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- コロナ禍明けの家計消費-外出型消費は回復傾向だが、全体では低迷が続く
2023年12月20日
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4――おわりに~賃上げや子育て支援策などでマインドがさらに上向き、消費へ結びつくことに期待
本稿では、総務省「家計調査」を用いて、二人以上世帯の消費動向について捉えた。その結果、消費全体としては低迷しているものの、コロナ禍で大幅に減った外出型消費(旅行やレジャー、外食、交通費、メイクアップ用品など)は、いずれも改善傾向を示していた。また、5類引き下げ以降で顕著に改善したというよりも、2022年頃から改善傾向が続いているものが多かった(しいて言えば、「飲酒代」は今年5月以降に改善傾向が比較的強まった)。一方で、「宿泊料」を除くと、いずれもコロナ禍前の水準を下回っており、テレワークの進展で外出行動が減少したことで需要そのものが弱まっている様子(外食や洋服など)や、物価高や円安で消費を抑制している様子がうかがえた(海外旅行やレジャーなど)。
また、コロナ禍の巣ごもり生活で支出が増えた中食(出前や冷凍調理食品など利便性の高さを求められる食事形態)やデジタル娯楽(電子書籍など)は、前者は世帯構造の変化(共働き世帯や単身世帯の増加)、後者はデジタル化の進展という中長期的な変化の土台があるために、5類引き下げ以降も堅調に推移していた。一方、内食(自炊)に関わる費目(各種食材)は減少傾向を示していた。
以上より、5類引き下げ以降も堅調な巣ごもり消費がある上、コロナ禍で大幅に減った外出型消費はいずれも改善傾向を示しているものの、物価高による消費抑制やコロナ禍の行動変容による需要の弱まり、供給側の制約などによって、大半の需要が戻り切っていないことで、消費全体としては低迷が続いていると言える。
一方で、今年1月以降、消費者マインド(半年先の見通しをたずねたもの)は上向いている(図表5)。また、構成指標を見ると、特に今年に入ってからは「雇用環境」や「収入の増え方」がマインドを牽引しており、コロナ禍で消費者マインドが急落する前の2020年2月と比べても、「雇用環境」(2022年2月39.8、2023年11月41.3で+1.5)や「資産価値」(同39.6、同40.7で+1.1)はコロナ禍前を僅かに上回るようになっている。
ニッセイ基礎研究所では、物価の上昇率を賃金の上昇率が上回り、実質賃金がプラスへ転じるのは2024年度後半との見通しを出している4。また、政府は、今月11日に「こども未来戦略」案にて、児童手当の所得制限撤廃や支給対象の拡大(18歳まで)、子ども3人以上の世帯に対しては第3子以降を3万円へ増額、大学授業料等の無償化などを示している。
冒頭で「使えるお金が増えないのであれば支出を抑制することは、消費者行動としては自然」であると述べた。逆に、賃上げや家計支援策などによって様々な方面から使えるお金が増えれば、現状の消費者マインドから見ても消費が動き出す期待は大きい。
また、コロナ禍の巣ごもり生活で支出が増えた中食(出前や冷凍調理食品など利便性の高さを求められる食事形態)やデジタル娯楽(電子書籍など)は、前者は世帯構造の変化(共働き世帯や単身世帯の増加)、後者はデジタル化の進展という中長期的な変化の土台があるために、5類引き下げ以降も堅調に推移していた。一方、内食(自炊)に関わる費目(各種食材)は減少傾向を示していた。
以上より、5類引き下げ以降も堅調な巣ごもり消費がある上、コロナ禍で大幅に減った外出型消費はいずれも改善傾向を示しているものの、物価高による消費抑制やコロナ禍の行動変容による需要の弱まり、供給側の制約などによって、大半の需要が戻り切っていないことで、消費全体としては低迷が続いていると言える。
一方で、今年1月以降、消費者マインド(半年先の見通しをたずねたもの)は上向いている(図表5)。また、構成指標を見ると、特に今年に入ってからは「雇用環境」や「収入の増え方」がマインドを牽引しており、コロナ禍で消費者マインドが急落する前の2020年2月と比べても、「雇用環境」(2022年2月39.8、2023年11月41.3で+1.5)や「資産価値」(同39.6、同40.7で+1.1)はコロナ禍前を僅かに上回るようになっている。
ニッセイ基礎研究所では、物価の上昇率を賃金の上昇率が上回り、実質賃金がプラスへ転じるのは2024年度後半との見通しを出している4。また、政府は、今月11日に「こども未来戦略」案にて、児童手当の所得制限撤廃や支給対象の拡大(18歳まで)、子ども3人以上の世帯に対しては第3子以降を3万円へ増額、大学授業料等の無償化などを示している。
冒頭で「使えるお金が増えないのであれば支出を抑制することは、消費者行動としては自然」であると述べた。逆に、賃上げや家計支援策などによって様々な方面から使えるお金が増えれば、現状の消費者マインドから見ても消費が動き出す期待は大きい。
4 斎藤太郎「2023~2025年度経済見通し-23年7-9月期GDP2次速報後改定」、ニッセイ基礎研究所、Weeklyエコノミスト・レター(2023/12/8)
(2023年12月20日「基礎研レポート」)
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経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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