コラム
2023年11月01日

曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その2)-円錐曲線(楕円、放物線、双曲線)が現れる場面-

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放物線や放物面が現れる場面(その2)

放物線は、もちろんその名が示すように、物を投げた時の軌跡に見られる。野球のボールを投げた時や打球の軌跡、バスケットボールのシュートの軌跡、放水した時や噴水の水の軌跡等が該当していることになる。もちろん、厳密には、空気抵抗がないという理想的な状況下では、ということになる。放物線運動は、水平方向には等速直線運動、垂直方向には鉛直投げ上げ運動をしている。放物線運動を示す式から、物を投げるときには、斜め45度に発射させたときに、最も遠くに飛ばすことができることを示すことができる7

なお、カンガルーが飛び跳ねる時やイルカが水上を飛び跳ねる時、これらも放物線運動になっている、と言われている。一方で、「虹」は、円錐の一部が観測される(即ち、観測者の眼には円錐曲線となる)形になっていて、その切り口は通常は楕円になるが、まれに放物線状や双曲線状に見えることがあるようだ。
 
7 なお、物体を投げる勢いを強めていけば、物体はやがて地球を周回する軌道に到達し、円軌道や楕円軌道を描くことになる。

放物線や放物面が現れる場面(その3)

放物線は左右対称で何となく安定した感じがあることから、生活に関連した多くの場面で、古くから、放物線やそれに類似した形が使用されてきている。

例えば、教会のステンドグラスのある窓は放物線状になっているし、建物の屋根には放物線状のものが多くみられる。東京タワーやエッフェル塔の下部アーチ等は放物線に近い形になっている。また、釣鐘は、厳密には放物線とはいえないかもしれないが、放物線に近い形になっている。

その他に、多くの美術品や工芸品等で放物線が使用されている。

双曲線

双曲線(hyperbola」は、2つの定点F1とF2からの距離の差が一定であるような点Pの軌跡から作られる曲線、のことをいう。この2つの定点が「焦点」と呼ばれ、2つの焦点を通る直線の垂直二等分線は「主軸」と呼ばれる。

双曲線は、以下の算式で示される。
双曲線の算式
このとき、2つの焦点F1とF2から双曲線上の点 P への距離の差 |F1P-F2P| は 2a となる。原点を双曲線の「中心」といい、2点(±a, 0) を双曲線の「頂点」という。

また、双曲線の漸近線は、y=±(b/a)x となる。
双曲線の漸近線
なお、双曲線といえば、多くの方々は「反比例の式」を思い出すであろう。この時

xy=a(a≠0)

と表される。これが上式のような形に表されることは、グラフを45°時計方向に回転させることで

x2/2a-y2/2a=1

と変形されることで確認できる。

具体的には、以下の図のようになる。
反比例の式 45°時計方向に回転

双曲面

双曲面(Hyperboloid)」は、以下の算式で表される二次曲面の一種で、「楕円双曲面 (elliptical hyperboloid)」とも呼ばれる。
一葉双曲面
あるいは
二葉双曲面
a = b であるとき、またそのときに限り(双曲線の回転体となるため)「回転双曲面(hyperboloid of revolution or circular hyperboloid)」と呼ばれる。
一葉双曲面図/二葉双曲面図

双曲線や双曲面が現れる場面

双曲面では、焦点からでた光や音は双曲面で反射して、他の焦点からでた光や音の直進する方向へ進む。この性質は、像を映したり集光するのに使うレンズや眼鏡などによく用いられる。

また、地球を含めた太陽系の惑星の軌道は、太陽の中心を焦点とした楕円軌道になっているが、彗星については、楕円軌道となる周期彗星に加えて、放物線軌道や双曲線軌道となる非周期彗星もある。

なお、一葉双曲面は、棒状の鉄筋から造りやすく、構造物を覆う鉄筋の量が最小で済むこと等の利点があることから、構造物の設計に応用されている。神戸のポートタワーが有名で、発電所の冷却塔が双曲面構造になっている場合が多い。なお、ル・コルビュジェやアントニ・ガウディ等の有名な建築家が双曲面構造を有する建築物を設計している。

また、一葉双曲面はきれいな形を示してことから、籐椅子や各種の工芸品等にも見られる。

なお、双曲線は、相対性理論においてしばしば出てくる。

最後に

今回は、楕円、放物線、双曲線等の「円錐曲線」やそれらの三次元空間内の曲面である、楕円面、放物面、双曲面等が、社会において現れてくる場面等について報告してきた。

円錐曲線は、幾何学の発展において重要な役割を果たしてきたが、結構身近な世界でも、電場や重力場においては、物体の描く軌道等にみられるように、円錐曲線が現れてきている。これを受けて、社会においても多数の応用例が見られ、大きく役立っていることがわかっていただけたのではないかと思われる。

そもそも、紀元前の時代に発見され、研究されてきた円錐曲線が、広大な宇宙における惑星の軌道を表しており、しかもそれが複雑な算式ではなくて、二次式で表現されているということ自体、ある意味で大きな驚きではないかと思われる。さらには、宇宙における天体の運動と我々が日常生活において目にする地上での運動が、円錐曲線という1つのカテゴリの概念の中における軌道を描いているということも、ある意味で感動的なことではないかと思われる。

学生時代に学んだ二次式で表現される円錐曲線が、実は、幅広い分野で利用され、こんなに大事な重要な意味を有するものであったということで、少しはこれらの曲線や曲面についての興味・関心を深めていただけたらと思っている。

次回以降のこのテーマのシリーズでは、円錐曲線以外の曲線について、順次紹介していくことにしたい。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2023年11月01日「研究員の眼」)

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