心強い数字が見られる
- 賃金について。おそらくECBは4月末にEurostatが公表する1-3月期の賃金の結果を見たいのだと理解しているが、間違っているか
- 我々はあらゆる種類のデータを見ており、公表日からいかなる結論も出すつもりはない
- 我々はあらゆる種類のデータを見ており、公表日からいかなる結論も出すつもりはない
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(2024年01月26日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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